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今回紹介いたしますのはこちら。

「煉獄女子」第4巻 室井まさね先生 

竹書房さんのバンブーコミックスより刊行です。



さて、精神病棟を脱走した帆場愛子。
彼女はその狂気をどんどんと 膨れ上がらせながら、東京へと向かっています。
そして霧恵は警察の目を盗んで詩音の家へやってきて、何やら怪しげな動きを見せ始め……
帆場とある因縁のある詩音の父、善弥も自宅へと向かっており、すべての鍵はひとところに集まりつつあるのです……!!




善弥が警察の忠告を振り切り、自宅へと帰ってきた夜。
そこにいたのは……すやすやと自分のベッドで眠りにつく詩音でした。
彼女はつい先ほどまで、霧恵と一緒にいたはず。
その霧恵は一体どこに行ったのか……?
善弥はそんな事実を知りませんから、何事もなかったんだと安心してしまいます。
詩音の家の周りで張り込みをしていた二人の刑事も、しっかり施錠はしてくださいね、と去って行ってしまったのです。

夜更けを過ぎたころ、善弥は悪夢にうなされて飛び起きます。
かつて帆場と一緒だったころの夢。
そして突然その帆場の顔が、霧恵の顔に変わって……!?
そこで善弥は気が付いたのです。
帆場と霧恵の雰囲気が、どこか似ていることに。
だから……
と、その先を考える余裕はすぐに消え去ってしまいました。
いつの間にか、善弥の寝室に「いた」のです。
物憂げな瞳を浮かべ、口元は薄く笑いをたたえる……
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帆場が!!
彼女は、その手にした板包丁を思い切りつきたてました!!
善弥の顔のすぐ横に……!
そしてささやくのです。
久しぶりね善弥さん、さみしかったわ、一度も会いに来て下さらないんだもの。
でも、これからはずっと一緒よ。
帆場が精神病院に入ったのは、善弥とその協力者の差し金でした。
殺人未遂や傷害で収監されたとしても、せいぜい拘束できるのは7~8年。
それならば精神病院に入れて、協力者が裏から手引きすることで、退院させられそうになったらほかの精神病院に転院させ続ける……
そうすることで薬漬けにして、廃人にしてしまおう。
そうして、善弥の消し去りたい都合の悪い過去である帆場を完全に社会から葬ってしまおうとしたのです。
帆場の方はそんなことも知らず、ただただ善弥だけを自分だけのものにしたいと考え続け、この凶行に走りました。
その目に宿るのは、底知れない闇と、盲目的な愛だけ……
善弥は叫び声をあげて帆場を突き飛ばし、その場から逃げだします。
いつの間に入ってきたんだ?警察は何をやってるんだ?
階段を駆け下り、外で警備をしているはずの刑事に助けを求めようとする善弥。
ですが外ではなく、階段を降りたところに刑事二人がいることに気が付きます。
ああ良かった、あの女が!!
そう言いながら刑事の2人に縋り付こうとするのですが……
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刑事はすでに、首をずたずたに切り裂かれた上に首吊りのような形でぶら下げられ、絶命していたのです……!!
恐怖で後ずさる善弥ですが、今度はすぐに電話を手に取りました。
しかし電話線を切られてしまっているのでしょうか、電話は全く通じる様子がありません。
それならば携帯電話を、と考えるものの……
その携帯電話があるであろう善弥の寝室に続く階段からは、帆場が降りてきているのです!
善弥は帆場に見つからないように息をひそめながら、キッチンに身を隠します。
刑事が殺されてしまった今、自分自身で身を守るほかありません。
善弥はシンクの方に移動し……包丁を手に取ります。
武器を入手することはできましたが、その時物音を立ててしまい……
善弥さん?
そこにいるの?逃がさないわよ。
そう言いながら……確実に気配は近づいてくるのです!!
声はもうすぐそこ。
善弥は意を決して包丁を握りしめ……
自らシンクの陰から飛び出し、腹へと突き刺したのです!!
善弥は確かな手ごたえを感じ、笑みを浮かべました。
ですが、どうしたことでしょう。
彼女の長い髪がずるりとずれ落ち……
そこであらわになったのが、
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ウィッグをかぶせられていた、善弥の妻であり詩音の母、直美の顔だったのです……!!

すべては帆場の思惑通り。
暗闇の中で追い詰め、自分の姿をしっかり確認しづらい状況に追い込んだところで、直美に自分のシルエットに近づけるウィッグをつけて、善弥自身に殺させる……!!
その一刺しは致命傷となっていました。
必至に蘇生させようとする善弥ですが、もう直美は完全にこと切れてしまっています。
絶望に暮れる善弥に、帆場は囁きました。
これで邪魔者はいなくなったわね。
もう二度とはなれないわ。
これからはこの家で、3人で、ずーっと……

目を覚ました詩音がやってきたのは、その時でした。
何が起こったのか全く理解できない詩音に、帆場はにやにやと笑いながら説明を始めました。
あんたのスマホでメールを送ったのよ、お義父さんがおかしいの、すぐ帰ってきて、ってね。
飛んで帰ってきたわよそのバカ女、旦那に殺されるためにねぇ。
また私と一緒になるために、その女を殺してくれたのこの人。
後は……
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あんたさえいなくなれば……
包丁を握りしめ、詩音に狙いを定める帆場!
このまま詩音は彼女の狂気の毒牙にかかってしまうのでしょうか。
帆場の言う「3人」とは……?
そして、忽然と姿を消した霧恵は……!?
悪夢のような物語の終焉は、すぐそこに来ています!!



と言うわけで、クライマックスを迎えた本作。
詩音の家で、多くの血を流しながら物語は終わりを告げることとなります。
帆場と善弥の関係、謎多き霧恵の正体と本当の目的。
数々の謎を明かし、多くの犠牲を出しながら辿り着くその結末とは……?
衝撃の結末を、その目でご確認ください!!

こう言ったお話では、だいたい犯人の目的が主人公を愛しすぎていて、他の邪魔ものを殺していた、といった感じの真相が多い気がします。
そんな物語も勿論悪いわけではないのですが……本作もそう言うお話かと思われていたところで、また違ったお話だったと言う事が今巻で明かされることに。
それでいて様々な謎や、事件の源泉など、全てがきっちりと解決するエンディングはさすが室井先生と言ったところでしょうか!
ラストシーンは……こう言ったお話のお約束的な演出、のはず!!
そんなラストも含め、奇をてらわないまっとうなサイコサスペンスとして楽しめる作品に仕上がっているのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!