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今回紹介いたしますのはこちら。

「双亡亭壊すべし」第9巻 藤田和日郎先生 

小学館さんの少年サンデーコミックスより刊行です。


さて、双亡亭とヤツらの謎に迫りつつある務達。
務がこの屋敷の主であった泥土と接触している間、録朗の方も「しの」と名乗る者に接触しました。
しのは禄朗に「勇気」と言うものを教えてほしいと言葉巧みに近付いていき、そして……その体を乗っ取らんと、録朗の体に侵入してしまったのでした!



紅がたどり着いた時にはすべてが手遅れとなってしまっていました。
しのは既に禄朗の内部に侵入してしまっていて、紅の力では追いだすことはできなくなってしまっていたのです。
今までこの双亡亭では数々の恐ろしいことが巻き起こってきました。
ですがその中でも、今回の出来事は彼女にとって最も恐ろしい出来事。
紅は虚ろな目をして虚空を見る禄朗を抱きしめ、泣くことしかできないのでした。

禄朗の内部に侵入したしのは、まずその記憶を読み取り始めます。
禄朗は、青一とともに戦いの記憶をたどってきたため、しのは青一に関するすべてを知ってしまいました。
青一は敵対する星のものと同じ力を得て、門を通ってここにやって来た。
青一が何故自分たち双亡亭を修復不可能なまでに破壊することができるのか、そして……そんな双亡亭に対しての脅威である青一を倒すため、この禄朗が非常に有用である!
しのは、録朗を使い、青一を殺す算段を立て始めます。
青一はしのたちの敵と融合して恐るべき力を持っているとはいっても、その体はあくまで人間。
活動を休止させるための急所……たとえば心臓のような部分を一突きすれば簡単に殺すことができます。
あるいは、内臓を損傷させる毒物を食物に混ぜて服用させてもいいでしょう。
人間が他の個体からの悪意に著しく反応するという点をついて、罵倒の言葉を浴びせて精神を弱らせる、と言う方法も考えられます。
そのどれもが、録朗の体をもってすればいともたやすく成し遂げることができるでしょう。
これが、しのがいつもとは違ってなるべく恐怖を与えないように禄朗と接触した理由。
いつものように強制的に体を奪う「肉体侵略」では、乗っ取った相手の人格を共謀に変化させてしまうのだとか、
ですが今回のように恐怖を与えず侵入して乗っ取った場合、もともとの人格をそのままに体を手に入れることができる……!
ましてや録朗はまだ子供、精神構造も単純で支配しやすい!!
しのはさっそく、録朗の精神を脳内で眠らせ続けるため、夢を見させ始めるのです。

禄朗の見ている夢はこんなものでした。
紅がまだ一緒に暮らしていた、すこし昔の子供のころ。
食卓を囲み、みんなで他愛ない話題で笑いあう……
これは禄朗が最も安らぎを感じて、最も幸せだった時の記憶です。
誰もが幸せな記憶には浸っていたいもの。
しのは絶対の自信を持って、簡単だとほくそ笑み……禄朗の脳へとむかいました!!
ところがその時でした。
夢の中で禄朗が、食卓から立ち上がったのです。
そして家族にこう告げます。
お姉ちゃん、ママ、そしてパパ、じゃあね。
パパはニコッと笑い、返しました。
そっか、気をつけていって来いよ。
……もう二度と見ることの出来なかったはずの、そして今度こそもう二度と見ることができないであろうその笑顔。
それを見て……禄朗は必死に涙をこらえて、笑顔を作り……
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すぐまた、会おうね。
そう言って、夢から覚めるのです!!

ただの人間のはずの禄朗が何故しのの侵入に対抗できるのか?
それは、青一が一滴だけ入れてくれた彼らの「雫」のおかげでした。
その雫がしのの侵入を防ぎ、録朗の体の支配を妨害していたのです!
勿論、録朗の怒りも作用していたでしょう。
奴らによって、父を奪われた怒り。
その瞳の中には、
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燃え盛る激しい怒りが滾っています!!
それはしのに体を奪うことを許さず、入り込んできたしのを逆にとらえて離しません!!
お前は僕の中に「勇気」があるって言ったけど、僕はそんなもの持ってないよ。
でもお前は、何にも持ってない僕とここで死ぬんだ。
そう言ったかと思うと現実世界で、録朗は持ち込んでいた液体窒素の入った筒を手に取ります。
何本かをあたりにばら撒いて窒素を充満させ、そして……紅にこう告げました。
僕は小さいし弱い。双亡亭を壊すなんて無理だって思ってたんだ。
だから、僕は液体窒素を運搬してくれる人を、青一を呼んできた。
僕はパパの言う通りやった、だからもう役目は終わったんだ。
だから後は双亡亭の奴らを一匹でも減らすんだ!
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僕が死んでも……
禄朗は液体窒素の入った筒の口を開け、その中身を一気に飲み干さんとして……!!!



というわけで、録朗の勇気が試される今巻。
しのが口から出まかせに持ち掛けた「勇気」、それを禄朗は自分は持っていないと言い切ります。
ですが、自らの死をいとわず双亡亭を壊すための行動がとれるものに勇気がないなど、誰が言えるでしょう!
しのをここで倒すことができれば双亡亭打倒への一歩とはなるでしょうが、これから先の戦いに禄朗は欠かせない存在になる予感も……!!
そんな勇気を振り絞った行動、その結果はどうなるのでしょうか!?

そして務や帰黒のほうにももちろん動きが。
帰黒、そして残花の元に続々と襲い掛かってくるかつての仲間の姿をした双亡亭のしもべ達。
次々と襲い来る刺客に対して、帰黒たちは無事に泥土の元へたどり着き、双亡亭の破壊を成し遂げることができるのでしょうか?
そしてその泥土と相対している務は……!?
双亡亭の中と言う広大ながらも限られたこの空間の中で、次々に変わっていく局面。
この後もまだまだ見逃せない展開が続くことは間違いなさそうです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!