ut0
今回紹介いたしますのはこちら。

「うしおととら 完全版」第5」巻 藤田和日郎先生 

小学館さんの少年サンデーコミックススペシャルより刊行です。

さて、母の真実を知るために北海道は旭川に向かっているうしおととら。
その道中は決して順調ではありませんでしたが、それでも何とか目的地に近づいてはいます。
そして、ひょんなことから知り合った大学生2人組、香上と片山を旅の道連れとして、一同はいようよ北海道へ上陸!
ですが、だからと言ってすんなりと旭川にたどり着けるはずもなく……?


函館。
うしおはひとまず旅の目的を忘れて観光を楽しんでおりました。
とらはと言いますと、何やら難しい顔をしています。
なんだかどこかで感じたことのある「気配」がこのあたりをうろうろしているようですし……なにより、まじまじとみれば改めて獣の槍には全く隙がないことがわかるのですから。
もうそろそろとらも我慢の限界です。
もうこうなったらなりふりなど構っていられません!
とりあえず他の人間を食ってやる、あの槍を持っている限りうしおは食えんからな!
とらはそう考え、うしおのもとから飛び去るのです!
なにやらのんきに観光を楽しんでいるうしおですが……自分が人間を食ったことを知ったらどんな顔をするのか?
とらは邪悪な笑いを浮かべながら、空を飛んでいくのです。
そのとらに向かい、うしおはこう声をかけました。
おーいとら、迷子になるなよ!

夕方、母親が娘をおんぶして歩いていました。
娘の雅代ちゃんが風邪気味だそうで、近所の夕方から夜遅くまでやっているという町医者、橘医院に連れていこうというところだったのですが……
その道中、近所のお母さん方から嫌なうわさを聞いてしまいます。
最近、市内で起こっている殺人事件のうわさを。
女の子ばかりが犠牲になっているその殺人事件・……死因は大量失血によるものであるにもかかわらず、血がどこにもこぼれていないのだとか。
まるで映画や物語の吸血鬼のようだとみんなが噂し、「吸血殺人事件」などともてはやされている……
なんにせよ、夜中に出歩くのはあまりよろしくないでしょう。
早く病院に行って診察を済ませ、家に帰ったほうがよさそうです。

あったかくして寝ていればすぐによくなるよ。
お大事にね、雅代ちゃん。
橘医院の医師は、そう言って診断を終えました。
そのあと……きれいな、肌ですね、と呟いたのは、その母娘にはよく聞こえなかったようです。
母娘は帰り際、医師にこんなことを尋ねました。
こちら、ずいぶん暗いんですのね、昼間っからカーテンやブラインドをしめ切って。
……確かにこの医院、ナニモかも閉めきってあり、どこもかしこも日の光がささず薄暗くなっています。
医師は、ここには太陽光線を嫌う薬品が多いんでね、と笑いながら母娘を見送るのですが……
母娘が部屋から出ていった後……再びこうつぶやくのです。
ut1
クスリだけじゃ、ないんだがな。

とらは、今までいろいろ今の世を見てきて気が付いたことがあるようです。
現代の人間が付けている、化粧品やアクセサリーの類が苦手で、そのあたりを歩いている人間を食べる気がしないとら。
ですが……そのふたつとは基本的に縁がない、おまけにやわらかくておいしい……子供ならば大丈夫だ!!
久しぶりに外に出て、初めての妖怪らしい「お食事」ですから、美味しそうなのを見繕いたいところ。
そう考えるとなかなかよさそうなのが見つからないのですが……いました!!
ちょっと弱ってそうなものの、厄介なものを何もつけていない少女。
そして、あまり化粧とかをしていなさそうなその親!
……よりにもよって、あの雅代ちゃん母娘でした……!
喜び勇んでかぶりつこうとするとらでしたが、母娘はタッチの差で玄関のドアをくぐって家の中へ。
「自分がよくわからないもの」を通り抜けることができないとらは、そのドアにぶつかってしまうのでした……

派手にやればすぐにでもうしおが飛んでくるでしょうし、どうやってあの親子を食おうかと思案しているとら。
そんな彼の鼻が、血の匂いを嗅ぎつけました。
その血の匂いは徐々に、徐々に近づいてきて……
どうやらその匂いを発している存在は、妖であるようです。
ですが長く生きているとらですら、その匂いは初めて感じるもので……
すさまじい妖気を持つ主は……雅代を、呼んでいます。
まさよちゃん、ここをあけておくれ。
ut2
ここを……あけておくれ。
そう言って、雅代の部屋のガラスに爪を立てるのです!
まるで催眠術か何かにかけられたかのように、起き出してフラフラと窓ガラスへと向かっていく雅代……
彼女が窓の鍵に手をかけたその時です。
どこの奴だか知らねえが、わしの悔いもん横からかっさらうんじゃねえよ!!
そう言いながら、とらが現れたのは!!
ですが、とらの放った爪の一撃は全く手ごたえを感じません。
その妖の体を確実に確実にとらえているにもかかわらず……その妖、どうやら体を霧に変えて攻撃を受け流したようなのです!!
そいつはとらを無視して、雅代を呼び続けます。
とらは再びそいつに飛び掛かろうとしたのですが……そこに、現れたのです。
お前はその子供の血をすすることはできない。
そう言いながら……黒衣に身を包み、符をその手に携えた……
ut3
符咒師、鏢(ヒョウ)が!!


というわけで、まさかの吸血鬼と戦うこととなるとら。
この戦いではうしおの出番はなく、とらと鏢と言う水とおぶらともいえるコンビで戦いに挑むことになるのです!!
ホラー色が強い、アジアの妖怪ではない、獣の槍出番なし、と本作の中でも珍しい内容となっているこのエピソード、敵のインパクトといい、中二病心をくすぐりまくる鏢さん大活躍といい、見逃せないエピソードとなっています!!
おそらくアニメのほうではカットされちゃうと思いますが……藤田先生渾身の(?)ポエムも必見ですしね!!!

この他にも、亡霊をもてあそぶ妖怪「ミコンジキ」、あの獣の槍が力負けする、鋭く強靭な刃を持つ蛇の大妖「オヤウカムイ」、実体なき霧の妖怪「シュムナ」と、一癖もふた癖もある妖怪たちと戦うことになります。
中でもオヤウカムイ戦は、本作の今後にも大きくかかわる重大な出来事の起こるエピソード。
あの獣の槍の歯が立たないばかりか、とらはあんなことになっちゃいますし……
思いもよらぬ助っ人の登場などもあり、いろいろ見どころ満天なお話になっていますので、こちらも要注目!!
もちろんの他のエピソードも、みるみる惹きこまれるストーリー展開や強敵の登場が待っていますよ!!!

さらに今回も「風雲録」が掲載されていまして、そちらには何と連載終了直後の人気投票の結果が収録されています!!
本作を最後まで読んでいる方ならば納得のランキングといえるのですが、完全版で初めて読む方に配慮して、各キャラに寄せられたコメントが掲載されておりません!
できれば最終巻とかにそのコメントを掲載してほしいもんですが……どうでしょう!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!