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今回紹介いたしますのはこちら。

「死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々」第2巻 阿部共実先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックス・タップ!より刊行されました。

さて、様々な甘く苦い青春を描いていくオムニバスである本作。
連載が不定期なだけに、第1巻発売から1年ぶりとなる第2巻の刊行となりました。
今巻でも心がホッコリ系のお話から心をザックリ系のお話まで取り揃えておりますが、今回はそんな中から「友達なんかじゃない」というタイトルからしてやばそうな名前のお話を紹介したいと思います!


女子高生数名がお話を楽しんでおります。
なにやら昨日のドラマの俳優のお話をしているようですが……
そのうちの一人、エリナは悪役を務めている俳優がお好みのようで、ああ見えて絶対実はいい人だよな、と力説しております。
ですがそれを聞いた椎名は、もう一人の別の俳優のほうがカワイイし、いい人そうじゃないか?自分はそっちのほうが好きだと言いました。
するとエリナ、まぬけ眼、あれこそいかにも腹グロって感じだろ、高1にもなってそんなんじゃ将来男にだまされちまうぞ、とゲヘヘと笑いながら言いきっちゃうのです!
好きな俳優一人でそこまでかよ!と突っ込んだ椎名、今度は横でずっと黙って聞いていた高嶋に話を振ってみました。
話を振られた高嶋は、テレビとか見ないから知らないです、とうつむき加減で謝ってきて……
じゃあ普段何をしているの?と聞いてみれば、エリナと電話してるかゲームしてるか、ああ思い出せない、となんだかモヤモヤした答え。
思い出せないとは何なんだ、と突っ込んでいますと、エリナが口をはさんできます。
高嶋は友達がいないから電話してやってんだ、でも会話がつまらん!そうだねとかそんなもんだとか、自分の意見がまるでねえ!となんだかひどいいいぐさ。
おまけに高嶋の話なんてどうでもいいからし、どうせテレビの話なんて分からないだろうから一階の自販機でジュース買ってきてくれと命じちゃうのです!
こんなことを聞いては黙ってはいられない椎名。
みんなで行けばいいだろう、かわいそうだろう。
高嶋はいいよ行くよ、むしろ行きたいよというのですが、椎名についた火はもう消えません!
エリナは高嶋と中学校から一緒だったんだろ、何でそんなに冷たくするんだ。
そう言われたエリナ、小学校1年からの腐れ縁だよ、昔から二人はこうだ、子のガキは本当につまらない死くらいから一緒にいてやってるんだ!とまた上から目線の反論。
たまりかねた椎名は、それって本当の友達って呼べるのかなあ、と真剣な表情で言うのですが、エリナはゲヘッと笑いながら、さっきからうるせえ、別にトモダチじゃねえわそんな奴、と言い切るのです!
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放課後。
エリナと高嶋は先ほど談笑していた友達グループを待っているのですが、掃除が長引いているのかなかなか姿を見せないのです。
それにしても椎名はうざいな、人のことをあーだーこーだ言ってきて。
なあ、私悪いと思うか?
エリナがそう尋ねると、高嶋は言葉がきついんじゃない?私は気にしてないけど、と答えるのですが、であって三か月もたつ友達なんだから、よそよそしいのはいやだ、これくらいサバサバしてもいいだろう!とエリナは思いの丈をぶちまけております。
そんなとき、高嶋の携帯にメッセージが届きました。
一人で校舎裏まで来てくれ、という、椎名からのメッセージが。

高嶋が一人でその場に行くと、椎名とほかの友達が待っていました。
椎名は早速尋ねてきます。
このままでいいのか?と。
ピンときていない様子の高嶋ですが、もちろんエリナのことです。
あいつ悪気はないかもしれないが、お前のことを完全に舐めてる見てるこっちが嫌な気分になる。
そこでだ、ここらで一回やつにどっきりでもしないか?
皆で一週間、エリナを無視するんだ!!
何の意味があるのか、とちょっと引き気味の高嶋。
ですが、最近横暴になりすぎて覇王みたいな風格出ちゃってるから痛い目見せるべきだ、と他の友達もノリノリ。
皆さん楽しそうだったし、私は楽しかったですよ?昔から二人はああなんです、と高嶋が言ってもそうだよねとは納得できないノリで……
とうとう高嶋は、すみません、集団で一人の人を攻撃するみたいなのは何か苦手です、と謝ってしまいました!
彼女を助けるためにやろうと思っていた椎名、これじゃ自分たちが割るものじゃないか、と思わず突っ込み。
そこで今度はじっくり説得することにしました。
二人はなれてるのかもしれないが、ちょっと異常な関係だぞ。
高嶋がそんなだからエリナは自分の話しかできないんだ、あのまま成長するときっとロクな大人にならない。
これはエリナのためでも、あんたのためでもあるんだ。
私たちもそうだった、お互い傷つくことで本当の友達になれるんだ。
……ですが帰ってきた高嶋の答えは、私にはちょっと無理です、というもので……
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お前バカなの?
とうとう我慢できなくなった椎名、堰を切ったかのように吐き出すのです!
せっかくお前のために言ってやってるのに、さっきから何だよ!
要領えないことをふがふが言って、お前と話してもかみ合わなくてイライラするわ!!
だから友達いないんだよ、あの事故ちゅう最低女と二人一生仲良くしてろ!!
そう言って立ち去っていってしまいました。
取り残された高嶋は、うなだれながらエリナのもとへ帰ろうとするのですが……
すぐ近くの校舎の影に、
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エリナがいたのです!!
実はエリナ、全てを聞いていました。
高嶋が携帯を見てすぐ忘れ物を思い出したと言って戻っていったのを見て、さすがにたんなる忘れ物ではないと気付き、後をつけていたようです。
クソジャリ共が。
いつにもまして目付きを鋭くしたエリナは、感情を爆発させ……!!


というわけで、独特な関係の二人と、それを取り巻く人物の関係を描いたこのエピソード。
暴君のようにふるまうエリナ、そして家来角例のようにないがしろにされる高嶋。
確かに周囲から見れば、いじめか何かのように見えてしまうこの二人ですが、果たして本当に二人の関係は好ましくないものなのでしょうか?
いびつかそうでないかで言えば、確かにいびつな関係かもしれません。
ですが幸せかそうでないか、求めあっているのかいないのかは別の問題なのです。
この後、このお話は思いもよらない結末を迎えることに。
バッドエンドなのかハッピーエンドなのか。
すっきりとはしないながらも、これで良いと思える結末はきっと読者さんの心に何か残すことでしょう!!

この他にも数多くの衝撃作が収録されております。
今巻では紹介した作品のような、友人関係のお話である「8304」「日々」、阿部先生らしいキャラクターが織り成す不器用な恋愛(?)を描く「なくした僕の心はどこにあるのか」「アルティメット佐々木272」、圧巻の空気感で描かれる何とも言えないラストに息をのむ「7759」、超短編ながら胸に突き刺さるような「おなじクラスの鈴木くんのねこの人形」……
全9編、味わいは様々ながら、どれを読んでも胸を打つ、あるいは撃つような衝撃や感動が楽しめるのです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!