画像

本日紹介いたしますのはこちら、「空が灰色だから」第2巻です。
秋田書店さんの少年チャンピオンコミックスより刊行、週刊少年チャンピオンにて連載中です。

作者は阿部共実先生。
本作第1巻は12年3月8日の記事にて紹介しております。
よろしければあわせてご覧くださいませ。

さて、十代の少女達を中心に様々な一捻りも二捻りもされた日常の様子を描く本作。
すれ違いが生む胸の痛くなるお話があったかと思えば、心がホッコリするいいお話があり、かと思えばゾッとする恐ろしい話があったりと、油断ならない作品です。
そんな中で今回紹介したのは、ガチンコホラーな一編「こわいものみたさ」。
本格的ホラー漫画にも劣らない恐怖と、本作の目玉とも言える、ままならない若者の心情の描写がミックスされたお話です!

とある中学校、放課後。
眼鏡の前園と、サイドテールの冬花の二人の女子が一緒に帰ろうとしていました。
そんな時、二人に同時に共通の友人からメールが届きます。
開いてみれば、X人にこれと同じメールを送らないと不幸になるよ、という系のチェーンメール。
他愛のないいたずらなのでしょうが……そのメールの最後には、画像へのリンクが張られていました。
こういうのは大概がビックリする恐怖画像へ繋がっているもの。
前園も冬花も怖い画像に決まってる、怖いのは苦手だというスタンスなのですが、前園は物凄い勢いでその画像へのリンクをクリックしまくるのです!!
画像

こわいの嫌い、と連呼しながらも行われるその行為。
案の定出てきた画像は怖い系ののやつで、案の定前園は怖いと怯えるのでした。

思わず自分でわかってて見たんじゃんと思わず突っ込む冬花。
それに前園はこう答えます。
画像

自分は極度の怖がりにして、極度の怖いもの見たがりなんだ、と。
なにそれとさらにつっこんでいると、二人の男子が前園たちの元へ歩いてきました。
その片方は、例のメールを送ってきた中田と言う男子です。
なぜあんな怖いメールを送ってきたのかと言えば、ある企画の前ふりだったようで。
中学最後の夏だし、肝試しに行かないか、と言う企画の!

なんでも近所に有名な廃墟があるんだとか。
すこし行った所に誰もすんでいない家がボツボツあるのですが、そのうちの一軒が相当やばいと噂されているのです。
はいってい10分しないうちに皆逃げ出すと言うその家、噂ではそこにすんでいた一家が急に失踪したそうで。
一家失踪後のその家には、食べかけの食事が放置されていて……
まるで有名なメアリー・セレスト号の怪談のような話ですが、多感な女子中学生を怯えさせるには十分!
怖いものが嫌いな冬花はもちろん拒否のスタンス。
行かないよね、と前園に確認するのですが……
ええ、前園は極度の怖いもの見たがりです。
そこに怖いものがあるかもしれないことを知ってしまった以上、それの実態を知らないままほうっておくのが恐ろしい。
なんだかわかるようなわからないような理屈ですが、とにかく行くしかないと言い切った前園の推しもあり、一同は4人で廃墟に向かうことになるのでした。

たどり着いた場所は、廃村と言った風情のいかにもな場所でした。
件の廃墟、誰が戦闘ではいるかジャンケンで決めよう、と盛り上がる男子達。
ところがそんな話し合いを一切無視して、前園は1人でずんずん中へとはいっていってしまうのです!
中は荒れ果て、ムードは満天。
寒気も感じ、本物かもしれないと言う雰囲気に包まれる一同の中で前園はガンガン家の中を探っていきます。
入った部屋に何もないことを確認し、次の部屋。
肝試しの妙味を味わわないハイペースに男子からは不満の声も上がりますが、前園は青い顔をしながらこういうのです。
ごめんね、でも私はこわいものがすごくこわいんだ。
画像

気になって気になって気になって、仕方なくて仕方なくて仕方なくて。
このタイミングで見なければ、きっと一生ここを見に来ることはない。
そうするとずっと心にこわいものが残って膨れ上がってしまい、実生活に支障が出るくらい正体のわからないこわさが私を支配してしまう……
そんな調子で一通りこの廃墟を探索した前園。
どうやらこわいものは見つからなかったようで、これで安心していつもの生活に戻れる……
前園がホッと一息ついていると、その安堵の空気を劈く絶叫が聞こえたのです!
その男子達があげた絶叫のもとへと駆けつけると、そこには
画像

一面お札だらけの引き戸があるではないですか!!
あからさまに近づくべきではない異様を感じさせるその扉。
しかもまるで何かがそこから離れるように言っているか、あるいはその逆のことを言っているかのように壁がきしみはじめ、一同の体がずっしりと重くなるような感覚を覚えたのです!!
これは本格的にヤバイ!
そう考えた一同はすぐさまここから逃げ出そうとするのですが、前園は1人
画像

一心不乱にそのお札を剥がしはじめたではないですか!!
止めろと言う冬花の静止も聞かず、前園はその行為を続けます。
この扉の存在を知ってしまった以上、この先にあるものがこわいがどうか確かめないといけない……
流石にそれを一緒に確認してあげるほど、冬花の心は強くありませんでした。
たまらず男子とともに廃墟から飛び出す冬花。
3人が外に出たとき、丁度前園の作業は終わったようです。
件の扉がある2階の部屋の窓から顔をのぞかせている前園。
みんな、何もなかったよ何もなかったよ何もなかったよ、大丈夫大丈夫大丈夫。
そういう彼女ですが、ふっと例の扉側のほうに移動して姿が見えなくなったかと思うと
画像

「とれちゃった」と言う声が聞こえてきて……!!
何が「とれた」のか?気になりますが、それを確認しに戻るのはとてもとても……
3人はもう待てないとばかりにその場を離れるのでした……

翌日以降、前園は学校に来なくなりました。
連絡も取れません。
それがあの廃墟に、「とれちゃった」ことに関係あるのは恐らく間違いないでしょう。
前園は何が「とれちゃった」のか?
冬花は気になって仕方がありません。
気になって気になって気になって、仕方ない仕方ない仕方ない……

というわけで、ホラー漫画顔負けの恐怖を描くエピソードを収録した今巻。
いわゆる幽霊やらが登場せず、「画の怖さ」にたよらないままこれだけの恐怖を描くのはもはやさすがとしか言い様がありません!!
そんなホラー的恐ろしさが楽しめる本作ですが、メインと言っても過言ではない、心のすれ違いから発生する精神的な恐ろしさもたっぷり収録!!
野球を止めてしまった元エースの幼馴染を激励する少女、自意識過剰な少女がどんどんその過剰さを増していく様子、ころころと表情を変える人間の気持ちが理解できない少女……
様々なアプローチで、読み手の心を圧迫してくるのです!!
さらにそういったマイナスな方向だけでなく、プラスな方向にも攻めてくるのがすごいところ。
挨拶ベタな女性が幼女に挨拶を返すために頑張るお話や、人の話を聞くのが好きな少女が今まで一度も話を聞いたことがないクラスメイトに話を聞いてみるお話など、それはもう心あったまりまくりなお話も用意されています!
読者の肝を冷やしたり、胸を痛めさせたり、かと思えばハートを暖めてくれたりと、飴と鞭を激しく投げつけてくれる作品なのです!!

あの手この手で心を攻める、「空が灰色だから」第2巻は全国書店にて好評発売中です!
可愛らしい絵柄で、えぐいことも素敵なこともやってのける本作。
各エピソード、読んでみるまで味がわからない缶入りドロップのような作品ですよ!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


空が灰色だから 2 (少年チャンピオン・コミックス)
秋田書店
2012-07-06
阿部 共実

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 空が灰色だから 2 (少年チャンピオン・コミックス) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル