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今回紹介いたしますのはこちら。

「ヤミアバキクラウミコ」第1巻 丈山雄為先生 

集英社さんのジャンプ・コミックスより刊行です。

さて、「リビドーハンタータケル」で好評を博した丈山先生の最新作となる本作。
「タケル」はエロス要素を加えたアクションコメディでしたが、本作はキャラクターの投信も上がったシリアス路線に。
丈山先生の挑む新路線作、その内容は!?


近所で飛び降り自殺があったというニュースを見ながら、朝食を食べていたシュンとその姉。
飛び降り自殺なんて怖いねぇ、というか、悲しいねぇ、と持ち掛けてくるお姉さんに、シュンは他人だし、別に……とつれない反応を返すばかり。
昔はシュンも優しかったのに、とため息をつくお姉さんに、何も言わないまま食事を終わらせて駿は自分の部屋に戻ってしまいました。

シュンがやさしかったという「昔」。
その昔は、シュンに取って振り返りたくない過去です。
小学生の時、シュンは元気で明るく、優しい少年でした。
ですがそんな彼のクラスに、女子たちの間でいじめが起きていたのです。
ある女子三人組が、村上さんと言う女子に集中して、いじめを繰り返していて、他のクラスメイト達はみなはれ物に触るかのようにそれを遠巻きに見ていたのですが……
ある時、いじめっ子が村上さんに、髪形が似合わないから切って上げる、と髪の毛に勝手にはさみを入れようとしました。
そこでとうとうシュンは耐えきれなくなり、村上さんを傷つけるな!と、そのいじめを咎めたのです。
その時はそれでいじめっ子たちも引きさがったのですが……
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過去を振り払うかのように腕立て伏せをはじめ、50回終えた後、食器の片づけや布団を片付けて学校に向かったシュン。
今のシュンは高校生、高校に「昔」の自分を知っている人はいない……のですが、どうしても過去の記憶が彼を苛むのです。
女子が数名で笑いあっていると、自分のことを笑っているかのように感じてしまう……
そんなトラウマから、シュンこう考えていました。
俺は人間が嫌いだ。
信じると裏切られ、助けると身代わりにされる。
もう誰も助けない。
そんな考えをおもてにも出さず、友人のタウとにこやかに挨拶を交わします。
人間嫌いだというシュンですが、男子を相手に会話をするのは何の問題もないようで須。
ですが、女子に対してはどうしてもまともに会話をすることができないのです。
とりわけ、大声で笑い合うギャル系の女子は特に苦手で……
そんなクラスに、イケメンでクラスの人気もの男子、藤井がやってきました。
なんと藤井、昨日の自殺の肢体の画像を入手したとのことで、その画像をクラスの皆に見せてその反応を楽しんでいました。
にぎやかになっていくクラスの中に、また一人入ってきたようです。
一人だけ違う制服……真っ黒な丈の長いセーラー服に身を包んだおかっぱ頭の少女、宵野闇子が。
藤井は早速闇子にも件の画像を見せたのですが……闇子の反応は思っていたものと違いました。
彼女は何も言わず、表情も変えないままぽろぽろと涙をこぼしたのです!!
そんな闇子は、一週間前に転校してきました。
そのいやでも目を引く姿形に加え、珍しい名前と言う要素だけでも注目された彼女ですが、なんといっても自己紹介が独特で、一気にクラスの中で浮いた存在になった彼女。
彼女は自己紹介でこう言ったのです。
好きなものは、黒いもの。
嫌いなものは、人間です。

いつもクラスの片隅で本を読んでいる彼女に、話しかけるのは委員長と藤井くらい。
そんな彼女が、誰かの自殺に涙した……
もし自分の過去を知ったら、彼女は涙してくれるだろうか?
そんなことを考えていたシュン。
そうしていると、どうしてもシュンは闇子にチラチラと視線をやってしまうのですが……
シュンは気づいてはいませんでした。
そんな自分にずっと視線を注いでいる、怪しげな黒いモノがいたことに。

その日の放課後のことです。
シュンは一人放課後の教室に残り、思いを巡らせていました。
それは、今日の授業の合間にあったある出来事がきっかけとなっています。
良くも悪くも目立つ闇子に、聞こえるように悪口を言っていたギャル系女子たち。
そんな彼女たちに、藤井はそう言うのはやめろ、転校してきたばっかりなんだし優しくしてやれよと注意したのです。
藤井はいつも楽しそうでみんなと仲良くて、男気もあって、背も高くてカッコイイ、本当に良いやつだ。
まるで「主人公」みたいなやつだな。
俺だって昔、女の子を助けた、のに。

俺は主人公になれなかった。
俺は、俺が嫌いだ……
しばらくそうしているといくらか落ち着いたのか、よくやく帰路につくシュン。
ですがその直後、とんでもないものを見てしまったのです!
それは、
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女子トイレであのギャル女子二人が、闇子を脅している場面でした!
そんな服着てるお前が悪いんだ、明日から普通の服着てこい!と無理やりその服を脱がそうとしている女子二人!
助けなければいけない場面だということはよく分かっている、のですが……どうしても過去のトラウマがよぎり、一歩踏み出すことができません。
しかしそれでも歯を食いしばり、自分のことなんか考えてるんじゃねえ!と気力を振り絞って決意を固めたのですが……
その瞬間、あのシュンを見つめていた黒いモノが、シュンの中に飛び込んだのです!!
すると、今まで燃えたぎっていた熱い何かが、とたんにすっと冷め、もう誰も助けないって決めたじゃないか、とシュンはその場を立ち去ってしまいます。
いったいこの黒いモノは何なのでしょうか?
それはシュンの中に救い始めたようですが……
そしてそれが旬の中に飛び込んだ瞬間、闇子のほうにも変化が訪れました。
何かに気が付いたような表情を浮かべると、今までただ嫌がっていただけだった闇子が、ギャル女子に言い放ったのです。
あの、お二人とも、くたばりやがれです。

帰ろうとしていたシュンに、闇子が駆け寄ってきました。
そして人気のない場所に連れこみ、シュンに向かって奇妙なことを言い始めます。
愚民さん、今からあなたの心に入ります。
闇子の掌がシュンの胸に触れると、一気に世界は暗転し……
気が付くと、シュンは教室にいました。
高校の教室ではありません。
それは、小学校の教室でした。
そして、そこにいたのは……
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シュンにトラウマを植え付けた、いじめの矛先をシュンへと変えたあの女子三人組だったのです!!


というわけで、謎の少女、闇子が様々な人物のトラウマと対峙していく物語となる本作。
闇子は彼女の相棒とともに、人のトラウマを食らって成長するあの黒いモノ、陰獣を倒す戦いを繰り返しているのです。
そしてシュンもこの戦いに巻き込まれてしまったことで、その人生を大きく変えることとなっていきます。
シュンと闇子の二人が戦うことになる陰獣は、そして陰獣に魅入られた人のトラウマはどんなもので、ドンな牙をむいてくるのか?
迫力のアクション、悍ましい怪物、そしてずしんと来るドラマのどれもが楽しめる作品となっているのです!!

本作の最大の売りはやはり、情け容赦ないトラウマの内容とそこから生まれる怪物でしょう。
主人公となるシュンのトラウマも、正義感が逆にいじめを呼んでしまったというかなり重いお話なのですが、2人目の被害者の抱える問題も難しいもので、さらに三人目の被害者に至っては少年誌でやっちゃっていいのかと心配になるくらいの超鬱展開!
読む人を選んでしまうかもしれないくらいの内容となっていますので、そっち方面の体勢がない方は注意が必要かもしれません……!

そして今巻のラストでは、第2巻以降の新たな展開を予感させるキャラクターも複数登場し、この第1巻では謎だらけだった闇子関連の謎も明かされていきそう。
次巻以降も目の離せない展開となりそうですよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!