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今回紹介いたしますのはこちら。

「愛のバビロン」第1巻 原作・相原コージ先生 漫画・藤田かくじ先生 

日本文芸社さんのニチブンコミックスより刊行です。


相原先生と言えば、83年にデビューしてから現在に至るまで活躍し続けるベテランの漫画家さん。
「コージ苑」「サルでも描けるまんが教室」「かってにシロクマ」と言った数々の代表作を持ち、近年では「Z」と言った従来得意としているギャグ要素が薄いゾンビものなどにも挑戦するなど、意欲的に活動されています。

そんな相原先生が、「放課後少女バウト」の藤田先生作画による初の漫画原作に挑む本作。
どうやらアイドルの生活を描く物語となるようですが、やはりそこは相原先生、普通のアイドル漫画ではないとんでもないお話になっているのです!



とある遊園地でのこと。
大人気アトラクションに並んでいた家族がいたのですが、それぞれイライラが募り始めていました。
もう52分も並んでいる、とスマホを見てづくづく父。
泣きだしてしまう赤ちゃんを何とかなだめようとする母。
思うように成果の出ないゲームに苛立ちをぶつける兄。
そして、トイレに生きたくなり始めてしまった妹、早咲。
早咲は一人で行くのは怖いから誰かついてきて、とお願いするのですが、みんなそれぞれの理由で拒否。
最終的には母に、もう小学6年生なんだからいい加減トイレくらい一人で行かなきゃだめよ、幼稚園児じゃないんだから!と怒鳴りつけられ、意地になってひとりでトイレに行くことになったのでした。

一人で行くトイレは、どことなく威圧感を感じさせ、その敷居をまたぐのがはばかられる早崎。
ですが何とかその思いを振り払い、早咲はトイレに入るのです!!
勢いよく鍵を閉め、用を足し始めると……気持ちが落ち着いてきました。
ほらね、私だってひとりでトイレくらい行けるんだから。
そうご満悦の表情を浮かべる早咲ですが……最近になって生えそろってきた、毛が気になってきてしまいます。
毛先に水滴がつくからやなんだよね、と漏らしながら後始末をするのです……が。

早咲の帰りが遅い、と気になってきた家族たち。
兄はゲームが一段落ついたとのことで、様子を見に行くことにしました。
ですが、どうしたことでしょう。
すぐ近くにあった女子トイレに、早咲の姿がないのです。
人目をはばからず中に入っても探してみても、その姿はなく。
慌てて家族全員で探し回るのですが、どうしても見つかりません。
やむなくキャストに助けを求めるのですが、この遊園地では雰囲気を壊さないように館内放送はしない方針のようで……
ゲートを封鎖し、セキュリティキャストが手分けして探してくれることにはなったのですが……結局早咲は見つからなかったのです。
日本の警察は優秀だから、絶対見つけるからね。
とうとう警察沙汰になってしまい、女性の警察官が兄の頭を撫でてそう約束はしてくれたのですが……結果は……
あの時、一緒にトイレについていってやれば。
兄はそう後悔し続けたまま……二年の月日が経ってしまったのです。

一体この創作の目を潜り抜けて、早咲はどこへ行ってしまったのでしょうか?
トイレを終えた早咲は、手を洗っている最中に車いすの老婆に声をかけられていました。
電動車いすが急に動かなくなってしまったから、そこの多機能トイレまで押していってくれないか?
そのお願いを快く受けた早咲は、トイレに彼女を連れていき、外に出ようとしたのですが、終わっても外に出られないから少し待っていてまた手伝ってくれないか、と言われてしまいました。
それもまた快諾し、多機能トイレのドアを閉めてあげたのですが……その直後のことです。
背後から老婆の腕が伸び、
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早咲を裸占めに捕えたのは!!
じたばたと手足を振るっても脱出はできず、意識を失ってしまう早咲。
その上で、薬品を注射してしっかりと深い眠りに落とす老婆。
いや、その人物は老婆ではありません。
カツラを取るとそこから出てきたのは、中年男性の顔。
その男はいままで自分が乗っていた車いすに眠った早咲を乗せ、そして今度は少年のような髪形のかつらを早咲にかぶせ、メガネとマスクをつけさせます。
服装も男の子がきるような半ズボン姿の服装にしてしまい、もはやだれが見ても一目では早咲とわからないようにしてしまいました。
警察の捜査も受けたのですが、その際しっかりとしたチェックを受けさせないように、呼吸器を鼻に突けた病気の少年が、今薬で眠っている、と言う設定も作り出してあり、すんなりとその追及を逃れてしまいました。
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男は悠々と、父親の横を通って遊園地を抜け出し、そして……

目が覚めた早咲が見たのは、とんでもない光景でした。
いつの間にか乗せられていたのは、ヘリコプター。
そしてヘリコプターの行く先には、巨大な、巨大なパンダ型の建造物がそびえたっていたのです。

そしてもう一度意識を奪われてしまった早咲がまた目覚めたときに待っていたのは……
見知らぬ少女の口付でした。
意味がわからない状況に戸惑う早咲ですが、その唇を奪った少女は、胸に大きく「千晶」と書かれています。
緊張をほぐそうとしているのか、おどけて見せる千晶についていけない早咲ですが、千晶は早咲にこう言うのです。
あたしは千晶、お前だって「花」だろ。
そう言われると、いつの間にか着せられていた服の胸には、「花」と大きく書かれていました。
私は早咲です、と言おうとしたところ、その言葉をすごい剣幕で遮られてしまいました!
言うんじゃねえ、ここでそんなこと。
ここで本当の名前なんてねえから、胸にかかれた名前がお前の名前なんだよ。
そう、お前は「花」なんだ。
……突然名前を奪われ、「花」にされてしまった早咲。
思わず泣きだしてしまうのですが、本当に驚くのはそのすぐあとでした。
戸惑い続きの中、突然現れた女王様的なルックスのの高圧的な女性に、ここが何なのかを知らされることになるのです。
ここは「パンダの穴」。
ここパンダの穴は、アイドル養成機関である!!
そして花よ!
お前はここで修練を積み、
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アイドルになるのだ!!



というわけで、突然誘拐されてアイドルになれと言われてしまった早咲改め花。
このパンダの穴、ただのアイドル養成機関とは一線を画す、とんでもない施設になっています。
今回の紹介ではお話が始まる第2話から紹介させていただきましたが、そのとんでもなさはプロローグ的な第1話で垣間見ることができます。
アイドルになるか、さもなくば、言葉の綾でも何でもない「死」か。
そんな恐ろしい現実を強制されてしまうのです!!

本作はそんなとんでもなく特殊な状況で強いられるアイドルの訓練と、そんな特殊な状況の中で歪んでしまう苛烈な人間関係をメインに描いていきます。
花はこのどこを向いても地獄と言えるパンダの穴で、生き延びること……アイドルになることができるのでしょうか?
彼女をいまだ探し続ける家族が待つ二年後にいったい何が待っているのか?
女性の集団生活モノには欠かせない(?)人間関係の厳しさ、行き過ぎとしか思えないアイドルの訓練、そしてその過酷な生活の中で芽生え始める花の秘められた才能……
相原先生らしいシュールさも備えつつ、藤田先生の描くキュートな女性キャラが容赦のない試練にさらされ続ける本作、目の離せない展開が続きますよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!