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本日紹介いたしますのはこちら、「怪、刺す(かい さす)」です。
小学館さんのゲッサン少年サンデーコミックススペシャルにて刊行されました。

作者は伊藤潤二先生と木原浩勝先生。
挿し絵を担当していらっしゃる伊藤先生やその著作は「伊藤潤二」のテーマにてまとめておりますので、宜しければごらんください。
木原先生といえば中山市朗先生とともに編んだ「新耳袋」をはじめとした、怪談関係の書籍を多数発表されている作家です。
伊藤先生とは「ミミの怪談」にてすでにタッグを経験されていまして、今回は再び漫画界と活字界の恐怖2大巨頭が競演となったわけです!

さて、いきなり何なんですが、本作は漫画がメインではありません。
100ページ強の本書のうち、8割は活字による恐怖譚がつづられています。
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ですがその全てのお話にはふんだんに伊藤先生の描く挿絵が描かれており、絵の面でもしっかりと恐怖&伊藤味を楽しめるのです!
正直字だけだと読む気がしないなぁと言う方でも大丈夫!
ページを開いた見開きに絵がひとつもないという場所はなく、どこをとっても伊藤先生イラストに出会えます!
更にフォントにも工夫が。
強調する部分の字が大きくしてあったりするだけでなく、書体が変わったり、字と字の間のスペースが大きくなったり、文字の配置が変則的になったり、字の向きが変わったりと、あの手この手で不安感や違和感を増幅させる仕掛けが施されているのです!

伊藤先生の作品といえば、おぞましく書き込まれた絵柄で、ホラーなはずなのにどこかコミカルな匂いを孕む作風が特徴です。
ですが今作は真っ当(?)なホラーストーリーに挿絵をつけるという構成なため、そのおぞましい絵柄がホラーにのみ作用していつも以上の恐怖感を味わえるのです!
いつもよりグロ描写が少ないにもかかわらず!

そんな数々の恐怖譚のなか、ウチは一応漫画紹介ブログという体裁となっていますし、活字を文字で紹介するのもアレなので、唯一掲載されている漫画作品、「夏の卒業旅行」を紹介したいと思います!

女子大生の直美と和子は卒業旅行として東北にあるホテルに泊まることになりました。
見た目はこぎれいで感じよく、周囲の景色も最高、料理もおいしいらしいということ無しのホテルです。
ホテルに入ると仲居さんたちが丁寧に出迎えてくれ、早速係の人が部屋に案内してくれます。
係の人は夕食は6時、大浴場はロビーを抜けて階段を下りたところ、ごゆっくりどうぞ、とテンプレどおりの説明をして部屋を立ち去りました。
こうなればまずするのはやっぱり入浴。
二人は浴衣に着替え、ロビーを通りぬけ、階段を下り始めます。
階段に足を踏み入れる直前から早くも温泉独特の香りが漂い始め、盛り上がってくる二人。
この温泉はお肌にいいらしいだとか、風呂上りの食事が楽しみだとかキャッキャとはしゃぎながら階段を降りていきます。
ふと気がつくと、
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階段は先が見えないほど長く伸びていることに気がつきました。
この階段はこんなに長かったか?こんなに暗かったか?……いいえ、下り始めたときは明るく、下の階の廊下も見えていたはず。
恐ろしくなり引き返そうかとも思いますが、なんと上方向も同じように暗く長い廊下に変貌しています!
どうしようと抱き合って震える二人ですが、下の方から明かりが上ってくるのが見えました。
それは
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ちょうちんを持った和服の女性。
なにやら異様な気配を発しているのですが、このままここで震えているわけにも行かないわけで、直美がその女性にお風呂はこの先でいいのかと問いかけます。
女性は何も言わず、こくりとうなずいてそのまま上の階へと消えていきました。
上の階へと消えていく女性を見送り、下へと視界を戻すと今度はいつのまにか下の階の廊下がすぐそこに見えるではないですか。
奇妙にも程がありますが、とにかくお風呂についたんだから入ることにする二人。
脱衣所で浴衣を脱ぎ、浴室へと足を踏み入れると
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大勢の人が入浴しているようです。
和子は何か違和感を感じているようですが、眼鏡をはずしている直美はいまひとつピンとこない様子。
妙におびえている和子を置いて直美は先に湯船につかるのですが、入るなり和子は早く出ようと言い出すではないですか!
浴衣を着て脱衣所から飛び出すと、先ほどアレだけ遠かった上階がすぐそこに見えています。
不思議がる間もなく、和子はとにかく急いで直美を引っ張るようにダッシュで部屋に戻りました。
どうしてここまで和子がおびえているのかわからない直美は、素直にどうしたのかと質問。
すると和子は先ほどの浴場に広がっていた常軌を逸した異様さを語りだしたのです……!!
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というわけで、活字、漫画、両面で恐ろしさを味わわせてくれる本作。
ホラー漫画、ホラー文章界ではこの人ありと言われるようなお二方の競演ということもあり、「聞いたことある!」というようなお話がないのはさすがです!
それも単なる恐ろしい話だけではなく、わけのわからない不思議な話、傍から見るとちょっといい話だけど当事者だったら相当おっかないお話などなど、様々な風味が楽しめます!
表紙なんかも一見地味に見えますが、穴が開いていてカバー下本体に描かれたロゴが見とれるような一工夫がされており、本文も含めて気合の入ったデザインとなっているのです!

強力タッグがつづる恐怖絵物語&漫画、「怪、刺す」は好評発売中です!
実際のところどうなのかは知る由もありませんが、全て実際にあったお話を元にしているらしい本作。
ひときわ熱い今夏、このスタンダードでありつつオリジナリティあふれるホラーストーリーで涼しくなるのも宜しいのではないでしょうか!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


怪、刺す (少年サンデーコミックススペシャル)
小学館
2010-08-12
木原 浩勝

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