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今回紹介いたしますのはこちら。

「僕だけがいない街」第6巻 三部けい先生 

角川書店さんの角川コミックス・エースより刊行です。

さて、調査の末にとうとう求めていた答えと言っていいところに到達した悟。
ですがその答えは、悟にとって残酷なもので……


にこやかにコンビニのレジ打ちをする女性。
その女性は……悟の母親、佐知子でした。
コンビニのバイトを負え、帰宅。
自宅に帰って夕食を作って食べ、就寝。
そして翌日また、コンビニにバイトへ出る……
そんな毎日を繰り返している佐知子。
彼女は表情にこそ出していないものの、そんな毎日につかれている様子。
知り合いのあまり無理をするな、倒れたら元も子もないんだから、たまには遊びに出たらどうだという言葉を思い出し……上野に気晴らしに出かけます。
公園の景色を眺め、美術館を覗き、ベンチに座ってアイスを食べる。
少しそうやって過ごしてから、佐知子は家に帰ります。
そんなとき彼女の脳裏によぎるのは……悟が依然言っていた言葉です。
「ほんとは、上野には電車一本で行けるんだ」。
……その言葉は本当でした。
但しそれは、あくまで今の話。
悟がそう言っていた当時には、その電車は存在しなかったわけで……

自宅に帰りつく佐知子。
佐知子は悟の部屋に入り、そこに置いてある様々な思い出の品を眺めます。
ヒーローのお面、友人たちとの集合写真、特撮番組主題歌のレコード……
そして、その思い出の品の先にいたのは……
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ベッドに横たわった、悟でした。
佐知子はそのレコードをプレイヤーにセットし、食事の準備を始めました。
加代との最初のコンタクト、彼女を一人にしないためにしたあれこれ、その戦いの中で見た光景。
特撮ヒーローの戦いとともに流れるその記憶の映像は、誰のものなのでしょうか……?
家に帰りついた記憶を祖ぞ誰かが見たのと同時に、佐知子は何かに気が付いたようです。
後ろを振り向くと……佐知子は驚いた表情を浮かべ……すぐに涙をこぼしながらも笑顔となりました。
そして、一言こういったのです。
おはよう、悟。
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悟は、目を覚ましました。
長い、長い……15年の眠りから。

事件の追及の結果、とんでもない時代に巻き込まれてしまった悟。
たまたま通りがかった女性によって助け出されたものの、その時すでに心配は停止状態、体温も28度前後まで下がっていました。
獣医だった女性は救命活動を行いながら通報。
迅速な救命行為と通報、偶然の幸運が幾重にも重なり……
悟は命を失うことなく、そして脳死も免れました。
……ですが、覚は永い眠りにつくことになってしまったのです……
しかし、悟の意思を受け継いだケンヤの奮闘もむなしく、「真犯人」は存在すら警察には信じられない始末で……
とはいえ、悟の行動は白鳥のアリバイを証明するという成果は上げていました。
おかげで白鳥は逮捕されずに済んだのですが……その代わりに逮捕された人物、というのは存在していません。
いつもは周到に「犯人」を用意していた真犯人が、今回はそうできなかった。
それはおそらく……悟の力によるものでしょう。
……付け入るスキはある。
ケンヤは、眠り続ける悟に代わって、真犯人を追い詰めようと今も動いているのです。

15年の眠りの代償はあまりにも大きいものでした。
耳の機能こそすぐに回復したものの、目を開ければあまりにも眩しく、開けつづけることができません。。
呼びかけられた言葉に返事をしようと思っても、口は動かず、声も出ません。
もちろん体など動かすことはできず、自分の体の重さで床に縛り付けられているような感覚で……
自分が15年もの長い間眠っていた。
その衝撃的な事実、そして動かない体。
ショックを隠し切れない覚ですが、その全身の筋肉は絶望的に衰えている、というわけではないのです。
それもすべて、覚が寝ていた15年の間、佐知子が献身的に世話をし、脚の曲げ伸ばしといった運動もしてくれていた為。
2週間ほどで首や手の指を少し動かせ、声が出るまでに回復。
さらにもう少し時間が経つと、しゃべれるようにまでなりました!
……そんなある日、医師は治療の一環としてこんな質問してきます。
君が眠りにつく前のことで、思い出せる一番新しい記憶は何かな?
……一番新しい記憶……最後に覚えていること。
悟は頭をフル回転させるのですが……頭には霞がかかったようにぼんやりとしたものしか思い出せず……
出てきた言葉は、
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お母さん、僕の笛はどこ?
というもので……
悟自身も、これが最後の記憶なんかではないことは十分わかっています。
ですが……どうしても最後の記憶、が思い出せないのです。
……この時、ようやく悟は気が付いたのです。
自分の記憶の中に、「空白の時間」があることを。
……悟は忘れてしまっていたのです。
自分が勝ちえた未来を。
そして、この時間軸に再上映(リバイバル)する前の記憶を!!


というわけで、新展開を迎える本作。
前巻のラストから続く怒涛の展開で、真犯人にたどり着くことができた悟。
ですが残念ながら、その犯人を捕まえるところまではいきませんでした。
そして、15年という長い眠りにつくような事態となってしまうのです。
悟がずっと心の中にくすぶらせていた、白鳥に関しては完全に助けることができたと言っていいでしょう。
ですが、真犯人はつかまっていません。
15年も眠っていたのですから、もうどこか遠くに逃げて行方をくらませた……と言いたいところですが……
身の安全を考えれば、自分が犯人であることを知っている悟が、意識を取り戻したと知って……放っておくでしょうか?
しかし悟には、唯一の強みであった未来を体験しているというアドバンテージがもはやありません。
予想される真犯人の魔の手に、動くことすらできない覚はどう立ち向かえばいいというのでしょうか……

そして、悟が守ろうとしたもう一人……加代はどうなったのでしょうか。
手を尽くして過去を変えることはできました。
ですが、15年という長い間、悟のいなかった街で、加代はどのような人生を送ったのか……?
様々なせいかと、残された不安。
この後の展開も気になる所です!!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!