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今回紹介いたしますのはこちら。

「かみさまドロップ」第5巻 みなもと悠先生 
秋田書店さんの少年チャンピオンコミックスより刊行です。

さて、キケリキーの存在も気になるものの、なんだかんだと楽しきやってきたあすなろたち。
ですがそんな中、あすなろのなかである気持ちが大きくなっていることに気が付くのです。
自分の中で、エルが喪とも大きな存在になりつつあることに。


あすなろは苦悩していました。
囚われの姫を助け出しに行く。
そんな夢の終わりに待っていたその姫の姿はバンビではなく、エルだった……
そもそもエルは人間ではなく、力は剥奪されているもののこの地を収める一柱の神。
かみさま相手に自分は何を考えているんだ、と頭をかきむしるあすなろではありますが、なんといってもエルはその豊満な肉体を惜しげもなくさらしたまま家の中をうろうろしたりしていまして。
異性として意識するなというほうが無理というものでしょう!!
ですがあすなろは、自分はバンビ一筋なんだ、学校でバンビを見れば落ち着くに違いない、と家を出るのです。
……そのエルのほうも、最近あすなろを意識してしまって仕方がありません。
クロはそんなエルをしかりつけるのです。
お前自身は何者なのか、お前の叶えようとしている願いは何なのか。
見失えば傷つくのはお前自身だぞ、と。

学校にやってきたあすなろですが、バンビは欠席。
このもやもやした気持ちを抱えたまま過ごさなければならないのは不満ではありますが、妙にバンビ以外の人物を意識してしまっている自分を見られずに済んでよかった、という気持ちもありまして。
そんな複雑な気持ちで校内を歩いていますと、何やら騒がしい声が耳に飛び込んできます。
その声の主は、最近すっかりエルのシンパとなったみことと須磨先輩。
二人が「エルさんファンクラブ」の会員募集をしていたのです。
そのファンクラブのグッズは、エルの肢体が赤裸々に描写された水着グラビアのプリントされたクリアファイル!
曲がりなりにもかみさまなのにこの露出量はどうなんだ、何でこんなものがばらまかれなきゃならないんだ、と慌ててそのクリアファイルを回収しようとするあすなろ。
ですが須磨先輩はあすなろに言ったのです。
まるで彼女の体を他の誰にも見られたくないような態度だが、君はエルさんのことをそんな風にみているのか?
俺やほかの人が彼女をどうしようが君には関係ないだろう、君の思い人はほかにいるのだから……
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かわいそうだな、君なんかに好かれる人が。

……須磨先輩は確かにいろいろあれな部分はありますが、好いた人物がいればその人物以外にはわき目も振らない実直さがあります。
そんな須磨先輩の姿と言葉は、あすなろに重くのしかかるものを与えました。
俺はエルとバンビ、どっちが好きなんだろう……
そんなことを考えながら、学校帰りにおつかいをして帰るあすなろ。
ちょうど商店街で福引をやっていまして、特賞は南の島でペア旅行……という賞品に惹かれて早速くじを引いてみました。
もちろん生まれもっての不運を持つあすなろは残念賞のティッシュを手にすることとなります。
そのティッシュを手にしつつ、ペア旅行に生きたかったなぁとぼやくあすなろですが……思わずその次に出てきた自分の気持ちで固まってしまいます。
……誰と?
俺は、だれと一緒に行きたいんだ?
あすなろの脳裏に、真っ先に浮かんできたのは……
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エルだったのです!!

そんなエルですが、シロと一緒に本を買いに来たついでに福引をしていました。
そしてさすが神といいますか、見事特賞を引き当ててしまいます!!
青い海、海の幸……それらの予感に沸き立つ二人ですが、エルはふと表情を変えて代に告げるのです。
以前の自分ならん楽しいこともおいしいものも全部ひとり占めしたかったから、そういうものを想像するといつも自分一人の情景が浮かんでいた。
なのに最近は、必ずとなりにあすなろの姿を想像するようになってしまった……
その頬を赤らめた表情は、紛れもない恋をする乙女のそれ!
そんなエルに声をかけようとするシロですが、その時ちょうどすぐ近くをバンビが通りがかったのです!
どうやら病院帰りらしいバンビ。
物凄く体調が悪そうで、エルは早く家に帰らないと駄目じゃないかというのですが、その言葉に、思わずバンビは嫌だと強く反発するのです!
その表情はいつものバンビからは想像が付かない……時折見せるあの暗い表情で……
すぐにバンビはいつもの穏やかな顔に戻り、心配してくれてるのにごめん、もう少ししたら帰るから、と言い残して立ち去っていきました。
……バンビは、家に帰りたくないのでしょうか?
家が、嫌……か。
エルは反芻するようにそう呟きながら、寂しげなバンビの後姿を見送るのでした。

あすなろが家に帰りつくと、エルが待ち構えていました。
そして取り出したあのペア旅行券!
二人っきりのペア旅行、わくわくするなと舌を出すエル!
自分が抱くエルへの恋心を確信したあすなろにとって、このタイミングでのこの旅行はもう運命としか思えません!
ひときわ胸を高鳴らせるあすなろに、エルは
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ほれ、バンビを誘っていって来い、とその券を渡してきて……!
バンビは家が嫌みたいだから、連れ出してやったら喜ぶんじゃないか?
世話が焼ける奴だ、願いを叶えさせて天界に返してくれるんじゃなかったのか、そんな感じじゃいつまでたっても神の資格が取り戻せないじゃないか!
……その言葉を聞いて、あすなろは思い出すのです。
自分とエルの間にあるのは、神とその僕という関係であり、それ以外の何物でもない。
そこを勘違いしてはいけないんだ、と……

ちょうどバンビと行きたいと思っていたんだ、ありがとうございます、「神様」、と笑って券を受け取ったあすなろ。
……存分に感謝しろ、とあすなろに返すエル。
ですが今の言葉は彼女の本心であるわけがないのです。
頑張ったな、と声をかけてきたクロの手を払い……シャワーを浴び始めるエル。
その頬を伝うのは、果たしてシャワーのお湯だけなのでしょうか……


というわけで、新たな展開を迎える今巻。
エルとあすなろ、お互いがおのれの本心に気が付きながら、お互いの立場を考えてすれ違う道を選ぶ……
今までのエロス要素多めのラブコメディから、一気に切ない恋のお話にシフトチェンジをし始めました!
このままエルが身を引き、あすなろとバンビをくっつけるために尽力するのでしょうか?
しかしそう簡単に物事が進むわけもなく。
エルがいくら自分の立場を自覚したとしても、バンビのほうに問題があれば何もならないのです。
家に帰りたがらない、暗い表情のバンビ、
彼女が常にその穏やかな顔の裏に隠している暗い影。
その暗い影の一端が垣間見られてきた本作ですが、いよいよ今巻では気になる重要人物が登場!!
それはバンビとあすなろの関係を阻害するだけではない、何かとんでもないものを秘めている強大な存在でもあるようで……
新キャラクターの登場で、一気に物語が動き出しそう!!
エルの気持ち、バンビの影、新キャラクターのただならぬ気配。
みこともこのままフェードアウトしていくことはなさそうですし、今巻では目立った動きを見せなかったリノやキケリキーも今後絡んでくるでしょう。
物語はもはや、怒涛の勢いが止まることはなさそうです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!