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本日紹介いたしますのはこちら、「謝男(シャーマン)」第1巻です。
作者は板垣恵介先生。
日本文芸社さんのニチブン・コミックスより刊行、週刊漫画ゴラクにて不定期連載されています。

さて、本作は板垣先生の発掘した(?)ジャンル、土下座漫画です。
そもそもこの土下座漫画と言うジャンルは、板垣先生とその盟友、RIN先生のタッグによって連載された「どげせん」が始まり。
ですが急遽両先生の「土下座感の違い」で連載を終了。
その後RIN先生は新天地ヤングキングにて「どげせんR」の連載を開始し、板垣先生がゴラクに残って本作の連載を開始することになったのです。

その日の朝、東京周辺の近隣県では不思議な光景が相次いで目撃されていました。
それを黒く染めんばかりの、カラスの大群。
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そのカラスたちが、いっせいに東京の方へと向かっていく……
そしてカラス達が向かっていた先は、とある学校でした。
厳密に言えば、その学校の一角に位置する体育館に、です。
体育館の上空で、渦を巻くように飛び回っているカラスたち。
彼らはなぜこの場所で飛び回っているのでしょうか?
後にこの現象に関して、とある大学の名誉教授はこう見解を述べたそうです。
あの日、体育館の上空が、すごく居心地がよかったんじゃないか。
……まったく理解できない説です。
ではその体育館の中では何が行われていたのでしょうか?
それは何の変哲も無い全校集会でした。
全校集会でその時行われていたのは、新任の教師の紹介でした。
この新任の教師……拝一穴(おがみ いっけつ)が、この場にいる全員に衝撃を与えることになるのです!!

校長に促され、自己紹介を始める拝。
まず彼がしたのは自分の名前を名乗ること。
そして、靴を脱ぎ、跪くことでした!
本日付をもち、この治ヶ浦高校に赴任することになりました。
ご覧の通り若輩であり未熟者。
生徒の皆さん、
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どうかわたしを助けてください。
そういって、見事な土下座をしてみせる拝。
そのおもわぬ行動に、生徒達は沸き立ちます。
大の大人が、それも教師が自分たちに向けて土下座をしている。
今まで大人たちには頭ごなしにしかられ続けてきた生徒達。
いつも上から、見下ろされてきた大人を……自分たちが頭上から見下ろしている!!
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その感じたことの無い快感に、生徒達は打ち震えていたのです!!
ですがその歓喜のときも長くは続きません。
校長が静かに、と力強く発言すると、生徒達は静まり返るしかないわけで。
さらに校長は拝になおれと命じ、拝もまたそれに従って状態を起こしてしまったのですから。
ところが拝の真価はこれからでした。
君達への挨拶は終わった、残るは祈願だ。
そう言うと拝はわざわざ校長にお願いして、壇上の机を橋のほうへと除けます。
それが終わると、今度は生徒たちに背を向けて壇上の壁に掲げられた国旗の前へと仁王立ちしました。
君達の人生を価値あるものにするために、そして幸多きものとするために、祖国へ祈願したい。
そう言って、再び拝は跪いたのでした!

その後起きたことは、生徒をして「超常現象だったと思う」と言わしめる不可思議な出来事でした。
今度は何が起きるのか?何を見せてくれるのか?
そんな期待のようなものがみなぎっている視線を一身に受けていた拝がとった行動は

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先ほどと同じ、至極真っ当な普通の土下座です。
意外なほど、意外性の無い行動に、落胆のざわめきと失笑が生徒達から漏れ聞こえてきたのです……が!
その瞬間のことでした!!
この体育館にいた「生徒」だけが全員、
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前のめりに倒れたのです!!
誰かに押されたわけではありません。
生徒は誰一人として、背中を触られたものはいなかった。
それなのに、まるで示し合わせたかのように全員いっせいに倒れてしまったのです。
誰一人その原因がわからない、何がおきたのかもわからない。
ですがその時振り返った拝の顔と言ったら何でしょう。
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今起きた現象を、予めわかっていたかのような、ご満悦の表情だったのです!!

とある生徒はその時のことをこう語っております。
笑われるかもしれないがあの時のことはこう解釈している。
あれは、拝先生の「後押し」だったんじゃないか?
あんな心強い、あんな気持ちいいことは初めてだったんだから、と。

と言うわけで、スパー土下座教師拝の日常を描いていく本作。
やはり本作は同じ土下座漫画、しかも袂をわかった存在である「どげせん」と比較したくなってしまうのも無理は無いところ!
実際同じ土下座を扱った漫画とは言え、本作とあちらとではだいぶ毛色が変わっているのです。
「どげせん」のほうでは、主人公は実に様々な土下座を見せてくれました。
それは時に美しく、時に滑稽で……
情けなささえ感じさせる主人公の性格もあり、ギャグありシリアスありの漫画になっていました。
ですが本作は、あくまで基本の土下座で通していきます。
そしてその土下座を板垣先生の代表作、「バキ」シリーズを髣髴とさせる各人の心理描写、その場に居合わせた人が後に想い起こす回想、そして奇抜な展開と言った先生の十八番でいろどっているのです!!
そしてお話の流れは、バキシリーズなどにも見られた、傍から見ればギャグのようなことを大真面目にやってみると言う部分を延ばしている感じの構成になっています。
土下座ひとつがどんなことまで出来るのか?
起きる事件は基本的に些細なものばかりですが、その些細なことを土下座のテクニックでねじ伏せていく!
そんな物語と、底知れない何かを感じさせる拝の謎。
その二つが本作のキモとなっていきそうです!!

土下座道を実直に描く、「謝男(シャーマン)」第1巻は全国書店にて発売中です!!
ついに板垣先生自信が筆を執った土下座漫画である本作。
すでに「どげせん」とはだいぶ違ってきていますが、これからさらに違いを見せてくれることでしょう!!
両者を比較してみるのも面白いかもしれません!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!