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本日紹介いたしますのはこちら、「バクバク お嬢様怪異談」第1巻です。
作者は斉藤いくみ先生。
秋田書店さんの少年チャンピオンコミックスより刊行、月刊少年チャンピオンにて連載されています。

斉藤先生は00年代後半くらいから活動している漫画家さんです。
名作映画のコミック化や、読者投稿モノの恐怖漫画、漫画サンデーでの連載等様々な仕事をこなされた後、13年より本作の連載を開始。
めでたく初の単行本刊行となりました。

さて、本作はホラーコメディです。
霊能力を持つ少年がとある少女と出会ったことにより、大きく運命を変えていくことになるのですが……?

御之寺聖(おんのじ ひじり)は、父親の僧侶、皆(かい)と共に大きなお屋敷にやってきました。
このお屋敷は、鬼龍院という日本でも指折りの大富豪の邸宅です。
昔は御之寺家、この鬼龍院家に引き立てを受けていて、いろいろと活躍したそうなのですが……
いつしかその関係も薄れ、いまやすっかり縁遠くなってしまっています。
そんな御之寺家を何故今になって呼んだのでしょうか?
その理由は、鬼龍院家の夫人、牡丹から語られたのでした。

聖と皆が引きあわされたのは、彼女の一人娘蓮華。
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ベッドの上で安らかな寝息を立てていた蓮華ですが……彼女はなんと、2年間も眠ったままだと言うではないですか!
医者もさじを投げたと言うこの原因不明の病。
まさに藁をもすがる思いでかつて関係のあった御之寺家に声をかけたと言うことなのでしょう。
そんな蓮華の体を、聖が眼鏡を外して見てみますと、何かモヤモヤしたひも状のものが見えます。
それは「銀媒緒(シルバー・コード)」と呼ばれるもので。
シルバー・コードの存在を聖から聞かされた皆は、蓮華を蝕む病気が「離魂病」である、と断言しました。
簡単に言うと、幽体離脱です。
蓮華の体はここにあるが、中に入っているべき魂がここにはない。
だから眠り続けていると言うわけです!

シルバー・コードはいつ切れてもおかしくない不安定なもの。
2年間魂が無いにもかかわらず生き続けているだけでも不思議なほどですから、一秒でも早く魂を見つけなくてはなりません。
すぐにコードを辿って魂を探ることにするのですが、牡丹はというとまず「このことは他言無用」と、体面を気にした命令をしてきまして。
聖は娘よりも世間体を気にするその態度にカチンときてしまうのでした。

聖は、この自分の「普通の人が見えないモノが見える」能力が好きではありませんでした。
昔からこの能力のせいで学校なんかでも孤立してしまっていまして。
今回もいやいやながら、小遣い稼ぎにこの仕事を手伝うことにしたものの、捜索の最中にクラスメイトに見つかってしまいまして。
自分達が今日遊ぼうと誘ったにもかかわらずこんなところをうろついてるのか、霊が見えるとか何とか嘘ばっかりいいやがって、2度とお前なんかとは遊ばないからな!と毒づかれてしまうのです。
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ここで本当に霊が見えると声を張り上げたところで、信じてくれるはずもありません。
じっと黙って我慢しているしかなかったのですが、突然何者かが聖のクラスメイトを殴りつけるではありませんか!
誰だこのやろう!とクラスメイトが顔をあげますと、そこでは
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宙に浮いた半透明の少女と、おどろおどろしい何かが睨みつけているのです!!
突然目の前に現われた、幽霊としか思えないそれ。
たまらずクラスメイトはその場から逃げ出しちゃいました。
そしてその場に残った幽霊の少女、何をするかと思えば、おもむろに聖にお説教!
あんな人を相手にいちいちへこんでるんじゃない、あなたがウソツキでないのは私が保証する!
なんだか分かりませんが、励ましてはくれているようで。
聖は元気がでてきた、ありがとうと分かれようとするのですが……その幽霊の少女、妙なことを言い出します。
私を連れ戻しに来た人が、こんな頼りない坊やだったなんてガッカリだ。
……なんでも幽体になると人の心が読めるようになるとのことで……
ようするに、この幽霊の少女こそがあの鬼龍院蓮華だったのです!!

あっさりと見つけることが出来たものの、蓮華は元に戻らないと言い切ります。
人間の世界には、様々な固定観念や欲と言ったしがらみ、「縛」が渦巻いている。
そんな世界に戻りたくはない、今自分が生活している「幽幻界」の方がいい、と。
彼女は特別に聖を招待する、といってとある神社に導いていくのですが……そこの鳥居をくぐった瞬間、神社の境内にたくさんの幽霊達がいる、摩訶不思議な光景が拡がったではないですか!!
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誘われるままに聖は、彼らの行っている宴に参加するのですが、なるほどこちらの住人は姿かたちこそおっかないながら、差別や偏見と言ったものとは無縁な気のいいモノたちばかり。
すっかり打ち解けた聖ですが、そこに
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本気の(?)霊が出現!!
怯えまくる聖ですが、蓮華は冷静なもの。
強い「縛」を持ったものは、未浄化霊となって幽幻界をさまよい続けるのだとか。
ですが、「縛」さえなければ幸せになれる。
そう言って蓮華は未浄化霊に「解縛(げばく)」してあげる、おでこにしっぺをしたのです!!
するとどうでしょう。
未浄化霊はぐにゃりとその姿を
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虫のような姿に変貌させたのです!
これこそが「縛」。
この縛を浄化することによって、霊はこの場にいる愉快な仲間達のように楽しく生きて(死んで?)いけるらしいのですが……?
一体この縛をどうやって浄化するのでしょうか。
蓮華のとった、意外な浄化法とは……!?

というわけで、蓮華との出会いでその人生が変わっていく聖。
この後いろいろありまして、蓮華と聖は一緒に縛を浄化していくこととなります。
この第1巻ではまず導入と言った感じで、物語の地盤固めや人物紹介に終始している感じです。
おそらくこの後は、蓮華という人物をさらに掘り下げていく展開になっていくのでしょうが、それが物語をどのように動かしていくのでしょう。
シリアスな展開が待っている予感もします!!
そんな今後の展開はともかく、今の一話完結型のお話も見逃せません。
登場する縛の名前が語呂あわせだったり物語運びが王道だったりと、どことなく90年代前半くらいの匂いが感じられまして。
そのあたりの漫画やアニメを見ていた方ならばよりいっそう楽しめるかもしれませんよ!

世に満つ縛を洗い流す、「バクバク お嬢様怪異談」第1巻は全国書店にて発売中です!
チャンピオン系列連載作品としては珍しい気がする、エロス要素やバイオレンス要素の薄いスタンダードな作品である本作。
おまけページや、企画で描かれたご当地紹介漫画なども収録され、サービス満点の1冊になっていますよ!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!