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今回紹介いたしますのはこちら。

「百人の半蔵」第3巻 横尾公敏先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。

さて、世界を支配する100人の服部半蔵を片付けるため旅を続けている無縁之助。
ですが半蔵も一枚岩というわけではなく、それぞれ目的や立場が違っている様子。
そんな半蔵たちが、退屈な日常を楽しむため妙なことを企画し始めます。
それは、全国の半蔵を集めての戦争ごっこ、「半蔵戦争」というもの!!
果たしてこれはどんな状況を招くというのでしょうか!?


忍法火炎釜。
周囲を業火に包みこみ、相手の逃げ場を奪ってやがてその命を奪う忍術。
それを放っているのは、丹波の国を治める火事屋の服部半蔵です。
そしてその術中にいるのは……備前の国の、武器屋の服部半蔵。
武器屋は、その技を見て見事だ、とつぶやき、こういいだすのです。
考え直さないかな?君、実に欲しいよ、と。
火事屋はそんな武器屋の誘いを即座に断ります。
半蔵同士では群れない、組織を作らない、自由に生きると決めたはずだ!
その返答に確かにと肯く武器屋ですが、それでもと持論を展開し始めるのです。
俺は武器が好きでたまんないのよ。
半蔵の術って最高の武器だと思うのよ、その武器が使わずになまくらになるのが悲しいのよ。
今、俺と戦屋の半蔵で面白いことを始めようとしてるのよ。
俺が関西の半蔵、戦屋が関東の半蔵を集めてさ、日本をかけてゲームするのよ。
関ケ原でで戦争ごっこを楽しまないか!?
名付けて半蔵戦争!!
それを聞いた火事屋は怒りをあらわにします。
どうやら火事屋、半蔵の掟を順守しようとする、真面目(?)な半蔵のようで。
炎を球状にして無数に飛ばす火炎弾の術での攻撃をその返事がわりに飛ばしたのです!
ですが武器屋は慌てません。
残念だよ、その術は戦わずどんどん劣化するのか。なまくらは武器にあらずだよ!
武器屋がそう言うと、彼の服の裾の下から無数の刀が姿をあらわしました。
そして、忍法刀の舞と叫ぶや否や、刀は宙を舞ったのです!!
その刀のうちの一本を取った武器屋、火炎弾を難なく打ち落として見せました。
どうやら火炎弾の術など彼に取っては話にもならない術のようです。
こんな安い術じゃなくて最高の術を見せろ、と言いながら武器屋は逆に攻撃を仕掛けます!
円状に並んで浮いていた刀を回転させ、相手を切り刻む必殺の術、円剣陣で!!
対する火事屋も負けてはいません。
炎をうねる龍のように変化させて相手を焼き尽くす、火炎龍の術で応戦をしました!!
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円剣陣VS火炎龍、その激突の行方は……!!

その頃。
無縁之助は丹波の街道沿いの茶屋を出たところでした。
すると突然、彼の持っていた巻物が煙を上げ始めたではないですか!
この巻物は、100人の半蔵を余すことなくリストアップした名簿。
そして、名を書かれた半蔵が死ぬと、煙とともにその死んだ半蔵の名前が消えるという代物です。
無縁之助が巻物を見てみると……今まさに、半蔵の名前が消えるところでした。
あの火事屋と武器屋の戦いの敗者の名前です。
が、消えたのはそれだけではなかったのです。
但馬の国の笛屋の半蔵、そして三河の国のかかし屋の半蔵……一気に三人もの名前が消えてしまったではありませんか!!

翌日。
またまた茶屋で休憩していた半蔵、先日一気に3つの名前が消えたことに驚いていましたが、その後……昨日今日でそのほかにも多くの半蔵の名前が消えています。
その原因はほかでもない半蔵戦争前の小競り合いなわけですが……無縁之助はそんな事情つゆほども知りません。
政府の無能の奴らの仕業なわけはないし、摩夜の言っていた半蔵たちの妖しい動きのせいか?などと考えていますと……突然おっさんと若者の二人組が、ごちそうになった、と頭を下げて茶屋を出ていきました。
なにやらあの二人、無縁之助に会計を押し付けてどこかへ行ってしまおうということのようです!!
慌てて追いかけようとする無縁之助、当然食い逃げだとお茶屋は用心棒を無縁之助の前に立ちはだからせるのですが……正直、無縁之助はこのくらいの金額、払えないわけじゃないんです。
ですが、ケンカとなればやらずにはいられない性質で……!!

用心棒をたたんだ後、無縁之助は二人にあっさりと追い突きました。
彼らは、元信濃藩の侍大将、九兵衛とその子供獅子丸。
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九兵衛はたまたま知っていた、自分と同じ打倒半蔵を掲げる侍である無縁之助を見かけ、路銀の節約にとその会計を押し付けようとしていたのです!!
獅子丸はまじめなようでそれはどうかと言っていたのですが……
あんなことしやがって、クソ首とクソ胴体をお別れさせてやる!と怒り狂う無縁之助をみて、九兵衛はせこい、小さい男だと悪口の嵐で応戦しやがります。
もう無縁之助は止まりません。
九兵衛は、わしは許しなどこわんぞ、勝負だ!と謎の逆切れをして……手近にあった木の枝を折り取り、それを刀がわりにして無縁之助に勝負を挑んできたではありませんか!!
このくらいハンデをやらんとかわいそうだとふく九兵衛。
無縁之助はもうそんなことお構いなしで、クソガキの前でクソ親父にクソ恥をかかせてやる!と肩苗雄ぶんぶん振り回して襲い掛かるのです!!
……が、どうしたことでしょう。
無縁之助の攻撃が全く当たらないではありませんか!!
なんと九兵衛は、手にした小枝でほんのわずか無縁之助の刀の軌道をそらし、攻撃を空振りに導いているのです!!
相手の剣筋を操る剣……円魔流!
そんなちんけな技で戦って面白いかよ!と吠える無縁之助ですが、吠えたところで結果は変わらず。
勝てばいいんだと枝でぴしりと頭をたたかれ、力の差を見せつけられてしまうのです!
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謎多きこのおっさん、九兵衛の正体は?
そしてともに行く獅子丸にもある大きな秘密があるとのことで……!?
無縁之助の旅に変化が訪れることになりそうです!!


というわけで、物語に大きな変化が訪れる今巻。
今まではあっさりか激闘の末か、という違いはあれど、基本的には無縁之助自身が半蔵と対峙し、そして倒すことになっていました。
が、日本を手中に収めた半蔵たち自身がその退屈をしのぐために殺し合いを始める……仲間割れとでもいうような事態が起きてしまったのです!
確かに100人全員を一人で殺すというのは、残り僅かな寿命である無縁之助には難しいところでしょう。
ですが、半蔵戦争で残った半蔵は漏れなくつわものだということにもなりましょうし、何よりも群れることが基本的に無いはずの半蔵が集団になってしまう可能性すらあるわけです!!
敵の数こそ減るものの、戦いはより厳しくなるとみていいでしょう!!

そして登場した、半蔵ではない強者。
九兵衛と獅子丸、その登場が無縁之助にどのような影響をもたらすのか……?
この他にも思いもよらない人物が登場し、物語の勢力図が変わっていく予感もするのです!!

そんなお話の構造の変化はあれど、本作の最大の肝ともいえる迫力満点すぎるアクションシーン、そして情け容赦のないストーリー運びは健在です。
泥臭い血みどろ決戦に手に汗握ること必至ですよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!