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今回紹介いたしますのはこちら。

「ブラック彼女」第1巻 吉沢雅彦先生 

メディアファクトリーさんのMFコミックスアライブシリーズより刊行です。

吉沢先生は10年ごろから活躍している新人漫画家さんの一人。
原作付きの作品を多く手掛けられていましたが、今回は吉沢先生先生初となるオリジナル作品の単行本。
その内容は……?


星野テル、14歳。
その年齢の割には低い身長と、小さな肝っ玉をもつ少年です。
その日も日が暮れてから買い物に行った帰り、闇の中でポスターを怪しげな人影と見間違え、腰を抜かしてしまっていました。
そんな時、いきなり奇妙な歌が聞こえてきます。
本来明るい歌である、誰しもが知っている歌の歌詞を、二人で自殺を図った、いちにのさんで飛んだら僕だけ飛んでいた、などと物騒な者に変えた歌が。
その歌を歌っていたのは、クラスメイトである美少女、天宮さんでした。
なんだかいつもと様子が違う気がする彼女、いきなりテルの髪をつかみ、引き抜きました!
ゴミがついていた、と言う彼女ですが、明らかにその様子は普通ではありません。
戸惑うテルに、天宮さんはこんな話をし始めました。
この辺で起きている通り魔殺人、知ってる?
今日みたいな雨の夜に、テープで体をぐるぐる巻きにして目だけ集中して潰されるんだって。
何度も何度も何度も何度も、とがった棒みたいなもので。
気弱なテルは、怖い話ももちろん嫌い。
耳をふさいで大声を上げてその話を聞かないようにするのですが……
いつの間にか、天宮さんはその手におかしなものを持っているではありませんか。
それは……血まみれの、ドライバー……?
それに気が付いたテルは背筋が凍り付くような戦慄を覚えるのですが……
その直後、背後からまた別の声が聞こえてきます。
コラ星野、明日も学校あるんだから早く帰って寝ろ!
そう声をかけてきたのは、テルや天宮さんの担任教師である月岡先生です。
確かにもう日も暮れていますし、少しでも背を伸ばすために日頃から早く寝るようにしているテルからすればもう帰らなければいけない時間。
先生の登場で視線から外していた天宮を振り返り、もう帰ると声をかけようとしたのですが、そこに彼女の姿はもうなかったのでした。

翌日。
いきなり両目から血をしたたらせて死んでいる死体の画像を見せられ、おびえてしまうテル。
面白がって画像を見せた友人は、昨日もまた通り魔が出たんだよと怖がりのテルを脅かして楽しんでいます。
お前驚くと、いつも口に手が行くのな、女みたい、とおちょくってくる友達に、そんなことないと必死に抵抗するテルですが……
そこに天宮さんが現れます。
毎日いい加減にしなさい、星野君をいじめていいのはあたしだけだもん!
そう言いながら現れた彼女は、テルに関節技をかけてきました!
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明るく活発で、おっきなお胸も備えた彼女、こうしてテルが困っているシチュエーションに乱入してきて、いじめるようなそぶりをしながらも助け出してくれるのです。
関節技をかけながら、話してほしかったら好きな子を教えて、と迫ってくる天野さん。
流されるままテルは、その子はすごくかわいくて、まだちゃんとても握ったこともないけど、関節技をしてくるときに何度か……と答えてしまいます。
なにそれ、星野君に関節技をかけてくる女子ってそれあたしじゃん、と何気ない感想を漏らす天宮さんなのですが……それの意味することに気が付き、一気に真っ赤になって体を離し、今のなし、ノーカン、この話終わり!!と強引にその話を打ち切ってしまうのでした!

そんな何だかいい感じの二人、その日は一緒に下校しました。
最近通り魔とか怖いし、などといってくる天宮さんに、テルは昨夜はノリノリで話してたくせに、と突っ込みを入れるテル。
ですが天宮さんは、昨夜って何のこと?ときょとんとしています。
月岡先生と会って……と詳しく伝えようとしたものの、そう言えば月岡先生教休みだったね、と話をそらしていく天宮さん。
なんだかよくわからないまま、テルは天宮さんのお宅を訪ねることになりました。

とうとう好きな女子の家にお邪魔することになったテル!
ドキドキしちゃうところ……のはずが、初めてやってきた天宮さんの家に、なんだか見覚えがある気がします。
確かここは和室で、奥がベランダ……
そうつぶやきながら和室の中をのぞくと、そこには昨夜の天宮さんが来ていた服がハンガーにかかっていました。
よく確かめようとしたものの、その瞬間に天宮さんが和室の扉を閉じてしまい、お行儀悪いぞと注意してきたためにそれ以上のことはわかりませんでした。
どんどん強まっていく違和感は、天宮さんの部屋に入ってさらに強くなってしまいます。
天宮さんの部屋も見覚えがあるような気がしますし、何よりも天宮さんが気に入っているというピエロの服を着たオルゴールも見覚えがあるのです。
しかもそのオルゴール、もとは交通事故でなくなったおばさんの者だった、ということまで覚えていて……!
やはりこの家に、以前きたことがある!
しかもそのオルゴールを見ると、なぜかものすごく嫌なことを経験した感覚がよみがえってきて……テルの不安は増大するのです。

じゃあアルバムを持ってきてみよう、と部屋を出ていった天宮さん。
アルバムとなれば子供のころの天宮さんも見られるな、と真実を知りたい欲求とともにうれしさもこみ上げてきたテルは、おもわず床でごろごろしてしまいます。
すると、ベッドの下に一枚の写真があることに気が付きました。
それは、
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前歯が抜かれて、血まみれになってくる死んでいる少年……いや、子供のころの自分の写真!!
直後、あのオルゴールが鳴り響き始めました。
オルゴールの不気味な音色とともに、開店する人形の、首。
知っている、自分はこのオルゴール人形を、そしてこの曲を……!!
驚いているテルのもとに、天宮さんが戻ってきました。
ですが天宮さんは、その曲に合わせて昨夜の歌を歌いながら……アルバムではなく、焼き立てのクッキーを持っています。
アルバムのことは気になりますが、手作りだというそのクッキーを促されるまま口に運ぶテル。
そのクッキーの味は抜群だったのですが、突然固く小さい何かの感触が口の中を襲ったのです!
吐き出してみるとそれは、小さくて白い……石のようなものでした。
天宮さんは言います。
歯だよ。
テルテルの子供の歯。
幼稚園の頃ここで抜いたじゃない、お医者さんごっこして。
……ふつふつとよみがえる、子供のころの記憶。
彼女に押さえつけられ、プライヤーで強引に歯を引き抜かれた記憶……!!
おびえたときに思わず口元を抑えるテルの癖は、この時に生まれていたのです!!
突然思い出したあまりにも衝撃的な記憶。
天宮さんはそんなテルの顔を覗き込み、こんなことを言いだしました。
キレイな目、かたっぽもらっていい?
道具だって用意してあるんだから。
そう言って取り出したのは、
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あの血染めのドライバー……!!
まさか彼女は、あの通り魔事件の……!?


というわけで、衝撃の幕開けを迎える本作。
街を騒がす連続殺人鬼の噂におびえるテルでしたが、その犯人がまさかの身近な、信頼していた人物だった!?
そんな導入から始まるわけですが、この後も物語はどんどんと複雑に、そして恐ろしくなっていきます。
本作の軸となるのはおそらく、普段の明るく優しい天宮さんと、豹変した天宮さんでしょう。
普段は豹変時のことを隠して普通に生活している、というわけでもなさそうですから、パッと思いつくのは二重人格と言う落ちですが、果たしてそこのところはどうなのでしょうか。
どちらにしろ、どちらのバージョンの天宮さんにも好かれているのは間違いないテルが、様々な危険に巻き込まれてしまうのは間違いないでしょう!!
彼女とテルの間に過去起きたこと、そして彼女の今の目的……
それらが物語の鍵としつつ、ブラックな彼女の驚くべき行動と、テルの苦悩を描いていくことになるわけです!!

さらにこの後、新たにまた別の恐ろしさを感じさせる新キャラクターの登場や、思いがけない人物の思いがけない真実などが立て続けに明かされて行きます。
どんどんと恐ろしい目にあい、絶望的な状況に追い込まれていくテルの今後を期待せざるを得ませんよ!!


今回はこんなところで!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!