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今回紹介いたしますのはこちら。

「三つ目黙示録 ~悪魔王子シャラク~」第1巻 脚本・藤澤勇希先生 漫画・柚木N'先生 

秋田書店さんのチャンピオンREDコミックスより刊行です。



さて、モンスターパニック系の作品を得意とし、近年ではあまやゆうき名義も使って漫画原作も手掛けるようになった藤澤先生と、こちらも近年では全年齢向け作品を手掛けるようになった柚木N'先生がタッグを組んだ本作。
作風的にはとてもタッグを組みそうだとも感じられなかった両先生ですが、その上手塚治虫先生の不朽の名作である「三つ目がとおる」を原作とした作品を描くとは……
一体どんな作品になっているというのでしょうか!?


2016年の夏、A県の山中。
遺跡調査のアルバイトをしていた少女、鳩村は何やら気になるものを見つけました。
調査の指揮を執る神司に慌てて報告しますと、それはやはりものすごい発見のようです。
それは、赤い色をした、槍のような、矢印のような……謎の物体。
1万年前の地層からこんなものが、驚くべき綺麗な状態で出土しただけでも驚くしかないのですが、特に驚いたのが10年前にペルーで発見されたオーパーツ、「赤いコンドル」にそっくりだ、と言うこと!
まあその赤いコンドルは、3年前日本で展示されていた際に紛失、それ以来行方がわかっていないのですが……
ともかく神司は、この発見されたオーパーツに蛇型装飾が施されていることから、「赤いオロチ」と名付けるのでした。

さらに調査を続けますと、赤いオロチを取り囲むかのように、円状に石が配置されていることがわかりました。
これはストーンサークルだ、同じ高さで完全に等間隔で並んでいる、これはもしかしたら当時の姿をそのまま残したものかもしれない、と大喜びする神司。
なんでも現存する環状列石などの巨石遺構の多くは、発見された手がかりから予想して再現して作ったものがほとんどなのだとか。
これが本物ならば、世界中が驚く正規の大発見となるのですが……この発掘された遺跡の土地の持ち主は、それを知ったうえで、埋めてくれないか、と言いだすのです!!
この土地、実は大型リゾート施設建設予定地。
設けることしか考えていないその権利者は、この土地の調査などさっさと切り上げて、これ以上時間をかけず早い所建設を進めたいようなのです……
それでも神司は、この発見はものすごいものだからと頑として引きません!!
古代ロマン大好きっ子の鳩村もこの遺跡の凄さに興奮し、さらなる調査を進めたいと考えるのでした!!

夜になっても、権利者たちの遺跡を埋めろという要求は止まりません。
今度はチンピラ二人を使い、実力行使に出たようですが、それでも神司は一切引かず!!
この赤いオロチは、1万6千年から2万年以上前のまだ土器すら満足にない時代の地層から出たのに、土器でも金属でもない、セラミックか強化プラスチックのような素材でできている、ものすごい大発見なんだ、と説明。
ですが、こちらも金のことしか考えていないチンピラは一切聞きません!!
それどころか、このチンピラはとんでもない悪のようで……何と神司を高い崖から突き落とし、始末してしまいました!!
そして赤いオロチもなかったことにしようと、ショベルカーで破壊しようとするのです……!

開け下に落ちた神司はもう虫の息。
もはや死を待つばかりなのでしょうが……そこに、ニット帽をかぶった一人の少年が現れました。
木の毒したねオッチャン、あんたはもう死ぬ、悪いけど助けるのはもう無理だ。
死ぬ前に礼を言っとくよ、あんたたちが掘り出してくれたおかげであれがボクを呼び出した。
ボクはあれの正統な継承者だからな。
そう言って少年が帽子を取ると……
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その額には、第3の目がらんらんと光っていたのです!!
写楽保介。
そう名乗った彼は、唱えます。
アブトル・ダムラル・オムニス・ノムニス・ベル・エス・ホリマク。
我とともに着たり、我とともに滅ぶべし。
そう唱えた瞬間、今まさにショベルカーでおられようとしていた赤いオロチが宙に舞い……
そして、熱と化せブラフマン、という写楽の言葉とともに超高熱を発射!!
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ショベルカーをチンピラごと、ドロドロに溶かしてしまったのでした!!

翌日、神司は調査費を持ち逃げして失踪したと嘘の情報を吹き込まれ、返されてしまう鳩村たちバイトの調査員たち。
何かうさん臭さを感じた鳩村だけは、せめてあの遺構の写真だけでも取っておこう、と抜け出して行くのですが……
なんとあの遺跡の列石が、いつの間にか人間の背丈くらいの高さが露出するまで掘り出されていたのです!!
そしてそこには、写楽がいました。
その中に入っていると危ない、命の補償はしない。
この遺跡はボクのだ、かつて世界を支配した三ツ目族の末裔の。
そう言う彼の言葉をにわかには信じられない鳩村ですが、この後の光景を見せられては信じるしかありません。
写楽があの呪文を唱えると、列石はひび割れ、中から……何か、機械のようなものが露出したのです!!
写楽によればこれは、トランスレーターだと言います。
全てのエネルギーを等価で別のエネルギーに変換する、と言うそれは、正しく使えば世界中のエネルギー問題を解決してくれるでしょう。
ですが写楽はその力を使い、その場にちょうどやってきて、その施設を奪おうなどと考えていた土地の権利者たちを皆殺しにしてしまうのです!!
鳩村はそれを見て恐怖!!
何でもするから殺さないでくれ、と要求すると……これからすることのギャラリーになれと言うのです。
写楽がこれからしようと言うのは……
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人間の築いた現代の文明を叩き潰す、こと!!
まず手近な街を一つ焼き尽くしてやる、と呪文を唱え始める写楽……!!
まさか本当に彼はこのまま、人類を地獄へと招くのでしょうか!?
ですがそこに、ある人物が現れるのです。
写楽のことを誰よりもよく知る、あの少女が……!!



というわけで、新たな産声を上げた「三つ目がとおる」と言える本作。
こう言った伝奇めいた物語も得意としている藤澤先生、原作への想いもひとしお(巻末のあとがき参照です!)とのことで、しっかりと読み応えあるものとなっています!!
写楽が正義のヒーローになってしまうこともなく、しっかりと隙あらばヒロイン以外の人間を支配してやろうと企んでしまったり、敵対する者には容赦ない攻撃を加えたりと、あの油断ならない主人公像をキープ!
それでいてあのヒロインになんだかんだ頭が上がらない様子や、母親に対してある種のトラウマを抱えていること、有能すぎるがゆえに油断するところなど、弱い部分もしっかり受け継いでいるのです!!
さらにそんな彼の舵をばっちり取っていく、元祖ボクっ子と言ってもいいであろうヒロインのあの子も、ボーイッシュでありながら母性を感じさせる特徴をしっかりとらえています!
かといってそのままのコピーというわけではなく、現代の漫画らしくいろいろな部分がブラッシュアップもされております。
あの「三つ目がとおる」のトレードマークともいえたバンソウコウをあえて(?)ものすごく現代風のあるアイテムに変えていたり、VRのような現代ならではの要素を盛り込んだりと新たな味わいも加えられております!
そしてこの鳩村という考古学大好きっ子をセミレギュラーに配置することで、オーパーツ的なものにより絡みやすい下地も作っているのもさすがでしょう!
そしてそんな中で気になるのは、「赤いオロチ」と「赤いコンドル」が両方存在しているらしいこと!
おそらく赤いコンドルのほうは誰か別の人物、下手をすればもう一人いた三つ目族の末裔的な人物が持ち去っているんじゃないでしょうか!
その謎の人物と写楽がクライマックスでバトルする……なんて展開もあるんじゃないかと考えると、わくわくしてきますね!!

そしてもう一つの新たな魅力は、柚木N'先生を起用しているだけに……エロス要素でしょう!!
手塚先生の絵ももちろん魅力的でエロス感漂っているわけですが、あの柚木N'先生が作画しているのですから……当然そっち方面をより伸ばしてくるわけです!
ふんだんに盛り込まれる女性の肌色部分……こちら目当てに買うのもありなのかもしれません!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!