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今回紹介いたしますのはこちら。

「死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々」第1巻 阿部共実先生 
秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックス・タップ!より刊行されました。

さて、コミカルなものからおそろしいもの、ホッコリするものからグサッとくるもの、様々な内容のお話を描く阿部先生。
今巻ではネット配信コミック誌で発表されたものをメインにして一冊にまとめております。
読者にいろいろな感情の波を起こさせる阿部先生作品、本作ではどうなのか?
期待を裏切らない全11話の中から、今回は「がんばれメガネ」を紹介したいと思います!


女楽は、高校が一緒だったクラスメイトの男鹿から突然呼び出され、駅前で待っていました。
大学に入って以来一度も連絡すらなかった男鹿から突然の呼び出し。
大人しくて地味でどんくさかったイメージがある男鹿、1年生のころから同じグループだったものの、1対1で会うのは今回が初めてでして。
呼び出した男鹿が少し遅れている間に、女楽は男鹿のことを思い起こしていたのです。
が、やってきた男鹿は想像とは全く違う格好をしておりました!
髪の毛はバリバリに染めたツインテールに、そしてなぜかメガネキャラになっていたのです!!
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えらい風貌変えてきよったでおい!と心の中で突っ込む女楽!!
そんな女楽の突込みなど知る由もない男鹿、待ってる間カフェで読書してたら夢中になっちゃって、とファンシーな言い訳までしてくるのです!
しかも読んでいたというのは若きウェルテルの悩み……恋する乙女か!!いや乙女なんですけど!!

久しぶり、変わってないねと声をかけてくる男鹿から、モリモリ発される変わった私を見てオーラ。
それに気おされながらも、女楽はひとまず知り合いがいて安くしてくれる店があるからそこにでも行こうか?と提案するのですが、男鹿はやんわりと否定して歩こうと言い出すのです。
で、いざ歩くとなると……会話はありません。
お前から誘ってんだからなんか会話ふってこいや!と再び心の中で突っ込んでおりますと、だしぬけに口を開く男鹿。
この間車の教習所に行こうとしたら、お金が足りなかったんですよー。
なぁにぃー、やっちまったな!
……旬の過ぎ去ったネタの披露衝撃を受ける女楽!!
今あえてやったら面白いでしょ、「マンキン」でね。
「マンキン」って言うのは目いっぱいって意味なんだけど、私昔から不器用で口下手だったじゃない、これじゃだめだと思って大学からは変わろうと思って頑張ってるんだよね、マンキンで。
業界用語っぽいのを使っていろいろ明かしてくる男鹿に、もはやつっこみが追い付かなくなってくる女楽。
かと思えばまたも会話が途絶えたりしちゃいまして、マンキンで頑張るんじゃねえのかよ!!とまたまたつっこまざるを得ないのです!!

そして、突然男鹿はこんなことを言い出しました。
卒業旅行楽しかったね、2日目に行った定食屋覚えてる?
あの時割り勘で一人1500円だったんだけど、私女楽さんに2000円渡して500円返ってきてないんだけど、今日って返してもらえる?
何でこの沈黙の世界にそんな金の話をするんだ、と心で突っ込む女楽は覚えてねえな、すまん、と適当なお返事。
すると男鹿、卒業式の後の打ち上げの帰りのジュース代も返してもらってないんだけど……と畳みかけてくるじゃありませんか!!
しかも、そのことが記録してあるっぽいメモを見ながら!!
セピア色の思い出があせぬようメモされてるで!!とまたも心で突っ込む女楽、悪い、今月ピンチで今手持ちがねえんだと断るのですが……
男鹿は筆舌に尽くしがたい、いやそうな顔をしながら、うんと答えるばかり。
でも楽しかったなぁ、私友達と子供だけでお泊りとか初めてだったから、とお金の話の直後に切り替えて明るい話題を振ってくる男鹿。
私バカだから誰とも一緒の大学いけなかった、また中学みたいに一人ぼっちにならないように頑張ってるんだ。
……それさっき聞いたで、ウホッ!ともはやつっこみでも何でもない感想で頭がいっぱいになる女楽!
とにかくこの話題を変えようと、腹減ったからどっか入ろうという提案をするのですが……男鹿は言うのです。
えっでも女楽さん、今って手持ちないんじゃ。
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また、私が出すの?
女楽はこいつ自分から人を呼び出しといておごる気が微塵もないで!!!と心の中で絶叫!!
男鹿は続けるのです。
私普通免許取ろうと思ってるんだけどお金がちょっと足りなくて。
カフェでバイトしてるんだけど、家に入れたり、最近視力落ちてメガネのが急な出費になったりででなかなか貯まらなくて。
本っていいよね、安くて長く楽しめて。
漫画好きだったけど、巻数多いのは控えてる。
あ、そうだ、高校の時かした少女漫画全20巻返してくれる?
映画か決まったから高く売れるかも。
あと、3年の夏休みに建て替えたカラオケ代、10回買いに行ってまだ返してもらってない昼食代、貸したお金総額7000円……
ごめんね、気持ち悪いと思うけど必要なの。
1,2年の時はメモとってないからそれはもう何も言わない。
私変わりたいの、はっきり言いたいことを言える人間にならなきゃって。
メモを見ながら……泣きながら、そう言い続ける男鹿。
みんなのこと大好きだけど、うち貧乏だし、お金のことだけはきっちりしといたほうがいいかなって思って。
みんながいなければ私はきっとまた一人ぼっちだった。
女楽さんは特に私のことをかまってくれたよね、初めて声をかけてくれたのも女楽さんだし。
あの日、今でも覚えてるよ、「金なくて昼飯変えないからちょっと貸してくれない」って一緒に昼ご飯誘ってくれた。
女楽はそんな彼女をみながら、語りだしたで!!と突っ込み……
そして男鹿は言うのです。
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ねえ、私たちって、ずっと友達だよね?
そんな彼女に対する女楽のツッコミは……友達って思われてたでぇ!!で……
期せずして生まれてしまった間。
……男鹿はうつむいて、つぶやくように漏らしました。
違うんだ。
それでも、女楽は心の中で突っ込むのです。
何で!?勝手にえらい落ち込まれてるで!


というわけで、ちょっと変わった人物に空気にそぐわない話をされる、という感じかと思いきやそれをひっくり返すお話を収録した今巻。
なんといいますか、本作でも阿部先生の情け容赦なく精神的に多大なダメージをねじ込んでくる持ち味は存分に発揮されております!!
今回紹介したエピソードの他にも、性格の悪い男とその男に容赦ない言葉をふるわれる男の物語を描く「お願いだから死んでくれ」という、とんでもないえぐり込むような剛速球が用意されていまして。
この二つのエピソードの破壊力はまさに絶大……!
黒いほうの阿部先生作品がたまらないという方はこの二作だけでもいろんな意味でおなかいっぱいになることでしょう!!!
ですが意外(?)なことに、本作全体で見ればホッコリ系のお話のほうが多かったりするのです。
ちょっと変わった二人の女子がひたすら止まった電車内で掛け合う「え」、幼馴染のわかりあっているようでわかりあっていない関係をいい感じに描いてくださる「それがだよ」。
そしてちょっと変わってはいるものの、大変魅力的な女性が空回りしたりしなかったりする「ネコネコココネコネコネネコ」、「アルティメット佐々木27」……
さらにはホッコリと思わせておいて最後に叩き落とす系のお話も用意されておりますし、先生のホームページで公開されていた……なんて言いますか、筆舌に尽くしがたい「怖さ」を持つお話なんかも収録!
硬軟織り交ぜたなんてものではない、阿部先生でなくては広げることのできない世界が広大にひろがっているのです!!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!