本日紹介いたしますのはこちら、「ゲゲゲの鬼太郎 青春時代」「ゲゲゲの鬼太郎 スポーツ狂時代」です。
角川書店さんの角川文庫にて刊行されました。
作者は勿論水木しげる先生。
水木先生作品は、「水木しげる」のテーマで紹介をまとめていますので、そちらもよろしければご参照ください。
さて、こちらは週刊実話にて77年に連載された「続ゲゲゲの鬼太郎」を「青春時代」に、78年に連載された「新ゲゲゲの鬼太郎 スポーツ狂時代」を「スポーツ狂時代」にまとめた文庫本となっています。
数多く存在する鬼太郎シリーズですが、このシリーズのすごいところといえばなんと言っても鬼太郎が普通の人間として生活していくというストーリー。
当然鬼太郎が普通の人間のような生活を送れるはずもないのですが、巻き起こる事件もまたとんでもないものばかりでして。
水木先生の自由気まますぎるストーリーメイキングに振り回されること必死の作品なのです!
物語は鬼太郎が妖怪に理解のある人の協力を受け、「田中ゲタ吉」と言う名前で学校に通っているという状況で始まります。
「墓の下高校」なるいかにもな名前の学校に通う鬼太郎、トレードマークのちゃんちゃんこがありません。
仕舞っているわけではなく、ちゃんちゃんこを編みなおし、セーターにして着ているんです。
しかも鬼太郎には恋人までいるという事実。
その彼女はユリ子さんと言うのですが、なんと彼女は売れっ子タレント。
今回はその彼女が現れたと思ったら消えていく、「皮はぎ魔の巻」を紹介したいと思います。
最初は喫茶店で知り合った普通の少女だったユリ子ですが、タレントになってしまうと鬼太郎はなかなか会うことが出来ません。
モヤモヤしながら日常を過ごしていると、女の皮を剥ぐ皮はぎ魔が現れているという噂を耳にする鬼太郎。
皮はぎ魔は皮膚再生薬と言う薬を塗ってくれるそうで、皮をはがれた人も2~3時間すれば元通りになるというのですが、そんなこと言われても誰だっておとなしく皮をはがれたがるわけもありません。
まさかわれわれ妖怪の仲間の仕業じゃああるまいなと思案しながら、鬼太郎は久しぶりのデイトとしゃれ込むのでした。
楽しいデイトのはずですが、ユリ子さんはやっぱりどこか面白くなさそう。
コーヒーを少しばかり口にしただけで、もう時間だといって帰ろうとします。
鬼太郎はそれを慌てて追いかけ、皮はぎ魔が出るらしいから危ないよと送っていくことにするのですが、慌てていたため先ほどコーヒーを飲んでいた喫茶店にカバンを忘れてしまいます。
鬼太郎が全力ダッシュでカバンを取って戻ってくると、今まさにユリ子さんが拉致られようとしているではないですか!!
すぐさま駆けつけるも時すでに遅し、ユリ子は車に乗せられていずこかへと連れ去られてしまいます。
まさか皮はぎ魔に連れて行かれたんじゃないだろうな、と焦りながらもなんかふらふらする鬼太郎。
すると程なくしてなんか足元にぐにゃっとするものが。
それは
哀れ皮がはがれて真っ赤になったユリ子さんだったのです!
すぐさま警察っぽい人に助けを求めると、警察っぽい人は「遂に出ましたか」とわりと冷静に受け答えて救急車を手配。
お医者さんが言うには今のところ命に別状はないそうで、全身ずる向けにもかかわらずそのままベッドに寝かされるユリ子さん。
それでも心配しまくる鬼太郎ですが、ユリ子さんは「ゲタ吉さん あんたかえってもいいのよ」とそっけなく追い返されてしまうのでした。
ユリ子さんの心が自分にはないことに気が付き、ゲンナリしながら帰る鬼太郎。
すると、幽霊から間借りしている我が家の前にユリ子さんをさらった車が横付けしてあるではないですか!
こら大変と中へ駆け込むと、目玉のおやじがいつもの茶碗風呂でなく、なんか高級なウイスキー風呂に入っているではないですか。
これはおかしいなと首をかしげていると、なにやら隣の部屋から物音が。
その部屋の中ではなんとねずみ男がユリ子さんから剥いた皮を使ってポルノ人形を作っているではないですか!
ねずみ男は目玉のおやじをウイスキー風呂で酔わせている間に皮はぎ魔として犯行を繰り返していたのです!
更にねずみ男はどこからか週刊実話を取り出し、ユリ子が鬼太郎の10倍はイケメンだという狩首マラ男とデイトしている写真を見せ付けました。
すげえ名前だ……と言うのはおいておいて、ユリ子が本格的に自分には手の届かない存在になってしまったことを実感する鬼太郎。
お前はこの「ユリ子スキン」で我慢すべきだと説き伏せられてしまうのです。
目玉のおやじもそこへ乱入し、最初はお前は人間なんかと結婚する血筋じゃないぞと怒っていたのですが、ユリ子スキンの出来があまりにいいためかあそこの中にまで入り込んで出来を調べる始末。
建前と本音は違うんだよと悪びれない目玉のおやじと、ユリ子さんは俺の恋人だよと未練たらたらな鬼太郎に、ねずみ男はもう一体作ってやるから喧嘩はやめろと余裕の表情。
「もてねえ男は皮はぎ人形しかねーってことよナ ワカッタカイ」と言う台詞で締めるのでした。
と言うわけで、ねずみ男が懲らしめられるどころか、鬼太郎にエロスなワイフ売りつけることに成功しちゃうというとんでもないお話が繰り広げられる本作。
このエピソードでもわかるように、この高校生鬼太郎はそりゃぁもう女好きです。
女性にメロメロになること数知れず、そのたびにひどい目にあいまくり……
妖術的なものにかかって
おちんちんなくしたりします。
ひどい。ヒドスギル!!
そんなわけでやたら女性の裸やら濡れ場やらが出てくることに目がいく本作ですが、なかなかどうしてストーリー自体も度肝抜かれるものに。
満足に高校生活が描かれないまま退学となってしまい、そこから始まる「スポーツ狂時代」がヒドイの何の!!
ひょんなことから貧乏な相撲部屋の新弟子になるのですが、その戦法が
敵のおなかで跳ねて上からのしかかる、という謎すぎる戦法!
その上相手も妖怪でもないのに妙な力士ばかりで、骨がなくて体が伸びる人とか、うなぎのようにぬるぬるする人とか相手に鬼太郎も大苦戦!普通にまけたりします!
ちゃんちゃんこ(今はセーターですが)が奪われていたり、鬼太郎の妖力の元らしい妖怪の血が抜かれていたりするのも原因なんですが……
そのちゃんちゃんこを盗んだりした相手が相撲編のラスボスなんですが……女性なんです。
ただ、
素っ裸に回しだけで土俵入りしちゃいます。
水木先生!!鬼太郎の口とかいろいろ言いたいことはありますが、とりあえず土俵は女人禁制です!!!
更にその後は野球編に突入。
突然墓の下高校が妖怪の高校だったことが発覚し、鬼太郎が再入学して甲子園を目指すことになります。
ですが野球の試合は水木先生自身がどうでもよかったっぽくて、周囲の人が鬼太郎選手をつかって金儲けしようとたくらんだり、妖怪と試合したくない人間の一般高校が手を尽くして試合を中止にしようとアレコレするのがメイン。
鬼太郎が空気状態のままくっちゃくちゃな感じで物語が進み、オチもまたねずみ男が金のために一件落着させるといった、それはもう自由奔放な物語なのです!!
高校生となった鬼太郎があんまりな日常を送る、「ゲゲゲの鬼太郎 青春時代」「ゲゲゲの鬼太郎 スポーツ狂時代」は全国書店にて好評発売中です!
これはあんまりにもあんまりですよ……という、水木先生ならではの味がこれでもかと詰め込まれた本作。
妖怪退治物とは一味違う、本能むき出しなもうひとつの顔がありありと見て取れる作品となっています。
このひどさがファンにはたまらないわけですが、そうでない方にはいい加減すぎるとうつっちゃうかも。
アニメや正当シリーズの鬼太郎のイメージを崩したくない方は決して読まないでください!!
でも、このひどさが癖になる作品であることも確実なので、そういうのに興味のある方は買うしかありませんよ!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!
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