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本日紹介いたしますのはこちら、「妹のジンテーゼ」第1巻です。
集英社さんのヤングジャンプ・コミックスGJより刊行、グランドジャンプにて連載されています。

作者は原作が十全文博先生、漫画が紺野比奈子先生。
紺野先生は、90年代半ば頃「ひな。」の名義でデビュー。
角川書店さん、ジャイブさん、学研さん、メディアワークスさんなどなど、実に様々な雑誌で漫画連載を経験していらっしゃいます。
10年より現在のペンネームに改名し、コミックハイ!にて「図書委員長の品格」を本作と同時に連載していらっしゃいます(「図書委員長~」は現在休載中のようですが!)。
十全先生は検索してみても全然情報が出てきません!
とりあえず今作がデビュー作(少なくともこの名義では)のようです!

さて、本作は分類するならば日常漫画となります。
しかも今流行の部活モノに分類されるでしょう。
ですが本作で何よりも特徴的なのが……物凄い理屈っぽさ!
タイトルに使われている「ジンテーゼ」と言うのは、命題である「テーゼ」とそれに対する反論である「アンチテーゼ」、そのどちらかを選ぶのではなく、どちらも兼ね備える第3の案に当たるもの。
……詳しくはグーグル大先生に尋ねていただくとしまして、本作は日常に降りかかる様々な命題を掘り下げまくっていく日常モノなのです!!

入学式の朝から遅刻寸前の状態に追い込まれている少女、神野智恵。
彼女がいきなりこんなピンチに追い込まれてしまったのは、あるトラブルが原因です。
路上でつぶらな瞳を輝かせている、捨て犬。
訴えかけてくるかのようなその視線に、思わず足を止めてしまった智恵。
ですが、当然ここでためらい泣な犬をサルベージしていくことは出来ません。
知恵の頭の中には、3つの選択肢が浮かび上がります。
1、学校に連れて行って先生に怒られる。
2、自分の家につれて帰って遅刻する。
3、見てみぬふりをして両親の咎めに苛まれる。
どれを選んでも彼女にはあまりよろしくない結果が待ち構えています。
どうする、どれを選ぶ……?
必死に思い悩んでいるうちに、いつの間にか遅刻が迫っていたのです!!

で、今。
智恵は結局子犬を抱え、学校にダッシュしていました。
遅刻と犬、二つの問題を抱えることになってしまったわけですが、ここはとにかく急ぐしかありません。
そんな彼女の目の前には、司会の悪い曲がり角が待ち構えておりました。
遅刻寸前の猛ダッシュ、そして曲がり角。
この二つのキーワードに、智恵は昔のある出来事を思い出したのです。

6年前、大好きな少女漫画を読んでいたときのこと。
そこに智恵の「兄者」がやってきて、こんな話を始めたのです。
少女漫画では、よくパンをくわえた少女が遅刻しそうになっていて、曲がり角で男の子とぶつかってパンツを見られてしまう、そしてその男の子が転校生でとなりの席になったりする。
さらに最初はその男の子に良い印象を受けない主人公が、彼が捨て犬を拾ったりしている姿を見て「恋」をするんだ……と。
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それは「驚き」じゃなくて「恋」なのか?
そんな素朴な疑問をまだ歳若い智恵が持つのも無理はないでしょう。
兄者はこう答えるのです。
その「驚き」がまさに恋なのだ、恋とはいつも驚きから始まるものなのだ、と!

そもそも驚きの本質とはなんなのでしょう。
人は、他社が自分の予想外の行動をしたときに驚くものです。
つまりそれは、この人はこういう人だと言う認識を裏切られた時に起こると言うことで、すなわちギャップのある人が驚かれやすいと言うことになるわけで。
実際、ギャップのある人は恋しやすいのだそうです。
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人と言うのは男性も女性もギャップに弱い。
今の少女漫画のように、いけすかないとおもっていた男子がやさしいとわかったりすると、ころっとまいってしまうものなんだとか。
だからもし恋の勝者になりたいのなら、最初はネガティブなイメージを植え付けておいて、後からポジティブなイメージで裏切るような演出をすればいい!
兄者は自信満々にそう語るのです。
ではなぜ人はギャップに弱いのでしょうか?
その答えは……「わからない」!
わからないからこそ人はギャップのある人に恋してしまうんだそうです!!

人はわからないもの、「謎」に惹かれる。
この習性を使って、恋愛をうまく運ぶ猛者もいます。
人と言うのはリスクを考え、告白する場合は断られるリスクの低い人、つまり自分を好いていてくれそうな人を選んでしまう気持ちがどうしても働きます。
だから一般的に告白する側になることの多い男性は、「自分に気がある」と判断した人に告白するのですが、どの点を見てそれを判断するのでしょうか?
……そう、「驚く」人!
自分に対しとどろくかどうかで、気があるかどうかを判断すると言うのです!!
自分に驚いた女性ほど好意を持っている、と言うことを経験的に知っている男子は、自分に驚いてくれた女性に好意を抱く可能性が高くなる……
そこで出てくるのは、先ほどの恋愛をうまく運ぶ猛者のお話。
好きな人の前で、わざと驚いてみせる……!
そうやって、意中の人が自分を隙になってくれる可能性を高めていると言うのです!!
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閑話休題、曲がり角を前にした智恵。
ここで曲がり角から素敵な男子が飛び出してくるのが横道なわけですが、今はその衝突にあってしまうと遅刻が確実になってしまうわけで。
ここで智恵は、曲がり角に突っ込まずに急ブレーキをかけ、しっかと曲がり角を確認してから曲がることを決意するのです!!
ところが、きゅっとブレーキをかけたその瞬間!
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なぜか後ろから思いっきり衝撃が襲い掛かってきたのです!!
なんと曲がり角の先ではなく、すぐ後ろに何者かが走ってきていたのでした!!

どうして急に立ち止まるの?と言う声が後ろから聞こえてきます。
予想を避けるための行動が、予想を現実にしてしまった……
しかもきっちりパンツも見られてしまっております!
ですがこうなってしまえばもう素敵な出会いを迎え撃つしかないではないですか!
覚悟を決めて後ろに振り返ると……
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あろうことかその後ろの人は女性ではありませんか!!
……冷静に考えると、千恵が行くのは女子校。
素敵な男子ととなりの席、などと言う状況はないのですから……!

そんなこんなでその女性、夕香と知り合った智恵。
そしてこのあと、ひょんなことから古都音と言う女生徒とも知り合い、「もんかい」なる部活動に挑むことになるのです!!
そしてその「もんかい」の快適な活動をするためにまずすることは、「くいけん」との対決に勝利をおさめること!
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本作のタイトルにもなっている、ジンテーゼを体現する「くいけん」との対決とは!?


というわけで、物事を何でも掘り下げまくる本作。
この後も日常の様々な出来事を掘り下げつつ、実にゆっくりと物語がすすんでいくことになります。
何せ本題になっていくと思われる「もんかい」が登場するのは第5話。
そしてメインとなる智恵、夕香、古都音がきっちりと集まるのが第7話!
物凄い勢いで掘り下げていくだけに、お話の展開はどうしても遅くなってしまうのでしょう!
ですがそれだけに内容は濃いの一言!
ほぼ一話丸まる「ガウス計算」につぎ込むなどの学問的なことから、「部屋は心の鏡」と言った精神的なものまで様々取り揃えております!
とにかく文字の多い漫画ですので、薀蓄好きの方でないと厳しいかもしれませんが……!

日常形の新たな形(?)、「妹のジンテーゼ」第1巻は全国書店にて発売中です!
薀蓄だけでなく、智恵の家庭環境や、夕香の想い人、「くいけん」の個性的なメンバーなどなど見所の多い本作。
キャラに萌えるにはまだ掘り下げがすくないものの、その当たりもこれからに期待していいはずですしね!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


妹のジンテーゼ 1 (ヤングジャンプコミックス)
集英社
2012-06-19
紺野 比奈子

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