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今回紹介いたしますのはこちら。

「アスペル・カノジョ」第3巻 原作・萩本創八先生 漫画・盛田蓮次先生 

講談社さんのヤンマガKCより刊行です。


さて、トラブルは絶えないものの、斎藤さんとの生活が日常に根付きつつある横井。
彼女と、そして自分自身と向かいあいながら過ごしていくうち、すこしずつ、確実に二人の距離は縮まっていくのです。



ある日の午後のことです。
チョコを買ってくる、と告げて家を出ようとする斎藤さん。
横井は、行ってらっしゃい、と何気ない言葉で送りだします。
が、実はその何気なく見える言葉も、実はいろいろな気遣いが裏にあるのです。
「行ってらっしゃい」「うん」「わかった」。
この三語はとりわけ気を使う必要がありまして……
以前、こんなことがあったのです。

同じように、チョコを買ってくると外に出て行こうとしていた斎藤さんに、横井は何の気なしに「うん」とそちらをふりかえらずにそっけない感じの返事を返したのです。
すると……斎藤さんは出かけるはずの足を止め、その場に立ち止まってしまいました。
それに気が付いた横井は、どうしたのかと彼女に尋ねますと……斎藤さんは、
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行かない方がいいですか、怒ってませんか?と恐る恐る答えるのです。
……全く何のことかぴんと来ない横井は、何をどうしていいかわからず。
そうこうしていますと斎藤さんは、何か声が冷たい、とうつむきながら言いました。
全くそんな意図などなかった横井は、慌てて言い訳。
集中してたから、深い意味はない、普段通りの返事しただけ。
ですが、斎藤さんはそうは受け取れなかったようです。
いつもと反応が違う、怖い。
そう言って、そわそわしたまましばらく不安がり続けてしまうのでした。

そんなこともあり、声色には気を付けるようにしていた横井。
今回は彼女の心を傷つけずに済んだようで、とりあえずは胸をなでおろすのです。
が、思いもよらない所にトラブルの種と言うのはどこに転がっているのか分からないもので……

チョコを買いに行ったはずの斎藤さん、その途中で知った顔の女性をみつけます。
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見知らぬ男性と何やら断章をしているその女性を見つめる斎藤さんの瞳は……みるみると冷たいものになっていき……
そしておもむろに、横井に電話をかけるのです。
ちょっと用事ができたので遅くなりそうです。
一人で大丈夫です、でも遅くなるかもしれません。
決定的瞬間を逃さないように連絡も取れなくなります、終わったらすぐ電話します。
……またまたよくわからない斎藤さんの断片的な言葉に翻弄され、不安と心配を募らせる横井。
そんな横井の気持ちなど露知らず、斎藤さんは先ほどの女性の尾行を始めました。
その女性は……先日、銭湯で横井を謝らせた、感じの悪い母親。
誠心誠意頭を下げる横井を見て、舌打ちとともに安い頭を下げてどうにかなると思ってんのかよ、と憎まれ口をたたいた彼女を見て……
斎藤さんは、
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激しい怒りのこもった表情を浮かべるのです!!
家に帰って来た斎藤さんは、一枚の画像を横井に見せてきました。
ラブホテルの出口で、キスをするあの母親と男性の画像を。
普通に考えれば、夫とそう言ったホテルにはあまり行かないはず。
と言う事は……不倫、と言うやつでしょう。
斎藤さんは、淡々とつぶやきます。
前に遭遇したのは木曜日の夕方四時だったので、今度の木曜から毎週同じ時間に銭湯の前で待ち伏せて、帰り道を尾行して家を突き止めて旦那にこの写真見せます。
……一体何のためにそんなことをするのか?
横井の問いかけに、斎藤さんはこともなげにこう答えました。
不幸になってくれれば何でもいいです。
横井さんが頭を下げた時に舌打ちしました。
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あの女は不幸にならないとだめです、子供と一緒に不幸にしないとだめです。
……横井は、胸に沸き上がる様々な思いをぐっとこらえ、斎藤さんに静かに、冷静に伝えます。
待って、まだそれはやめておこう、住所突き止めるぐらいはいいけど。
家庭をぶっ壊すかもしれない、影響がでかすぎる。
とりあえず今のところは保留ってことで、行動を映すのは待ってて。
……斎藤さんにとって、旦那にありのままのことをしゃべるのは、嘘をついているわけでもないんだからやっていいことだ、となっているようです。
横井の待ってと言う言葉もあまり納得がいかないようですが……そこはやはり横井の言葉ですから、すこし黙った後、わかりました、待ちます、と答えてくれました。
ほっと安堵の息をつく横井。
横井も実際は、あの母親の過程がぶっ壊れたとしてもそれほど気に病むようなことはないのですが……気になっているのは斎藤さんのその時の心理状態です。
やった後の「影響」を知った時、後悔するかもしれない。
後の影響を想定できないアスペルガーと、影響を受け流せずに破裂させてしまうパニック障害は、最悪の連動関係だ。
何よりも、「俺の敵」に対する強烈な憎悪。
愛情の表し方が歪んでしまわないか、と言う事を、最も警戒すべきなのかもしれない。
横井はそんな胸のざわつきを感じてならないのでした……



と言うわけで、新たな不安の種が生まれてしまう今巻。
危うさを常に抱えている斎藤さんですが、もちろんそんな不安ばかりの日常ではありません。
確かに毎日のように彼女のペースや、独特のルールに翻弄されてしまってはいる横井。
ですが自分を頼ってくれ、慕ってくれる彼女の存在は、もはや横井にとって欠かせないものになっているのは間違いなく。
今巻でも彼女の新しい危ういところ、可愛らしいところ、思いもよらない所……そんな様々な部分を横井とともに発見し、彼とともに彼女に惹かれていくことでしょう!!

そしてさらに今巻では、斎藤さんがどうやって横井の家に押しかけてくるに至ったのか、と言う前日譚的なエピソードも収録!!
今までしっかりと書かれたことのなかった彼女の過程や家族、学校や周りの人々と言った、様々な背景が明かされることとなります。
横井の家を訪ねる直前の斎藤さんの心。
それを読めばまた斎藤さんへの感情移入も一層深まるのではないでしょうか……!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!