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本日紹介いたしますのはこちら、「新 職業・殺し屋。 斬 ZAN」第3巻です。
作者は西川秀明先生。
白泉社さんのJETSコミックスより刊行、ヤングアニマル増刊Arasiにて連載されています。

さて、この世で最も卑しい仕事、職業・殺し屋の日常を描く本作。
改題されてスタートしたこの「新」では、前作同様の普通(?)の殺しも描かれてはいるのですが、本作の主人公である銀髪の蜘蛛、志賀の過去にも迫り始めています。
この作品における最大の謎とも言える志賀の過去に大きく関与している謎の組織、S・B(スパイダー・バイト)。
その組織の一員である、現代の切り裂きジャックと交戦し、倒すことには成功したものの……
志賀の中には戻りかけた記憶と、思い出したくない気持ちのせめぎあいから生まれるモヤモヤばかりが残るのでした。

ある日、いつものように志賀は綾子のヘルプで仕事を終えていました。
取り立てて強敵も、難しいシチュエーションも無い簡単な仕事。
すべてを滞りなく終わらせ、何事も無く収まった……かに思えたのです。
ですが本来、決して見られてはいけないこの卑しい仕事を見つめているものがいます。
目撃されないような状況作りはもちろんのこと、気配を察知する能力は、猛者揃いの職・殺の中でもトップクラスの志賀にすら察知させずに仕事をじっくり値踏みしていたそいつ。
手には綾取りの紐、頭には大きな帽子。
その紐が象っているのも。帽子につけられているマークも……蜘蛛。
この人物は一体……?

その謎の人物は、職・殺にコンタクトを取ってきました。
そしてなんとその人物は、職・殺の新メンバーに加入したいと言ってきた上、直接志賀に会いたいと要求してきたのです。
断る理由もありませんし、蜘蛛は新人の指定した場所に向かうことに。
ですが待ち合わせの時間になっても新人は現われません。
卑しいなぁとぶつくさ言っていますと、突然声が響き渡りました。
ずっとここにいたよ、あなたが来る前から。
そう言って姿を現したのは、小柄な……少年とも少女とも付かない、中性的な16歳くらいの人物でした。
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「AYA・」と名乗るその人物、どうやら職・殺ナンバー1の志賀に興味津々のようで。
志賀が身につけている防具の素材を触って確かめてみたり、いまや都市伝説と化している銀髪の蜘蛛に会えて感激だ、などとやたらなれなれしくはしゃぎまわります。
ですがその、やすやすと志賀の間合いに入る立ち振る舞いや、気配の殺し方、そして志賀の攻撃の初動を読んで攻撃をさせない動き……どれをとっても、AYA・が相当な実力者であることを示していました。
相当な、「殺し」の実力者であることを……
そのAYA・が待ち合わせまでして自分に会いたがった。
ということはもしかして、こういうことなのかい?
志賀は自身の愛用の武器、蜘蛛の糸を取り出してそう言うのですが……
志賀のそのそぶりを見るや、AYA・はと言うと
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飛び跳ねて喜びだすのです!
それは戦えると言う喜びではありません。
志賀が自分に「本気」になった、自分を殺し屋として認めてくれた!というものだったのです。
なんとこの待ち合わせは、AYA・が自ら提案したテストでした。
もし自分が志賀に会って、志賀が自分を一流だと認めたら、職・殺の上位ランキングの一員にして欲しい。
AYA・は啓にそう提案していたのです!
これでAYA・は晴れて職・殺の上位ランカーに。
基本的に自分から依頼を競り落とすことができず、ヘルプに徹することの多い下位ランカーではなく、いきなり自分で逆オークションで競り落とせばガンガン殺れる上位ランカー。
ボクの一番大好きなこと、殺し。
やってやってやりまくるぞ!
AYA・はそういいながら、うつろな笑顔を浮かべるのでした……

蜘蛛を自分のトレードマークのようにあつかっているAYA・。
それだけですでに怪しいのですが、それ以上に彼が発する殺しの実力を証明する匂いが、どうしても職・殺のメンバーに思い起こさせるのです。
S・B。
今まで職・殺は様々な的と戦ってきました。
取るに足らない小悪党から、伝説のグリーンベレー、異星から来た鬼、切り裂きジャック。
そんな職・殺からすれば、得体の知れない殺人集団、S・Bが懐に飛び込んできたとしても特別不思議なことは無いではないですか。
そう考え、職・殺のメンバーは動じぬ決意を固めるのです。
が、そんな志賀を揺さぶる、啓の言葉がありました。
その決意を固めた集まりからの帰り際、投げかけられた
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AYA・を見たとき、何故だか志賀を思い出した、という言葉。
AYA・には、志賀と同じ匂いがした……
その言葉は、志賀に思い出したくない思い出を、無理矢理思い起こさせようとし始めて……!
志賀はその押し寄せる過去から逃れるため、一刻も早くすべてを忘れようとするのです。
楽しい楽しい、大好きな、殺しで。

AYA・の巻き起こした渦は、志賀の過去を掘り出すことだけではありませんでした。
なんと、その時職・殺に出品されていたすべての逆オークションを、1円で落札してしまったのです!!
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その落札した依頼を、すべて滞りなく遂行することができるのならば、一応はルール違反ではありません。
そしてAYA・にはそれができる実力もありまして、続々と標的を片付けて行ってしまいます。
しかし、なんの世界でもモラルというのは重要です。
卑しい卑しい、職・殺の世界でもそれはありまして。
どんな目的があるにせよ、職・殺はどうしても殺しをしたくて仕方の無い者達の集まり。
そんな異常な人物が、それなりに譲り合って依頼を競り落としていると言うのに、それを有無を言わさず1円ですべて落札してしまえばどうなるでしょう。
もちろん所属メンバー全員から、不満を買うことになるのです!!

啓は、AYA・と志賀に同じ匂いを感じています。
漆黒の闇の中から姿を現した、とんでもない化け物。
とんでもない……異物。
ただひとつ二人の間で違うのは、志賀が「偽善者」であることでした。
偽善者である彼は、許されることの無い「殺し」に理由をつけるためにこの職・殺のメンバーとなりました。
ですが、AYA・は……?
そんないい知れない暗雲が渦巻き始める職・殺。
幸か不幸か、それともその狙いはまた別にあるのか……AYA・の暴走は、職・殺の上位ランカーによって一旦は止められます。
しかしAYA・の登場がすべての始まりだったのです。
職・殺を揺り動かす、本作史上最大の、最悪の戦いの……!!

というわけで、新メンバーが姿を現す本作。
そしてここから、怒濤の新シリーズが始まります!!
人死には大勢でるものの、一方的に惨殺したり、苦戦はするもののそれ以上の残酷な死を与え、基本的にメンバーが欠けることはありません。
ですがこの新シリーズでは、とうとう職・殺の、一戦級のメンバーから犠牲者が……!?
職・殺だけではなく、この国の命運をも揺り動かす、激闘が幕を開けます!!
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さらに気になるのが、志賀の精神状況。
断片的にしか明かされないこのシリーズ最初の惨劇を見て、彼はよりいっそう追い詰められてしまい……
いつ暴走してもおかしく無い志賀、果たしてこのシリーズはどのような展開になるのか!?
予想不能の緊迫が連続しそうです!!

その新シリーズの前に、一二三とYouがメインとなる仕事も収録。
あまりにもハードになっていく新シリーズ突入前に、コミカル、エロス、現代社会の闇などの様々な要素を描く、いつものストーリーが展開していきます。
こちらはいつもどおり、安心(?)して楽しめますよ!!

動き出す血戦、「新 職業・殺し屋。 斬 ZAN」第3巻は全国書店にて発売中です!
新キャラが招く新シリーズが開幕の今巻。
下手をすれば本シリーズの最終エピソードになってもおかしくは無い大規模な戦いに、期待せずにいられませんよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!