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今回紹介いたしますのはこちら。

「死人の声をきくがよい」第5巻 ~生首列島を往く!!編~ ひよどり祥子(うぐいす祥子)先生 
秋田書店さんのチャンピオンREDコミックスより刊行です。

さて、霊感少年岸田と、彼に寄り添う幼馴染の美少女幽霊早川さんに巻き起こる事件を描いていく、近年では珍しい正統派ホラーである本作。
今巻でも本作ならではの魅力はたっぷりと用意されておりまして、今回はそんな中から前後編で繰り広げられる恐怖のエピソード、「不気味な絵」を紹介したいと思います。


黒衣の女性が、犬を連れてたたずむ絵画。
どことなく寂し気な印象を受けるその絵を譲り受けたという岸田のお母さん、有名な画家の作品だというのでせっかくだからと家に飾ることにしました。
芸術のことなんてわからないという岸田親子は、特に何の感慨もなくその絵を見ていたのですが……

夜、ふと目が覚めた岸田はのどに渇きを覚え、何か飲み物をと台所へと向かいました。
その時は暗闇で気が付かなかったのですが……例の絵の内容が変わっていたのです!
女生徒犬が正面を向いていたはずが、お互い横向きで向き合う形に……!
翌朝になるとさらにその絵柄は変わっていまして、さすがにそこで二人は絵が変わっていることに気が付きます。
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聳え立つ塔の前で、犬が黒衣の女性のはらわたを貪り食らう絵に。
二人は奇妙に思いながらも、日常生活を送ろうとするのですが……登校するなり、友人から驚きの出来事を聞かされるのです。
この近所で、若い女が大型犬にかみ殺されるって事件があったらしい。
……さらに視界には、今まで存在していなかったはずの「塔」が立っていまして……!
うちの絵と同じだ。
岸田はいざなわれるかのようにその塔へと向かいます。
多くの周辺住民が岸田と同じように、いつこの党は経ったんだろうと見上げていたのですが……
突然岸田はドンと後ろへ突き飛ばされてしまいました。
突き飛ばしてきたのは……岸田をいつも守ってくれる、早川さん……?
その直後のことです。
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何の前触れもなく塔が崩壊し、その崩れ落ちたがれきの下敷きとなって多くの人々が命を落としたのは!!

予想通り、再び絵は変わっています。
崩落した塔、そしてその塔の前で大きなはさみを持ってたたずむ男の絵に。
絶対にこの絵に何かあると察した岸田は、オカルト関係の知識に明るい日枝にそのことを尋ねてみることにしました。
さすが妖怪ハンター(仮)、すぐにその絵が秋戸乱三というSM雑誌のイラストレーター上がりの画家の作品だということを突き止めました。
そしてその豊富な蔵書の中から、乱三最後の作品にして、唯一の小説であるという一冊の本を取り出して見せてくれました。
ホラー短編集だというその本、各短編のタイトルはこういったものでした。
「犬に喰われた少女」「塔は崩れ落ちる」「ハサミを持った男」「すべては地獄」。
まるで今までの絵の変化をなぞるかのようなそのタイトルを見て、岸田は戦慄。
しかも「ハサミを持った男」という話の内容が、「呪われた絵の秘密に気付いた少年が巨大な植木ばさみを持った男に惨殺される」というものだというのですからたまりません!
呪われた絵を捨てたところで、その程度でとける呪ならばたいした力はない、呪の強さ次第では逆に状況が悪くなることすら考えられる。
状況を左右するのは、受け手の感受性だと思うよ。
……そんなアドバイスを受けた岸田は、顔面を蒼白にしながらパラパラとその本を見てみます。
この本は自費出版で、発行人は乱三の奥さん、由子であることがわかりました。
さらに見ていくと、あの変わっていった絵が挿絵になっていることもわかったのですが、最期の短編だけ挿絵がないことに気が付きます。
日枝がその件について説明しようとしますと、そこで会長が乱入してきました!!
オカルト好きな彼女、自分を抜きでオカルトの匂いがする話をしているのが我慢ならないようで。
明日の日曜日、みんなで秋戸邸を訪ねてみよう!と言い出したのでした!!

会長が絡むと、ろくなことがないことをよーく知っている岸田、このままじゃまずいなとぼやきながら家路につきます。
その道中、早川さんが絵を見るように促してきました。
さっそく絵を見てみますと、また絵が変わっています。
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その絵は……岸田と会長と思われる男女の学生が正面を向いて立っており、その背後にハサミを持った男が立っているというもので……!!
岸田は背後にただならぬ気配を感じます。
振り向いてもそこには誰もいないのですが……わかるのです。
時間があまり残されていないことが。
それを証明するかのように、再び絵は変わっていました。
ハサミを持った男が、今にも二人に襲い掛かるかのようにハサミを構えている状態に!


というわけで、呪の絵に魅入られたエピソードを収録した本作。
この後の後編では、いよいよ恐怖が加速!!
現実にまで浸食してくるハサミ男、不気味極まりない秋戸邸、やっぱりトラブルを招く会長……
岸田は、会長はその迫りくる魔手から逃れられるのでしょうか。
ひよどり先生ならでは、グロテスクでおどろおどろしく、それでいてコミカルさもある独自の味わいで描かれていくのです!!

紹介したエピソード以外にも注目のお話がたっぷりです。
生理的恐怖感にビンビン訴えかけてくる「蠢く家」。
オカルトアイドル魔子さんが再び活躍の「悪霊館にて」。
山間の村に巻き起こる惨殺事件、その真相を描く「猟銃惨殺村」。
そして、今後もお話に絡んできそうな院キャラクターが衝撃の登場を果たす「ゴーストリンク」……
どれをとっても見どころ満点!!
どろどろでグログロ、コミカルで恐ろしく、女性キャラは独特の魅力を放っている。
物語に描写にキャラクターに、とたっぷり楽しめる内容に仕上がっておりますよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!