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本日紹介いたしますのはこちら、「ミミック」です。
作者は山田いぶき先生。
エンターブレインさんのマジキューコミックスより刊行されました。

山田先生は、本作が初の単行本となる漫画家さんです。
本作以外ではアンソロジーでの仕事などしかされておられないようで、少なくとも商業氏においてはまだキャリアの浅い、新人さんのようです!!

さて、本作はとある女子高生の秘密を知ってしまったことから、彼女に振り回されることになる男子高校生の日常を描く作品です。
今流行の日常モノといえばその通りなのですが、表紙からも窺えるように唯の日常モノであるはずがありません!

一年生中の……いや、学校中の噂になっている少女がいました。
姫小松にしき。
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黒髪ロングのストレートにリボンをつけた美少女、と言うだけでも充分に噂になる存在ですが、極め付けになったのは彼女が入学式に羽織ってきた見事な毛皮のコートです!
その佇まいは誰がどう見てもお金持ちのお嬢様。
景色のよい別荘が欲しいといったら山ごとプレゼントされたとか、使っているものは鉛筆一本にしてもお抱えの職人が作ったものだとか、プライベートビーチで泳ぐ姿を見たものが「黒髪のマーメイド」と名づけただとか、噂が噂を呼んでなんだか物凄いことになっているのです。
そんな噂もありまして、なんだか彼女には近づいちゃいけないような空気が自然と湧き出しておりまして。
彼女は学校で自然と孤立してしまっているのです。

そんな彼女を遠めで見ているクラスメイト、万(よろず)。
彼はいま叔父さんのおうちで世話になっており、その叔父さんのうちから学校に通っているのですが……
その叔父さんの家というのが、バスで1時間ほど行った山の中にあるのです。
こんな辺鄙なところから学校に通うのは自分だけだろうな。
そんなことを考えながらバスに乗り込むと、意外や意外。
あの姫小松さんも同じバスに乗っていたのです。
そういえば叔父さんの家から大きな洋館が見えていました。
あそこがきっと彼女の、などと考えているうちに、バスは終点へと辿り着くのでした。

いつもは人なんてほとんどいない終点ですが、なぜかその日は大勢の人が集まり、何やらごにょごにょやっています。
その集団に、なんと姫小松さんがすっと近寄っていき、なにをやっているかと尋ねたじゃありませんか!
意外に物怖じしない姫小松さん、「猪がでた」「爆竹を投げて山へ追い払った」と言う言葉を聞くと、なにやら目を閉じて集中しているようなそぶりを見せました。
そして危ないから早く帰れと言い残して話し合っていた人々が去っていくと、姫小松さんは
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思い切りダッシュして森の中へと入って行ってしまったのです!!
危ないといわれたのにもかかわらず山へ入っていってしまった彼女。
猪に出くわしてしまったら、彼女もただで済むはずがありません。
万はたまらず彼女を負って山の中へ入っていくのですが、山中は昼間にもかかわらず薄暗く、まともに歩くことすらままなりません。
草木を掻き分けて進んでいくと、ようやく見つけ出すことが出来ました。
……猪の方を。
万を見た猪は、物凄い勢いでこちらに突進!!
万は驚きのあまりそれを見ていることしかできなかったのですが、そこへ
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ボウガンを手にした姫小松が現われたのです!!

姫小松の放った矢は見事に猪の額に命中。
一撃でしとめて見せました。
その時になって始めて、姫小松はその場にいた少年がクラスメイトであることに気がつきます。
すると彼女は焦り始め、万がおずおずと差し出した、道中拾っていたカバンとバイオリンケースをひったくりました。
バイオリンケースを開くと中にはバイオリンなど入っておらず、取り出してきたのは……ナイフ!
それを「やらなくちゃ!」と言う言葉とともに振りかぶり、
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おもむろに猪の血抜きをはじめたではないですか!
これをしないと食べる時生臭くなるから……という姫小松。
この猪を食べるんだ、おいしいの?と、完全に興味だけでそう尋ねてみますと、姫小松は是非食べてみてくれ、と言い出すのです!
そして彼女はいかにも重そうな猪を軽々と担ぎ、万についてくるように促しつつ先を歩き始めます。
やがて乗り物の元に辿り着くのですが、それはリムジンやヘリと言ったようなブルジョワ向けの乗り物などではなく、手作り感漂うブランコ状のロープウェイ!!
死ぬ思いをしてそれにしがみつき、辿り着いた向こう岸から、さらに歩くことしばらく。
ここよ、と促されたのは岸壁にぽっかり開いた洞窟だったのです!!
お屋敷への秘密の入り口か?と思いながら彼女の後を追って中に入ると、そこはすぐ生活スペースでした。
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お屋敷への入り口どころか、はいってすぐ部屋……?
あの噂はどういうことだったのか?
頭の中は疑問符でいっぱいになってしまうのですが、やがて彼女が盛ってきてくれたボタン鍋の美味しさの前にはその疑問符も吹っ飛んでしまいました!!
うまい、こんな肉食べたことない!と絶賛する万。
それはそうでしょう、この肉こそが猪の肉なのですから!!
ちなみにこれは今とった猪ではなく、1週間ほど熟成させたものなんだとか。
そうしないとおいしくないとのことで、万はそうなんだと頷くしかないのでした。
そんな万に、姫小松は猪を狩った事、そしてここで暮らしていることは秘密にして欲しいと懇願します。
うすうす感付いてはいましたが、やはりここは姫小松のおうちのようで……
とりあえず万はみんなには言わないと約束してくれたのですが、やっぱりどうしても気になることがあるのです。
姫小松って貧乏なの?
すこしの静寂の後。
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貧乏じゃないわよ!すこしワイルドな生活なだけよ!!
姫小松は頬を染めつつ、そう反論するのでした……

というわけで、すこしワイルドな生活を送る姫小松と、そんな彼女がなんだかんだと気になる万の日常を描いていく本作。
やはり本作の魅力は、ワイルドながらも粗野ではない、不思議な魅力をもつヒロインにあります。
自力で鹿を狩ってみたり、ご馳走を振舞うといってそこいらに生えている野草で料理をしてみたりと、自給自足系ヒロインとでも言うべき独特すぎるキャラ付けがなされているのです!
さらにそんな生活をしていながら、できることなら普通にお友達を作って生活したいと言う夢をもっておりまして。
そんな彼女の日々の頑張りにも注目ですよ!!

また、そんな萌え要素だけではなく、そこかしこに自然に登場するワイルドライブ薀蓄にも注目!
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そんなサバイバ……ワイルドライフ知識も楽しめるのです!!

お嬢様は狩り暮らし?「ミミック」は全国書店にて発売中です!!
巻数表記がなく、連載も終了とはなっている本作。
ですがキッチリと物語がたたまれたわけでもありませんので、単行本が好調ならひょっとして後の展開もありえるかも……?
続きが読みたくなる独特の味わいの本作、ご一読してみてはいかがでしょうか!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!