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今回紹介いたしますのはこちら。

「トミノの地獄」第2巻 丸尾末広先生 

エンターブレインさんのビームコミックスより刊行です。

さて、見世物小屋へと売り飛ばされてしまったトミノとカタン、双子の姉弟。
二人には考えたことや見たものを頭の中でやり取りする能力があったこともあり、見世物小屋ではそれなりに幸せな日常を過ごすことができていました。
ですが見世物小屋の運営者であり、お互いその事実は知らないながらもトミノとカタンの父親でもある男、汪の思い付きにより、二人は離れ離れにされてしまいます。
四手四足の金髪少女、エリーゼを教祖として新興宗教を作り、トミノをその世話役として連れていってしまう汪。
そして一人残されたカタンは火吹き芸の練習中に大やけどを負ってしまい……
トミノとカタン、二人の地獄めぐりはこれからが本当の始まりとなるようです……


汪のもとから、案山子、正、健の三人が見世物小屋に帰ってくると、そこは妙に荒れていました。
中にいたのは、熊童子として見世物にされているシンひとり。
シンは帰ってきた案山子の姿を見るなり飛びついてきました。
泣きじゃくり、小便まで漏らしてしまっているシン。
一人ではほとんど何もできないシン、独りぼっちになどしてはいけないはずなのですが……3人がいないこの時は、見世物小屋の管理をしている金姉がたよりのはず。
だというのに金姉の姿はどこにもないのです。
実は金姉、トミノをエリーゼのもとへ連れていっていたのですが、そんなことを案山子たちが知るはずもなく。
シンを置いて出かけるなんて、と健は苦々しい表情を浮かべるのですが……
そんな中、案山子はまた別のことを考えていました。
やけどを負ったカタンを、汪はどこかへ連れていった。
汪はカタンをどこの病院に連れていったのか?
お見舞いに行かなければ……

エリーゼが教祖を務める新興宗教は、かなりの信者を集め始めていました。
珍しい金髪碧眼、そして尋常ならざる8本の手足。
エリーゼ自身は何もせずただ偶像のようにたたずんでおり、その彼女のありがたさを汪の部下である張が吹聴するという形も成功につながったのでしょう。
当初はエリーゼも、このお飾りのような日常に退屈していたようなのですが……その状況を改善したのがほかならぬトミノだったのです。
見世物小屋時代から、都市の近い女の子だったトミノとは仲の良かったエリーゼ。
見世物小屋と宗教団体の本山という違いはあれど、二人の関係性に違いはありません。
エリーゼはもう着ないという服をトミノにあげたり、もう一人のおつきの少女と一緒にお風呂に入ってふざけあったりと、こちらでもそれなりに楽しい毎日を過ごしていたのです。
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……が。
やはりトミノの心の中にはいつもカタンがいるようで。
突然引き離されてしまったカタン、今はどこで何をしているのかもわかりません。
カタンのいない夜の寂しさに耐えきれず、枕を涙で濡らしてしまうのでした。

カタンはどこに行ったのでしょうか。
トミノがそのぬくもりを求め涙し、案山子はなぜかカタンはもう戻ってこないのではないか、と不安を募らせています。
……カタンは、ある孤島にいました。
波しぶきと潮風が容赦なく打ち寄せる崖の横に立っている、壁土もがはがれかけたみすぼらしい小屋。
そこに、アヤという少女が訪ねてきています。
小屋の扉にかけられた南京錠を開け、ゆっくりと扉を開いて中に入っていくと……そこに、カタンはいるのです。
ベッドの上に腰かけているカタン。
その姿は、異様そのものです。
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まるでオウムガイのような丸くいびつな形をした兜で顔が完全に覆われ、そして胴体には鎧を着こんでいるのですが、そこにつながっているはずの手甲と足甲はなぜか左半身にしかついていません。
どうやらアヤは、そんなカタンに食事を届けていたようです。
おまちどおさま、残さず食べるのよ。
そう言って食事の用意をすると、カタンは何も言わず兜の前側を装甲をずらし、食事を始めるのですが、そこで怒鳴り声が聞こえました!
眼鏡に白髪の老人が現れ、扉を開けたままにするんじゃない!とアヤをしかりつけたのです!
かと思うと、相手は子供だから手米にされる心配はない、といやらしく笑う老人……
アヤはその下卑た表情を隠すかのように、乱暴に扉を閉めたのでした。
……老人は、色気づきやがってとぼやきながらその場を離れていきました。
あの鎧をカタンにつけたのはほかならぬこの老人。
老人は笑います。
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カタンは成長期。
あの鎧をつけていれば、片手片足の成長が止まる、そしてあの兜をつけていれば頭の形も歪む。
どんな箱櫃児……幼子を箱に入れたまま育て、人工的に作り上げた異形、になるのか。
楽しみだ。
聞くだけでも怖気が立つような笑い声が、鼓動に響き渡るのです……


というわけで、カタンに迫る地獄が描かれていく今巻。
トミノのほうは寂しさこそあるものの、平穏な日常を暮らしているというのに、カタンにはあまりにも無残な運命が待っていました。
トミノとカタンには、通じ合う力が備わっています。
今のカタンは異常過ぎる状況に追い込まれているため、頭の働きが鈍ってしまっているようで、その状況がトミノに伝わってはいないようです。
が、これ以上に何かが起きたとしたら……!?
トミノにもその心情が伝わり、カタンだけでなく、彼女自身も取り乱してしまうでしょう!!
運命に翻弄されるトミノとカタン。
今巻の中盤から、その地獄はより一層激しく、そして幻想的になっていきます!!
生まれた直後から捻じ曲げられてしまっている二人の運命は、さらにねじ曲がり……そしてどう変化していくのでしょうか?
同時に、見世物小屋のほうにも大きな変化が訪れ、そしてトミノとカタンの母親であるあの人物も動きを見せ始め……
物語もうねりを見せる、美しくも妖しく、そして悍ましい愛憎劇、その世界に魅惑されることでしょう!!


今回はこんなところで!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!