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今回紹介いたしますのはこちら。

「先生、あたし誰にも言いません」第1巻 藤緒あい先生 

秋田書店さんのプリンセスコミックスより刊行です。 


藤緒先生は11年に小学館新人コミック大賞の少女・女性部門で入選を果たしてデビューした漫画家さんです。
デビュー後は小学館さんのみならず、祥伝社さんや講談社さんでも作品を発表、そして本作で秋田書店さんの女性向けではないウェブコミック誌での連載を開始、意欲的に活動をされています。

そんな藤緒先生の最新作となる本作。
本作は教師と生徒の恋愛、というタブーを描いた作品となっております。
その設定の時点でインモラルな物語となるわけですが、木になるその内容はといいますと……?



清野正広は、友人の結婚式に参加しながら、こんなことを考えていました。
ひとつでいいから、特別なことが欲しかった、と。
清野の人生は、取り立てて悪いものではありませんでした。
ただ、「特別いいこと」が一つもないだけ。
結婚して幸せそうな友人に比べても、顔や身長、成績もそれほど変わりがあるわけではありません。
なのに昔から、友人たちに一つくらいはある、大企業に就職しているだとか、ペットの猫がSNSでブレイクして本を出して儲けたとか、胸を張って自慢できるいいことが一つもなかったのです。
何なら高校時代でも、友人たちはみんな可愛い彼女がいたにもかかわらず、清野は可愛くもない(孤児の感想です)彼女と、成り行きで初体験をしてしまったというあまり人に言い出せない青春時代を過ごしていました。
そんな清野が今何をしているのかといいますと……女子高の教師です。
聞く人が聞けばうらやましいというかもしれない職業ではありますが、何せ手を出してしまったら即「終わり」になってしまう可能性の高い危険をはらんでいる仕事でありまして。
結局、胸を張ってみんなに言いふらしたくなるような、「特別いいこと」にはなり得ないのです。

清野が教師になったのは、成り行き以外の何物でもありませんでした。
就職活動が全滅で、なんとなくとっておいた教員免許で非常勤教師に。
3年間非常勤で過ごしたあと、去年から女子高に正規雇用されました。
この女子高には若い教師が他にいないこともありまして……清野は実際、モテています。
女子高生は何かと清野にくっついてきますし、中でもクラスの中で目立つ美少女である結木なんかは妙になついてきますし……
嬉しくないはずはありませんし、おいしい環境だと彼自身思っていました。
もちろんせっかく手にした正規の教職、生徒に手を出して失うつもりなんてありません。
清野はそんな嬉しくも悩ましい毎日を過ごしていたのですが……

結木に呼び出され、二人きりで屋上にやってきた清野。
結木は三者面談について何やら話があるようなのですが、それはあくまで口実に過ぎなかったようです。
てゆーかあたしね、彼と別れたんだよ?
だしぬけにそんなことを報告してくる結木。
なんで俺に言うんだ、と疑問に思っていますと、今度は結木、LINEを交換しよう、と携帯電話を出して連絡先を聞いてきました。
当然生徒と個人的にやり取りをするわけにはいきませんし、本来持ってきてはいけない携帯電話を教師の目の前で出す時点で問題は問題です。
おれのことナメてんだろ、と尋ねても悪びれず、ちょっとナメてるかも、と舌を出しておどける結木。
そんな彼女を見て、
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どちゃくそかわいい!!と、清野は心の中で絶叫するのです!

結局、悩みがあって個人的に相談したいから、という名目で連絡先を交換した二人。
ここまであからさまにやられては、さすがの清野もあいつ絶対俺のこと好きだろ、と意識せずにはいられません!
早速彼女の送ってきた可愛いスタンプとにらめっこする清野ですが、そんな姿を同僚の中年教師に見られてしまいました。
生徒との個人的な関係はいかんとおしかりを受ける……かと思いきや、なんとその先生、奥さんが元教え子なんだとか!!
生徒に対してそういう感情は不適切といわれるが、近くにいる異性を意識するのは自然。
まして生徒第一に物事を考えているし、そういう教師に生徒も憧れを抱きやすい。
したがって恋に落ちるのは無理からぬことですよ!!
そう力説する中年教師、彼は奥さんが在学中から付き合ってはいたとか。
そんな状況を経験してきた彼はさらに力を込めてこう言うのです。
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生徒が卒業するまで公にならず、さらに結婚まで至れば全く問題はない。
犯罪どころか、むしろ純愛に見えるようで周りからはかなりうらやましがられた、と!!
……と、そこで教頭である砂掛先生が現れます。
彼女はかなりうるさい先生のようでして、奥様が元教え子ということは信用にかかわるからくれぐれも生徒や保護者の耳には入らないようにしろ、口を酸っぱくして言うが生徒とは適切な距離を保ってくれ、とものすごいプレッシャーをかけてきまして……!!
いくら清野は自分にその気はないと思っていても、その厳しい視線はかげることが無いのです!

放課後になりました。
結木は、夜連絡するね、と小さく手を振って去っていきました。
相談聞くだけだって、と心の中で反論しつつそれを見送り……そして、そそくさと帰ろうとしていた女子生徒、寄原を呼び止めて腕をつかみました。
ひっ、と小さな声を上げて立ち止まった寄原に、急につかんだりしてごめんと謝り、連絡のプリント今日までだから出してくれ、この後英語科の準備室にいるから持ってきてよ、と声をかけるのですが……
彼女は返事をしてくれません。
こういう地味で暗いタイプって苦手なんだよな、と心の中でぼやく清野。
それは、高校時代にできた彼の彼女に原因があるのかもしれません。

隣のクラスの、少し暗い感じの、あまり可愛いとは言えないその彼女。
その彼女の方から告白されたこと、彼女いると楽しい、と友人たちから言われたこと……そんなことが重なり、清野は彼女と付き合い、そして初めてを経験したのです。
ですが結局それは、可愛い彼女のいる友人たちに対してのコンプレックスを強めただけに終わってしまい……
そんなことを思い起こしているうちにうとうとしてしまったようで、すっかり日も暮れてしまっていました。
ちょうど外からノックの音が響きまして、寄原が中に入ってきます。
寝ちゃってさ、気付いたら真っ暗で、と笑う清野、そこの電気のスイッチを押してくれないか、とお願いするのですが……
寄原、電気をつけないまま、なぜか準備室の鍵を閉め、足早に清野に近寄ってきたではありませんか!!
プリントを渡してきた寄原ですが、そのあと彼女は、小さな声でこうつぶやきます。
あたし明日、誕生日なんです。
そうなんだ、と答えた後……気が付きまして、おめでとう、と清野は声をかけました。
すると彼女は真っ赤に染まった顔をばっと上げ、なんと
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清野の手を自らの胸へと導いたではありませんか!!
何してんだ、とバッと手を離す清野!
ですが寄原の驚くべき行動は終わりません。
今度は服と下着をたくし上げ、自らの胸を露出!
その状態で、改めて清野の手をその胸に触らせたのです!!
好きです、だから、してください。

清野は初体験の相手の顔をよく覚えていません。
周りの友達より少し遅れているという小さな劣等感を、自分の小さなプライドを少し満たすたんだけに好きでもない女の子と初めてを体験した。
後ろめたくて目が合わないようにしていたから、良くその顔を憶えていない……
好きでもない、後ろめたい。それなのに、体はどんどん興奮して、気持ちがよかったことだけは覚えている……

気が付けば清野は、一線を越えてしまっていました。
彼女から要求してきたとはいえ、こんなことがばれたらもう終わりです。
焦りまくる清野なのですが、寄原は驚くほどいつも通りで、帰ります、と頭を下げて部屋を出ようとするのです。
さすがにこのまま彼女を返すわけにはいきません。
車で送っていくことにした清野ですが、とりあえずその車中で寄原にさっきはごめんと謝ります。
彼女はきょとんとしたまま、どうして自分から誘ったのに謝るのか?と言い出しまして。
その予想外の返答にまた戸惑う清野、とにかく誰にもばれないよう、さっきのことは誰にも……と口止めをしようとしました。
するとその言葉を食うように、寄原は言うのです。
誰にも言いません。
先生が、あたしとつきあってくれたら。
……どう考えても、泥沼に入っていくその誘い。
全然好みじゃない寄原と?
つきあうって、バレたらそれはそれでますいんじゃないか?
でもこれを断ったらおれの人生は終わる?
そんな思いが駆け巡る清野の口から出た言葉は、こんなものでした。
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つきあおう!うん!



というわけで、あっという間に泥沼へと入り込んでしまう清野。
流されやすく薄っぺらいちょいクズ、と言った感じの清野ですが、この後もズルズルと流されていくことになります。
そんな彼を振り回すことになる寄原ですが、彼女は単純に清野のことが好き、と言うわけではないようで。
その場しのぎで付き合おうと言ってしまった清野は、彼女にこの後どう接していくのか?
寄原の本当の目的は何なのか……?
さらに二人の周りには、清野に何かとちょっかいをかける結木や、風紀に厳しい砂掛教頭と言った何かとトラブルの種になりそうな人物も存在。
そして、寄原だけではなく、そんな様々な人物にも、誰にも言えない秘密が隠されていまして……!
インモラルな恋愛もの、と思わせておいて、実際は「誰にも言えない秘密」を持った人物たちの抱える闇がぶつかり合うような、一言では言い表せない混沌としたドラマが描かれていくのです!!
そのドラマは、第1巻の巻末ですさまじい勢いで加速していき……!!
ただでは済まないインモラルラブストーリー、今後の展開が気になって仕方ありません!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!