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今回紹介いたしますのはこちら。

「独裁者ジーク」第1巻 原作・稲吉慶先生 作画・葉生田采丸先生 

集英社さんのジャンプコミックスより刊行です。

稲吉先生は、ジャンプの新人賞に応募をつづけ、09年に「CROWN!」で漫画原作者としてデビュー。
その後はしばらくのブランクを経て、本作の連載を15年に開始しました。
作画担当の葉生田先生は、以前紹介した「アルカナハート」をはじめとして、人気ゲーム「ネプテューヌ」の漫画版などの女の子が活躍するアクションコメディ的な作品を多く描かれていました。
が、今回は両先生の過去の得意ジャンルから一風変わった作品となっています。
果たしてその内容とは……?


第II次世界大戦。
たった一人の独裁者によってはじめられたこの戦争によって、世界全土は火の海と化しました。
追い詰められた各国は、強い「独裁者」の育成を急いだのです……

独裁者学校、第10回入学式。
新入生たちはオープンカーのパレードでお出迎えされておりました。
こんなに期待されているのか、とまんざらでもない新入生たち。
そんな中に、一人感動に打ち震えている少女がいました。
右目を眼帯で隠した少女、ミーア。
聳え立つ巨大な学校と、外界を隔てる大きな門。
そこをくぐれば、私もここの生徒になる。
なんか緊張するね、とミーアは一緒の車に乗っていた隣の少年に話しかけました。
ですがその少年、見ていた新聞から目を離そうともせず、別にとそっけない返事を返すではありませんか。
その少年、名札を見るにジーくという名のようです。
なんだか尊大な感じのジーク、新聞に踊るワルキューレ帝国の侵略を見て苦々しい表情を浮かべています。
ついには新聞を破り、丸めて放り捨ててしまうではありませんか!
このジークが一流の独裁者になった暁には、必ず叩き潰してくれるわこの賊国めが!!
そんなことを考えていたジークですが、体が弱いのか貧血の症状が出てきまして、倒れてしまいます。
朝から力むとどうもいかん、と起き上がろうとするジークですが、その顔を上げた先には
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ミーアのおパンティがありまして……!!
変態、何覗いてんのよ!と、ハーレムマンガの冒頭のラッキースケベイベントっぽいお仕置きを受けるジークなのでした。

そんなときのことです。
どこからともなく、ドクサイ!と言う声が聞こえたかと思うと、突然新入生を乗せた車が一斉に空に浮かび上がり始めました!!
突然のことに驚く一同の前に、白い軍服を着た長髪の男が現れます。
ようこそ生徒諸君、我が独裁術を学ぶ学校へ。
そう言う彼は、独裁術が何なのかすら知らないミーナのようなもののために、様々な説明を始めます。
独裁術とは、物を血文字で支配し、操る術。
この車にもあらかじめ血文字が書いてあった。
こうして入ってきた新入生は、みな独裁術を扱える特別な血を持っている。
世界中から集まった新入生たちは、ここでみっちり独裁術を学び、一流の独裁者を目指して頑張ってもらう。
世界中を制圧する、ワルキューレ帝国の独裁者に対抗するために!
教えてもらったアレコレですが、すでにジークは知っていたようです。
ジークは車の上に立ち上がり、自らの指を噛みきると、近場にあった鉄柱に血で十字架を描きました。
そして、独裁!と叫ぶと、鉄柱はひとりでに折れ曲がり、ジークの前にまで伸びてきました。
ジークはそれに乗ると、私は先に行くと言い残し……鉄柱に乗って、近くの窓から学校内に入っていっていますのです!
悠々と学校内を闊歩するジーク……
在校生たちは囁き合います。
「歓迎」から降りられたやつ、初めて見た。
こいつが噂の、ジークっていう天才児……!

3か月後。
独裁者学校に通う生徒たちを激励する家族の手紙がとどき、それを読んで涙する生徒たちを見て、ミーアは羨ましそうにしていました。
「物」を血文字で支配し、操る独裁術。
でもすでに暖かい血の通っている人間だけは操れない……
みんないいな家族がいて。わたしいないもん。
天涯孤独の身であるらしいミーアは、そう言えば聞いたことがないが、ジークの家族は手紙と来くれないみたいだけどどうしたの?とジークに話を振りました。
ジークの脳裏には、父にかわいがってもらっている記憶がよみがえります。
が、一応はいる、とだけ言い残してその場を去っていってしまうのです。
なぜジークは自分のことを語りたがらないのだろう。
ミーアはジークの背中を見送るのですが……

生徒たちは、戦闘訓練の授業を受けていました。
戦場で、敵に致命傷を与えられるようになるまで各々が操れるもののコントロール精度を高めろ。
そう言って檄を飛ばす教師におびえながらも、生徒たちは実戦形式で己の技を磨き合います。
ミーアはと言いますと、巨大な鎧を自由自在に操るほど「鉄」を器用に使うジークにもてあそばれるばかり。
負けを認めたミーアは、やっぱりあんたは天才ね、これだけ操れればわざわざ学校で学ばなくてもいいんじゃないの?とジークに尋ねるのですが、ジークはきっぱりというのです。
こんなものを操れたからなんだ、こんな鉄くず一つでワルキューレに勝てると思うのか?
世界中でワルキューレ帝国の虐殺が続いている今欲しいのは、この悲惨な戦争を止められるだけの力だ。
ワルキューレ以上の独裁術を身に着け、人々を助けるために。
思わぬタイミングでジークの本心を知ったミーア。
ですがそのことに対しての反応を返す暇はありませんでした。
突如、低空を通り過ぎる戦闘機!!
その戦闘機に刻まれた紋章は……ワルキューレ帝国の証!!
教師はいち早く生徒たちに自室に戻って立てこもるように指示し、戦闘機を追いかけました!!
ジークはと言いますと……あれがこの大戦の張本人か、と……やはり戦闘機を追うのです!!

戦闘機から姿を現したのは、頬に十字のマークの付いた軍人でした。
おもむろに地図を広げるその軍人に、素手に到着していた教師が声をかけます。
地図になんか乗っていない、呱呱は貴様らの領土外だワルキューレ野郎!!
そう言って、男が態勢を整える魔も与えず、火を操る独裁術で襲い掛かるのでした!!
数瞬後、その場にたどり着くジーク。
もうもうと立ち込める煙を見て、教師の独裁術であることを察知します。
そして、教師の言っていたこんな言葉を思い起こしました。
独裁術は、自分の地で物を支配し操る術だ。
暖かい血の通っている人間には通用せん。
ただ、あのワルキューレの独裁者だけは……
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人間を支配し、超人的な化け物として操ることができるのだ。
煙が晴れた時、立っていたのはワルキューレの男でした。
そして横たわっている教師の体。
その首から上は……ワルキューレの男の右手からぶら下げられていて……!!
思わず声を上げたジークに気が付く男。
今は領土外でも、直に我々の領土となる。
……世界中がな。
そんな言葉とともに、男は戦闘機そのものを投げつけてきます!!
何とか回避したジークですが、武器にしていた巨大ヨロイが戦闘機にはさまれて使用不能になってしまいました。
それに気を取られた一瞬のすきに、ワルキューレの男はジークの眼前に迫り、その右手を振り下ろそうとしています。
しまった、逃げられない!!
覚悟を決める間もなく……ワルキューレの男の手刀は、胸を貫いてしまったのです。
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……ジークをかばった、ミーアの……!!


というわけで、壮絶な幕開けとなる本作。
この後も物語はさらにハードに、苛烈なものになっていきます!!
一言で言えば能力バトルものになる本作なのですが、最近の作品ではバトルだろうとあまり死人が出ないのが当たり前となってきています。
ましてや少年誌では特にそうなのですが……本作はネット媒体とはいえ一応少年誌なのに、そんなことは一切お構いなし!!
この後もガンガン死亡キャラが続出するのです!!
そのやられ方も結構えぐく描かれてまして、そこそこのグロ描写もアリ!
物語だけでなく、ビジュアル面でもハードに攻めてくるのです!!

苛烈すぎる物語はもちろんのこと、その物語運びが実にスピーディーなのも本作のポイントでしょう。
急展開と言っていい幕開けとなる本作ですが、この後も息つく暇もなくさらにさらに急展開!!
次々に巻き起こるバトルに加え、もっと引っ張るかとも思われたジークの家庭に関する秘密なども明かされていき、引きつけられていくこと間違いなしなのです!!

いつものコミカルで可愛らしい女の子を描いていらっしゃる葉生田先生作品だと思っているととんでもないしっぺ返しを食らうことになる本作ですが、ご安心ください。
ちゃんと(?)キュートな女性キャラも登場し、激動の物語で消耗した心を和ませてくれますよ……!

激戦とともに幕を開けた本作、様々な気になる謎も用意されていまして、まだまだ二転三転ありそうです。
単行本のおまけのキャラクターデータからも、これから登場するであろう大物キャラや物語が大きく動くさまが予想できますし……これから先も、目が離せませんね!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!