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今回紹介いたしますのはこちら。

「乱と灰色の世界」第7巻 入江亜季先生 

エンターブレインさんのビームコミックスより刊行です。

さて、骸虫の猛攻を撃退することができた魔法使いの面々。
ですが、骸虫に完全に浸食されてしまっていた鳳太郎を救うことはできませんでした。
その残酷な現実を知らないまま、魔力を使い果たした乱は昏々と眠り続けるのです……

一か月以上眠り続けた乱。
目覚めて鳳太郎の死を知った後は、周囲を巻きこんで泣き続けました。
仁央や日比の尽力もあり、乱はようやく気持ちを落ち着けたのですが……?

そのあとの乱は、様子がなんだかおかしいのです。
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なんだか今までの乱のお転婆ぶりが嘘だったかのように、穏やか。
おまけにコントロールがいまいちだった魔法もメキメキと上達……
散らかしほうだいだった部屋もきっちりと整理整頓され、おまけにコップ一杯の水で部屋中の小さな隙間にたまっているほこりまできれいに掃除してしまう魔法まで生み出していて。
挙句にその魔法のかかった水、人間が飲めばものすごい健康&美容効果が!!
彼女に一体何が起こったのでしょうか?
やはり鳳太郎の死が影響しているのでしょうか。
それにしてもこの豹変ぶりは極端すぎる気もします。
乱はその魔法の水を、仁央の風の魔法で運んでもらい、空高くから街に降らせました。
街に降る癒しの雨。
その雨は、街に幸せをもたらしていくのでした。

日の出前、すでに乱は目を覚ましていました。
毎朝誰かに起こしてもらっていた乱が、自然に一人で目を覚ますその理由はただ一つ。
今日も、やることがたくさんあるから。

乱は父親のところへ行って、一緒に池の魚にエサやり。
そして珊瑚のところへ行って、リンゴジュースをもらいます。
まだおねむのお母さんのところへ行って、優しく起こしてあげて……
朝ご飯です。
一家そろっての朝ご飯の際中、乱は改まってお父さんに許して歩いいことがある、と切り出しました。
また何かやらかしたのかと聞いてくる父親。
すると乱は父親だけでなく、兄や母にも聞いてほしいと前置きして……こういうのです。
しばらく、この家を出ようと思うの。
外でもっと勉強したいの、やりたいことが初めてできたの。
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お願いします、パパ。
予想だにしなかった申し出に、父親は完全にフリーズしてしまいました!
兄は冷静に絶対に反対だ、とつぶやくのですが……
フリーズしたままの父親をゆすって何か言ってくださいと語りかける母親ですが、ここで母親も父親も、仕事の時間がやってきてしまいます。
仕事の催促をする者たちに、引きずるように連れられていってしまう両親。
そして兄は、最後にもう一度絶対に反対だと言い残して学校に行ってしまいました。
返事も聞けないまま、一人取り残されてしまった乱。
やむなく片づけを始める乱ですが、父親のごはんがほとんど手つかずであることに気が付きます。
ラップをしようと台所に向かう乱、食卓に戻ってくると……たま緒がいつの間にか席に座り、父親のご飯を食べてしまっているではありませんか!
当分解放されないから食べる暇なんてない、とご飯を平らげてしまうたま緒。
そこで乱は、おにぎりを作って老いてあげることにしました。
出来上がったおにぎりを一つつまみ食いし、悪くないと漏らすたま緒は、そこで乱を呼びつけます。
じゃあやるか、と。

始まったのは魔法の修業でした。
自分の周りに無数に浮かんだコップ、その中になみなみと注がれた水を瞬時に蒸発させたり、一滴もこぼさずにコップからコップに移動させたり……
おとといは13分、昨日は21分もこの修行を続けることができました。
ところが今日の記録は……58秒。
その原因は考え事をしていたからで、乱自身もそれは自覚しています。
ですが、肝心なのは肝心な時に成功させること、むらっけがあるのは良いが、切り替えをする癖を付けろ。とたま緒に叱責されてしまうのでした。

何時間にもわたる魔法の修業、そして珊瑚から料理を教わったりもして、充実の一日を過ごした乱。
その夜、乱は珊瑚の作った鍋に卵とご飯を入れたおじやを、長時間の仕事で疲れ切った父親に振舞いました。
簡単なものとはいえ、料理までするようになった乱の成長を感じた父親……
その口からは自然と、寂しがらせてすまなかった、父さんも母さんももっと一緒に過ごせたらよかったなぁ、と漏れるのでした……
ですが乱は言うのです。
パパもママも、私の自慢なの。
優しくて、なんか大きくて。
私も、そんな魔法使いになる。
乱の固い決意と、たま緒が同行するということを知った父親はようやくそこで修行を許すのです。
始まってしまったら、後戻りできない人生だ。
思うように生きなさい。
これからは自分で自分を育てるんだ、大変だぞ。
乱は満面の笑顔で、周りにお手本がたくさんいるから大丈夫だよと答え……
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二人は、熱く、長い抱擁をするのでした。


というわけで、いよいよクライマックスを迎える本作。
乱は自分の溢れる魔法の才能を、より一層磨くことを決意しました。
そのために決意した、家を離れての修業。
鳳太郎を救うことができなかった自分の無力を痛感したのか、その決意はかなり固いもののようです!
そしてこの後、乱は家族や友人との別れを続けていきます。
その中で一番大きなウェイトを占めるのは……やはり日比との別れ。
鳳太郎にも確実に惹かれていた乱ではありますが、やはり日比のことも好いていまして。
悲しみに暮れていた自分が立ち直る最大のきっかけを与えてくれていた人物でもある彼、そんな日比との別れは乱にとっていま最もつらいものかもしれません。
そしてそれは、日比にとっても……
その時は確実に近づいてきます。
訪れる別れの時、そして、そのあと……
そのフィナーレは、まさしく感動必至!!
乱とかけがえのない仲間たちのわかれ、そして成長。
それを丁寧に描き、大ボリュームの300ページを誇る最終巻の最後にめぐってくるエンディングは必見というほかありませんよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!