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本日紹介いたしますのはこちら、「サクラサクラ」第1巻です。
作者はもりしげ先生。
秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行、別冊少年チャンピオンにて連載されています。

もりしげ先生は96年にデビューしたベテラン漫画家です。
デビュー当初はショッキングな描写を多分にふくむ成年向け漫画を得意としていましたが、99年より連載を開始した「花右京メイド隊」をきっかけに、全年齢向け作品をメインにしていきます。
同作と、02年より連載を開始した「こいこい7」が相次いでアニメ化を果たし、その人気を不動のものに。
その後もガンガン系列の雑誌でも連載をするなど、活躍の幅を広げております。

そんなもりしげ先生、ときおり(?)みせる、成年向け漫画家時代得意としたハードな展開には度肝を抜かれること間違いなし。
本作は一捻り加えられた舞台設定で繰り広げられるラブコメなのですが、やはりなにやら気になる謎が散りばめられているのです!

15年前、この国の少子化は極限に達しました。
あまりに少なくなったその歳の新生児の数は公表されて拝ないものの、2桁とも、1桁ともいわれていて……
それから10年がたつと、少しずつ子供たちは生まれ始めます。
なのになぜか、今年15歳になる子供たちは、なぜか「最後の世代」と呼ばれているのです。

最後の世代の子供たちは、物心ついたときから大人ばかりに囲まれていて、そのみんなから蝶よ花よとかわいがられていました。
それが本来の子供の姿ではない、と言うことは彼らにもわからないでもありません。
昔の人たちが見ていたであろう、学園もののドラマやらアニメやら。
その中で当たり前のように送られている学校生活と言うのが、最後の世代には未体験のものなのです。
甘美なる響き、「同級生」。
その同級生にとうとう会える、学校生活が今日、生まれてはじめて始まるのです!
そんな期待に胸を膨らませ教室にはいる男子、花坂春。
春を迎えてくれた同級生の数は……たった一人の女子でした。
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彼女は姫城桜子。
彼女に差し出してきた手を握り返し、初めて触れる同級生の手にドキドキしてしまう春。
同級生がこの腰甲斐ないってことは、まさか3年間二人きり?
ですがそんなことを考えている彼に、桜子はこんなことを言うのです。
なにを考えてるか想像できるけど、そんな心配はないから。
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わたし、お安くないから。

なんでも桜子は、国中のお金持ちや有力者から求婚されているそうで、学校をでたらさっさと結婚する予定なんだとか。
現時点ではあなたなんてリストの末席にもはいらない、とあざ笑う彼女。
想像していた同級生像が崩れる音を聴くことになった春は、自分の夢の崩壊にちょっぴり不安を感じてしまうのです。
そんな時やってきたのが、担任教師の唯野。
彼はやってくるなり、いきなり入学式は今日じゃなくて明日に変更になった、今日は体育の自習をしていてくれ、と言い残して去っていってしまうのでした。
始めて着る体操服に感動する春ですが、桜子は体操着+ブルマという今でもすでにノスタルジックなものを見て不満をあらわにします。
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どれだけ自分達のノスタルジーを押し付ければ気がすむのか、「御老人」どもめ!と!!

外でとりあえずサッカーボールを使い、リフティングなんかを楽しみます。
一緒にやろうと誘っても、桜子はサボりを決めこんで座っちゃいました。
つれない態度の桜子を見て、どうやったら仲よくできるんだろうとへこむ春。
ところが今度は桜子から春へと話しかけてきたのです。
今まで会ってきた「最後の世代」の子って大抵はわがままでコミュニケーションが苦手な連中ばかりだった。
それなにに君はとっても自然だ、と。
褒められたんだかどうだかわからない春ですが、それよりむしろ桜子が他の「同級生」に会ったことがあるらしいと言うところのほうが重要らしく。
うらやましいうらやましいとはしゃぎまわるのですが、桜子は春からサッカーボールを奪い取り、そのボールとともにおもいっきり言葉を放つのです。
そんなに楽しかったら、今こんなところにいないわよ!!
飛んでいったボールは、桜の木の枝に突っ込み……何かを壊しました。
その壊れたものは、監視カメラです。
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しかもそのカメラはそれだけではなく、ここにもそこにもあそこにも!といった感じでうじゃうじゃあるようで。
どうして?ときょとんとする春ですが、桜子からすればこれに驚くことのほうに驚くようです。
自分達最後の世代は、絶滅危惧種のようなもの。
何か会ったら責任者の首が飛ぶくらいじゃすまないし、この自習だって二人がなにをしてなにを話すのか、動物でも見るかのようにモニタリングされているんだ。
そんな彼女にとってはもはや当たり前な事実も、確認しなおせばうんざりしてしまうもの。
馬鹿馬鹿しくなったから教室に戻る、と春に促すのですが……真っ先に返事したのは春のお腹の虫だったのでした。

教室に戻ると、はかったかのように給食が用意されていました。
いつの間にか向かい合いにさせられていた机に座って給食を食べる二人。
春はここぞとばかりに、せっかく同級生になったんだからお互いのことをよく分かり合おうよ!!と雑談したがるのですが、桜子は春が見ていたドラマなんかと現実は全然違うものだ、同級生に幻想をもちすぎだ、それを私に押し付けるな、とまたもシャットアウトしてしまうのです。

それはもうガッカリする春ですが、帰り道で流石の桜子もフォローを始めました。
いい加減機嫌を直せ、らしくない。
ですが春からすれば、初めて通う学校、初めてできる同級生に期待が膨らみまくっていたわけで。
それをつっけんどんに返す桜子に、がっくり来たのも無理はないと言うものなのです。
が、ここでいきなり桜この態度が軟化したではないですか。
私のことを教えてあげ、私の夢のこと。
急に顔と顔を付き合わせるほど近くによって来てそういった桜子は、おもむろに懐から小さな紙を取り出し。他の何者も見えないようにその紙の内容を見せ付けました。
「これから言うことは、名詞以外意味が逆」。
それを春が確認したと見るや距離を離し、こんなことを言ったのです。
私なんかにはできないかもしれないけど……
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私の夢は、ご老人たちに日でも長く天寿を全うしていただくことよ……
これはつまり、「必ずできる」「御老人たちを1日でも早く……」と言う、夢!?
もしかして桜子は物凄い危険思想の持ち主なのでは?
ともかくこの場を取り繕うため、それは素晴らしい夢だなあ、と適当な相槌を打つ春。
そんな春に桜子はこう続けるのです。
こんな秘密を話したのは、君のこと信頼できる人だと思ったからよ。
私、君のこと、嫌いではないから、と!

その後二人は、住むよう言われた部屋が隣同士だったり、桜子が春の作る料理の匂いに惹かれてやってきて一緒にご飯を食べたりといったイベントを経て、翌日の入学式を迎えます。
そこには、入学式が一日贈らされた原因の人物がまっていたのです。
銀髪に、サクラ色の瞳……そしてあまりにも無口で感情がつかめない美少女。
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彼女は敷島桜花。
もう1人の同級生だったのです!

と言うわけで幕を開けた、3人だけの学校生活。
奇妙な野望をもった少女桜子と、ひたすら草食系を突き進む春、そしてつかみどころのない桜花の3人の日常を描いていくことになります。
桜子はなぜ最後の世代を溺愛しているはずの「御老人」を嫌悪しているのか?
そして桜子はどうやってその願いをかなえるつもりなのか?
そのあたりが表向きの物語の軸になっていくようです。
が、それ以外にも気になる点がちらほら。
一般的な最後の世代とは明らかに違うらしい、春の「育ち」。
彼女ひとりのために入学式を遅らせたと言う形になる生まれだけでなく、あまりにも普通とは乖離した世間知らずなところをみせる、謎の存在桜花。
10年ほどのブランクが会ったとは言え、子供が生まれ始めているはずなのに「最後」と呼ばれる最後の世代。
ただ最後の世代を大事にしているだけではない何かを感じさせる、教師やご老人をはじめとした大人たち……
そういった謎に加え、所々に挿入される「鴇」のエピソードをはじめとした気になるワードが、この物語の裏にある何かどす黒いものを匂わせているのです!

そういった気になる要素だけでなく、お色気をはじめとしたラブコメらしい要素もバッチリ用意されております!
乳首券の発行も当然のように(?)おこなわれておりますので、そっち方面も十二分に楽しめること間違いなし!
とりあえず難しいことは後回しで、この日常を楽しむと言う手もありかもしれません!!

超少子化ラブコメ、「サクラサクラ」第1巻は全国書店にて発売中です!!
ラブコメ日常物の陰に香る、シリアスのにおいが興味深い本作。
もりしげ先生ですから、何があってもおかしくありません!!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!