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今回紹介いたしますのはこちら。

「チェンソーマン」第1巻 藤本タツキ先生 

集英社さんのジャンプコミックスより刊行です。



さて、「ファイアパンチ」でその独創的なストーリーテリング能力を見せつけてくれた藤本先生。
そんな藤本先生が18年、週刊少年ジャンプに進出して本作の連載を開始されました。
あのファイアパンチを生み出した藤本先生が、天下の少年ジャンプでどんな作品を描くのか?
気になるその内容はと言いますと……



木を切って月6万円。
腎臓を売って120万、右眼を売って30万。
金玉を片方売っても、10万にもならなかった。
残りの借金は3804万円。
デンジのそんな困窮などと言うレベルではない暮らしの中で、一回だいたい30万稼げるのが……
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デビルハンターです!!
トマトの悪魔を、相棒のポチタとともに狩り殺したデンジ。
雇い主の男に死体を引き渡し、報酬の40万を受け取るのですが……その雇い主は、電磁に借金を背負わせている男でもありまして。
報酬から借金と利子を抜き、仲介手数料や諸経費などを引いて、といろいろ理屈をこねまわしまして、デンジにはたった7万円しか渡されません。
そこから雇い主以外からしている借金を返したり水道代を払ったりすると、残ったのはたった1800円……
家に食べるものはありませんし、今月はこの1800円で暮らしていかなければなりません。
ポチタ、今日のメシ食パン一枚だぜ。
デンジはそう言って、ポチタを連れて家に帰るのです。

デンジの借金と言うのは、彼の父親が負ったもの。
あの雇い主の男は、正規のデビルハンターを雇うと悪魔の死体が手に入らないため、デンジのような素人に借金のカタとして悪魔を狩らせているのです。
それにデンジは、犬のようにこっちの言うことに逆らわない。
雇い主たちはそう言うところにもデンジの利用価値を見出しているようです。

デンジはポチタを抱きながら、夢を語ります。
普通食パンにゃジャム塗って食うらしいぜ。
まーオレたちゃ普通なんて夢の話だけどな、死ぬまで借金返し終わるきしねーし。
俺ぁ死ぬまで女と付き合えねぇんだろぅなー。
夢ぇ叶うなら女抱いてから死にてえな……

デンジがポチタと出会ったのは、父が自らの命を絶って間もなくでした。
あの雇い主に、明日までに70万用意しないとお前をばらして死体を売る、と言われたデンジ。
自暴自棄になったところで……「チェンソーの悪魔」であるらしいポチタと出くわしたのです。
敵意をむき出しにするポチタを見て、どうせ死ぬんだから殺すなら殺せよ、と覚悟を決めるデンジ。
ところが、ポチタはお腹に深い傷を負っていまして、すでに死にそうになっていました。
お前も死ぬのか。
そう呟いたデンジの脳裏によみがえる、首を吊った父親の姿。
体に戦慄が走り……直後、デンジはポチタへ腕を差し出していました。
噛め!
悪魔は血を飲めば傷治るって聞いたことがある、死にたくないなら噛め!
俺の地はただじゃねえ、これは契約だ。
お前を助けてやるから……俺を助けろ。
やっぱ俺も死にたくねえ……

こうしてポチタとデンジは、相棒となってデビルハンター家業を始めたのです。
とはいっても生活はこの通り、ひどいもの。
それでもデンジは、ポチタがいるからそれなりに楽しんで暮らしていました。
お腹が減って眠れなくても、今日これから見る夢を想像して心を躍らせます。
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食パンにジャムを塗ってポチタと食べて、女とイチャイチャしたりして、一緒に部屋でゲームやって、抱かれながら眠る……
いいだろ?
ポチタはワフッと一鳴きして、デンジの言葉を肯定するのです。
……が。
突如、デンジは大量の血を吐きだしました。
デンジの母親は心臓病で死んだと言います。
その遺伝なのか、それとも臓器を売ったため体にガタが来ていたのか……
デンジの命は、もう、そう長くはなさそうです。
そんなときでも、雇い主はお構いなしにデンジの家の扉をたたき、仕事だと呼び出すのです。
夢くらい見させてほしいよな。
そんなことを考えながらも、デンジは車に乗り込むのでした。

連れてこられたのは廃墟。
こんなところに悪魔が出たのか、と尋ねるデンジに、雇い主は言いました。
デンジよ、俺達はてめえに感謝してんだぜ。
犬みてえに従順だし、犬みてえに安い報酬で働いてくれる。
でも俺ぁ犬ぁ臭くて嫌ぇだ。
……その時でした。
背後から、雇い主の部下が、ポチタごとデンジを刺したのは!!
俺たちももっと強くなって稼ぎてえから、てめえみてえに悪魔と契約することにしたんだ。
そう言う雇い主でしたが、その代償は大きかったようです。
雇い主が契約し羽陽としたのは、「ゾンビの悪魔」。
ゾンビの悪魔によって、雇い主たちはみな、ゾンビにされてしまったのですから。
ゾンビの悪魔は、人間はただのエサとしか見ていないようです。
雇い主とその仲間をすべてゾンビにして、さらにデビルハンターはキライだから殺す、とデンジにむき出しの殺意をぶつけてきて……
……普通の生活を夢に見るだけでよかったのに、そんなことも叶えられないのかよ。
デンジはそんなことを考えながら……
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バラバラにして殺されてしまうのです。
かつてデンジは、ポチタにこんなことを放したことがありました。
俺は悪魔と戦ってるうちに死ぬかもしれねえ。
悪魔には、死んだ人の体を乗っ取れるやつもいるらしい。
ポチタにそれができるんだったら、俺の体をポチタにあげてーんだ。
したらこの街を出て、普通の暮らしをして、普通の死に方をして欲しい。
俺の夢を叶えてくれよな。

……ポチタは、デンジの体と融合を始め、そのバラバラになった体を元通りつなげてしまいます。
ですが、体を乗っ取るつもりはないようです。
二人の体が交じりあっている最中、ポチタは意識の中でデンジに語りかけました。
私は、デンジの夢の話を聞くのが好きだった。
これは契約だ。
私の心臓をやる、かわりに……
デンジの夢を私に見せてくれ。

気が付くと、デンジの体は元通り治っていました。
いや、元通りではありません。
その左胸に、ポチタのしっぽであり、チェンソーのスイッチにもなっていたしっぽが飛び出していたのですから。
体が治って現れたデンジを見たゾンビの悪魔は、今度こそ殺そうと手下のゾンビにデンジを喰うように命令。
一斉に襲い掛かってくるゾンビを見て、デンジは考えます、
皆もっといい生活を望んでこうなったのか。
俺も同じ、ポチタがいればそれでよかったのに、もっといい生活を夢に見たんだ。
皆夢見ちまうんだ、じゃあ悪いことじゃねえ。
悪いことじゃねえけど……
俺達の邪魔ぁすんなら、死ね!!
胸のスイッチを引っ張るデンジ!!
と同時に、ゾンビたちはいっせいにデンジを取り囲むのです。
ゾンビの塊に呑み込まれたデンジを見て、ゾンビの悪魔は勝利を確信するのですが……
その中から、生まれたのです。
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ポチタと融合したデンジの新たなる姿……
体からチェンソーを飛び出させて咆哮する、悪魔と人間の融合した新たな一匹の生き物が!!!



と言うわけで、流石藤本先生と言いますか、ショッキングな幕開けを迎える本作。
チェンソー、コウモリ、血、ナマコ……そんな何らかのものにまつわる「悪魔」が存在し、人間を襲うというこの世界、それ以外の部分は現実世界とそう変わらないようです。
そんな世界ですから、このデンジの暮らしがどれだけ壮絶なのかうかがい知れるのではないでしょうか?
あまりに悲惨過ぎる生活の中で、ポチタと普通の生活をする夢を見る、ことだけを楽しみに生きていたデンジに降りかかったこの悲劇。
ですがこの悲劇をきっかけに、デンジは夢をかなえるための一歩を踏み出すことになるのです!!

本作は実に藤本先生らしい味わいで進んでいきます。
掴みからショッキングな展開でぐっと読者をひきつけ、その後はコミカルな描写を交えつつキャラクターを掘り下げる展開に。
個性的なキャラクターが登場しながら、裏では何やらきな臭い陰謀めいた物も動いていて……
しっかりとどんでん返しも用意された物語を、藤本先生の確かな画力でメリハリある画面で演出してくれるのです!!
さらに悪魔の死体が何かに利用されているらしいことなど、表面化していない気になる要素も盛りだくさん!
これから先のお話が気になって仕方ありませんね!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!