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今回紹介いたしますのはこちら。

「忘却のサチコ」第7巻 阿部潤先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。


さて、つかの間の幸せを得られる至福の食事を求めつつ、仕事に精を出すサチコさんの日常風景を画く本作。
前巻では、偶然結婚相手になるはずだった俊吾さんと出会ってしまったのですが……


俊吾さんとの再会は、つかの間のものとなってしまいました。
ですが、行きずりの方の厚意やおいしいお食事のおかげで再び立ち直ることに成功。
前を向いて仕事に打ち込む決意を固めたのでした。
そんな仕事のほうはと言いますと、サチコさんが編集を務める文芸誌に大仕事が舞い込んできたのです。
ノーベル賞作家の村島先生が、その雑誌で書いてもいい、と言ってくれた、と言う!!
村島先生は、今まで一貫して「文芸の杜出版」社以外では作品を発表してきませんでした。
その村島先生が初めて他社で作品を発表すると、文芸界で異例の事態になるかもしれません。
編集長が偶然村島先生とバーで出会い、酒の勢いも手伝ってダメもとで仕事を依頼、すると向こうもいい気分になっていたのか、すんなりOKしてくれた……と言ういきさつの大事件なのですが、実は本当にすんなりOKというわけではなかったようで。
村島先生から、ひとつの交換条件を出されてしまったのです。
それは、「ホタルイカの身投げ」の写真を取って来い、というもの。
ホタルイカの身投げとは、産卵に来たホタルイカが海岸に打ち上げられる風景のことを言うのだと言います。
その光景はとても幻想的なのだそうですが……とにかく、その写真を取ってこられたら書いてやる、と言ったのだそうです。
手のあいた時にでも写真を取ってきてほしい、と編集長はサチコさんに命じてくるのですが、その話を聞いたサチコさんのほうが興奮を始めました!!
ホタルイカの産卵の時期がちょうど今頃だと知ると、手のあいた時どころか、すぐにどたばたと用意をしてスケジュールを調整!!
翌日には、北陸新幹線に飛び乗って、ホタルイカの名産地・富山へと向かったのでした!!

夜まではまだ時間がありますし、せっかくなので富山駅の駅ビルを見てみることにしたサチコさん。
流石名産地と言うことで、そこかしこでホタルイカの商品が並んでおります。
それを見ていると、サチコさんは空腹を思い出しました。
何かないか、と見ていますと、富山のもう一つの名産である白エビが目につきました。
富山でしか食べられないという白エビ料理……
本来ならばホタルイカ料理を食べるべきなのでしょうが、どうしても気になってしまいます。
気が付けば白エビ料理のお店に入り、注文まで済ませてしまっていたのでした。

白えび刺身丼スペシャル定食。
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サチコさんの頼んだメニューが運ばれてきました。
一尾一尾丁寧に手で剥いたという白エビの身は、つやつやと白く輝く、さながら宝石のような美しさ。
その美しさにほれぼれとしながら口に運びますと、その味もまたほれぼれとするものでした。
びっくりするほどの甘さと、とろけるようななめらかな食感!!
噛めば噛むほど甘みが口の中に広がっていく、まさに絶品の味わいです!!
しょうゆとの相性も抜群で、しょうゆをかけることで白エビの甘さがさらに際立ち、一気にご飯が進む味へと変貌!
その味は、上品に一口一口運んでいくよりも、一気にかき込みたい!!
そう考えたサチコさんはもう、
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一心不乱に丼をほおばるのでした!!

あまりのおいしさに一瞬仕事のことを忘れてしまったサチコさん。
すぐに気を取り直し、白エビ……ではなく、ホタルイカの情報を集めることにしました。
足を運んだのは、ほたるいかミュージアム。
その道中にも、ホタルイカの町と書かれた看板や、ほたるいか通りなるみちなどなど、この街ではものすごくホタルイカ推しが徹底されているようです!!
これほどまでに全面的にホタルイカを押し出してきているこの街にある、ほたるいかミュージアム。
ここに来れば、おそらく求めている情報もばっちり入手できることでしょう。
そしてホタルイカの身投げの写真を抑え、明日には村島先生に送り、執筆のOKをいただこう!
そう意気込んで、ホタルイカの身投げに関しての展示がされている場所へとやってきたのですが……
そこでサチコさんは、驚きの事実を知ることとなるのです!!
ホタルイカの身投げがなぜ起こるのか、本当の根拠はわかっていない。
身投げの場所や時間は予測できず、次年以降も見られるかどうかすら誰もわからない。
身投げを見る方法は、蜃気楼を待つようなもの……
と言うことは、こう言うことなのでしょうか。
見られたら奇跡、と。
サチコさんは一人ほたるいかミュージアムに立ち尽くし、つぶやくのです。
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ホタルイカの身投げって、そんなに簡単に見られるものじゃなかったのね……


というわけで、富山編を収録した今巻。
この富山編、この導入となるお話を含めて全4話構成となるのですが、その内容は「富山編」と言うよりも「ホタルイカwith白エビ編」とでもいうべき内容になっております。
この後サチコさんはホタルイカの身投げを見るために腰を据えて挑むことになるのですが……
その目的からホタルイカですし、食べるメニューもホタルイカメイン!
そこにたまに白エビが入り込む形になっていまして、これでもかとばかりのホタルイカ尽くし(たまに白えび)が堪能できるのです!!

この富山編の他は、うどん・そば・焼きそば、そして冷やし中華と偶然か狙ってか、麺類多めのラインナップに!
夏の暑さを涼しくしたり、夏祭りのつきものだったりと、夏に発刊される一冊にふさわしい内容なのです!
そんなおいしい料理をおいしく召し上げるサチコさんの幸せフェイスと、彼女のちょっとずれたリアクションも相変わらず楽しめますよ!

そして前巻で絶妙の引きを見せた俊吾さんとの再会。
俊吾さんとよりを戻すなり、しっかり決着をつけるなりすると、おそらく本作は最終回となるでしょう。
そんなことから、この再会はしっかりとした再開にはならないだろう、と皆さん予想されたのではないかと思いますが、その結果が今巻の冒頭できっちりと描かれます。
俊吾さんは予想外の再会をしてしまったサチコさんにキッチリと説明してくれるのか?
サチコさんの心情は……?
こちらも見逃せない内容になっています!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!