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今回紹介いたしますのはこちら。

「ウメハラ FIGHTING GAMERS!」第9巻 原作・友井マキ先生 作画・西出ケンゴロー先生 

角川書店さんの角川コミックス・エースより刊行です。 


さて、着々と成長を遂げ、徐々にナラケンことクラハシに近づきつつある梅原。
ゲームセンターだけを自分の居場所として、スト2に血道を上げた二人ですが、その宿命の対決は思いもよらない方向へと進んでいき……?



ヤギヌマは、クラハシのアパートを訪ねていました。
あれだけスト2に熱を上げていたクラハシ。
そのクラハシが、突然スト2をやめると言いだしたのです。
ただごとではない何かが起こった、そう言うことなのでしょう。
ヤギヌマはたまらずクラハシの部屋を訪ねてしまったわけです。
いつものとげとげしい雰囲気は鳴りを潜めているクラハシ、突然やって来たヤギヌマをまあ上がれよ、と招き入れました。
テレビすらないような、あまりにもすっきりとしたクラハシの部屋。
その中でとりわけ目を引くのが、表紙に「スト2研究」と殴り書きされたノートでした。
クラハシの研究の成果がみっちりと詰め込まれたそのノートは、もはや「すごい」の一言でしか表せないもの。
だと言うのにクラハシは、そのノートをただのゴミだと断じてしまうのです。
続いて目についたのは、CPSファイター。
これは当時スーパーファミコンに移植されたスト2を、ゲームセンターと同じ操作形態でプレイすることができるように発売された周辺機器です。
実際はアーケードには程遠い操作感なのですが、クラハシにとってはそれでいいのです。
何故なら、クラハシの家にはテレビすらないわけで、そのCPSファイターはイメージトレーニングの際にいじるためだけにあるのですから!
それほどまでにスト2を愛していたクラハシ。
ではなぜ突然スト2をやめるなどと言いだしたのでしょうか。
気難しいクラハシですが、ある程度心を許していたヤギヌマには、その理由をぽつりぽつりと明かしてくれたのでした。

クラハシの母親が、難しい病気にかかり、「もしかしたら」と言う覚悟もいる状態になった、と言うのがその原因。
手術がうまくいったとしても、身の回りの世話をする必要がありまして……こればかりは他人には任せられない、と言うのです。
確かにそれは仕方のない事情です。
が、ヤギヌマは、それならまた余裕ができたらやればいいんだし、何もわざわざ辞める必要はないじゃないですか、と声をかけるのです。
……しかし、クラハシはきっぱりともう終わりだと言うのです。
そして、こう……残酷な現実を告げていきました。
お前だって本当は気付いているんだろ?
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遅かれ早かれなくなるんだ、こんなものは。
今ですら新作がバンバン出て、スト2はロートル扱い、時代遅れになって次に行く、それが世の中ってもんだ。
だいたい格ゲーそのものがどうだかな。
いつまでもあると思うか?
ゲーセンだってどうなるかわからねえぞ。
……そう言われてしまうと、ヤギヌマは否定できません。
何も言えないヤギヌマに、クラハシは梅原だって中学生でこれからいろいろあるんだから、三年後にすらスト2をやっているかわからない、と続けます。
そして……梅原やクラハシに限らず、いつまでもこんなことをやっていていいはずがない、と言うのです。
自分一人が厚くなっても、いずれは誰もやらなくなる。
どこかで付けなければならないケリを、今付けるだけなんだ。
そう寂しげに語るクラハシですが……
そこでヤギヌマは、声を上げてしまうのです。
そんなことはわかってる、でもそんなことをクラハシさんの口から聞きたくなかった!!
俺たちが大人になったら、世の中のほうが変わってるかもしれないじゃん!
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四十のおっさんになっても、スト2の買った負けたで意地の張り合いして熱くなってるかもしれないじゃん!!
クラハシはそんなヤギヌマの叫びに、四十にもなってそんなバカいるわけないだろ!と思わず脊髄反射で反論するのですが……
そこで、ヤギヌマはにやりと笑いました。
あー、わかった。
そう言って、彼はこう告げます。
逃げえるんだ、クラハシさん。
梅原君に追い抜かれるのも時間の問題だし、やめるにはいいタイミングですよね?
いずれ負け越すってみんな思ってんじゃないですか?
……ヤギヌマのわかりやすい煽り。
その目論見は、誰もがわかってしまうでしょう。
……当の本人、クラハシ以外は!!
雑魚どもが、舐めくさりやがって。
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いいだろう、ハッキリさせてからやめてやるよ!!
……こうして、運命の一戦が決まったのです。
梅原対クラハシ、最後の勝負。
リュウVSガイル、50勝先取のビッグマッチが!!!



と言うわけで、完結となる本作。
ZERO3編では大貫が実質の主役となっていましたが、スト2編は終わってみればクラハシの物語となっていました!!
何もかもを捨てて打ち込んでいたスト2を捨てなければならない時。
その最後に挑む、新たなライバルとの戦い……!!
そこでクラハシが何を見て、これからどうするのか?
そんな読み応えのあるドラマが展開するのです!!
完全にクラハシ主導のお話になっておりますが、梅原には戦いの中で成長する、という主人公らしい見せ場が用意されておりますのでご安心を。
手に汗握る戦いと、その先に見えるもの……それらと合わせてたっぷりご堪能くださいませ!!

もう一つちょっと面白いのが、このお話の舞台である96年あたりに、その20年先の今起きていることを語らせる、と言うポイントでしょう。
格ゲーは先細り、ゲーセンもほとんどない。
でも40過ぎのオッサンが今でもスト2に熱くなっている……!
そんな現状を見ながら本作を読むと、また一味違う味わいが楽しめると言う者です!

さらに単行本描き下ろしのエピローグでは、本作のその後と、現在をリンクさせたちょっとびっくりのお話が繰り広げられます。
こちらも格ゲープレイヤーならばにやりとせざるを得ない内容となっておりますので……ぜひともその目でご確認くださいませ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!