gn0
今回紹介いたしますのはこちら。

「家庭教師(ガヴァネス)なずなさん」第1巻 縁山先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。


さて、縁山先生初の少年誌連載、少年向けレーベルでのコミックス観光となる本作。
縁山先生と言えば「める子」シリーズでもおなじみの長台詞で暴走したり常識はずれな行動をとるワイルドなキャラクターに、お約束とシュールを織り交ぜたギャグ(と縦ロール)。
縁山先生初めての土俵で描かれる本作ですが、そのあたりはきっちりとおさえておりまして……!




日本の大体中央に位置する地方都市、戌亥山市。
この町には、日本を裏から支配する大物がいました。
その名は、暦壬戌(こよみじんじゅつ)!
……なのですが、彼がなくなってしまってからもうそれなりの時間が経ってしまいました。
生きていた時には彼を訪ねて街を訪れる様々な人々が訪れていたのですが、さいきっはめっきりとのこと。
いまや彼の暮らしていた屋敷は、窓はひび割れ、門はテープで封鎖され、塀は崩れ……さながら廃墟のようになってしまっています。
が!
この家には今もなお暦家の血脈を受け継ぐ男が暮らしているのです!!
暦家16代当主となるその男……暦甲子太郎は、まだまだ年若い少年。
悪暝高い暦家のろくでもない祖父のろくでもない遺産を受け継いだ彼。
その日も物憂げな表情を浮かべながら、一人浴場で体を洗っていたのです。
そして、ろくでもないものはそれだけではないのが彼の目下の悩み。
その遺産を狙う、ろくでもないものに日々狙われてしまっているのです!!
静かに浴場に入って来たそれは、甲子太郎の背後から肩に手を置いて話しかけてきました。
暦の党首様ともあろう人が、寸鉄帯びず素っ裸の一人きりとは。
どうするつもりですか、今狙われたら……
甲子太郎はすかさず、隠し持ってた拳銃で撃ち殺す!!と振り返りざまに拳銃を突き付けるのです、が!!
背後に立っていたろくでもないものは、思いがけない見た目をしておりました。
gm1
なんだか身長のおっきい、金髪縦ロール、身体には様々な傷が刻まれた美女!
彼女は、ワーオ、ピストル!とおどけて怖がった様子を見せ、それなりの備えはしてますね、と銃を突き付けられながらも余裕の表情を崩しません。
そして、そこは流石の壬戌様のお孫さん、でもですねえ、こんなオモチャで人間強くはなれません!と目にもとまらぬスピードで足で銃(のおもちゃでした!)を蹴りつけて破壊してしまうのです!!
さらに、頼れるのは己の肉体、知恵、己自身だけ!と甲子太郎を三角締めに捕らえたのでした!!

三角締めで意識を失った甲子太郎を椅子に縛り付け、近くの部屋に連れて行ったなずな。
甲子太郎が意識を取り戻すと、そこでようやく彼女がここにやって来た理由などを放し蛾締め真下。
なんでも彼女、甲子太郎を肌で感じて強さを知ろうとしたとのこと。
暦家は、かつての軍閥が作り上げた極秘機関で、その期間が数十年かけて集めたものの管理を壬戌が任されていたのだとか。
それはどれも世に出せばだれかを破滅させ、権力を吹き飛ばしかねない爆弾。
壬戌がなくなった今、それを狙ってどんな輩が乗り込んでくるかわからない……
それを案じた壬戌が、甲子太郎を頼む、と頼んだのがこの謎の金髪縦ロール、蠅声なずな、なんだそうです!!
正直そのお話自体が眉唾以外の何物でもありませんが、なずなはさらにとんでもないことを言いだします。
gm3
自分に甲子太郎を守る気などない、自分の身一つ守れないような男は死んだらいい!
壬戌は偉大な人物で大悪党だった、そんな人物がなくなったら、仕返しと遺産狙いで甲子太郎が襲われる。
そうなったら答えはただ一つ、己の拳で打ち倒す、それが暦家の男、真の戦士!!
その為の術を教えに来たのだ!!
……ですが肝心の、なずなが何者かは何も答えてくれません。
gm2
現住所本籍はなずな個人の安全に差し障るから、経歴は国家安全保障に触れる点があるから、壬戌との関係は個人の名誉にかかわるから、と全て「検閲」とのこと。
ノリノリでいろいろ語ったなずな、その話がひと段落着いた様なので、甲子太郎は彼女にこう声を掛けました。
名前以外何一つわからなかったが、ミステリアスで頼もしい!
では三歩下がって部屋の中央に立ってくれ。
素直になずながそれに応じますと、なんとそこに頑丈そうな檻が落下し、なずなを捕えたのです!!
こうして突然やって来る輩がたくさんいたので、こう言った備えがたくさん屋敷中にしてあるのです。
そもそもこの屋敷が廃墟同然になったのも、そう言った連中がトラックで突っ込んできたり、爆弾を仕掛けたりしてきたから。
ですが甲子太郎からすれば、そう言う輩にはまったく文句がないのです。
確かに財産と力を持った悪党が死ねば、それを狙って煮え湯を飲まされてきた他の悪党がやってくるのは当然、と言えるでしょう。
しかし甲子太郎、なずなのように忠義面をして近づくモノには怒りを禁じえないのです!!
土壇場で逃げた使用人たちもそう、寄ってくる奴ほど信用できない!
自分は一人で生きる!!
甲子太郎はそう言い切るのですが……その後の表情は何ともいえない、寂しげなもので……
あの爺様が残った孫を心配するようなタマか、恨みつらみが檻のように退席した呪われたこの家なんでこっちから捨ててやる、自分はもう行くからお前の探しているものを勝手に探して持っていけ、と家を出て行こうとする甲子太郎……
なずなはそんな甲子太郎に、自分が欲しいのはそんなものではない、甲子太郎の人生が、将来が欲しい!と叫びました。
甲子太郎の無限の可能性を見届けたいと言うなずな。
甲子太郎は無視して家を出て行くのですが、なずなはそんな甲子太郎に、自分の元に戻って来い、あなたのためを思って行っている、戻ってこないと恐ろしい目に遭う、遭わせる!と恐ろしい言葉を投げかけ続けるのでした!!

甲子太郎は何やら荷物をもって、どこかへ向かおうとします。
すると門の前で、その向かおうとした先の連中がやってきました。
極道の蛭谷とその部下です。
蛭谷の「オヤジ」の材料を持っていこうとしたところだ、という甲子太郎ですが……蛭谷はそんな甲子太郎に怒りをぶつけ始めます。
暦のジジイがくたばったからお前に借りを返してもらう、オヤジの女装動画なんて材料で今まで内をこき使ってきた分が済むわけがないだろう、家にあるもの全部出せ!!
そう言って、甲子太郎を脅して全てを奪おうとするのですが……
そこで、なずなが降ってきました!!
蛭谷の車をたたきつぶすと、あんたたちは何だ!とその車を蹴り飛ばしてひっくり返しました!!
そして、極道を侍らせておけば危険に対処できると思っていたのか、こんな有象無象が私よりいいと言うのか、と叫びながら蛭谷以外の極道を全部片づけてしまいます。
が、もちろんそれは勘違いで、蛭谷は今まさに甲子太郎から遺産を脅し取ろうとしていた不届きもの。
そんな不届きものらしく、なずなにはかなわないと踏んだのでしょう。
甲子太郎に銃を突きつけ、なずなに動くなと脅迫を仕掛けるのです!!
ところがなずなは、そこでこんなことを言いだしました。
gm4
私は何もしません!指をくわえてみてるだけです!と……!!
そのあたりの子供なら命を懸けても助ける、でもそれは暦甲子太郎。
自分に託された壬戌の一粒種、暦家の遺産を受け継ぐもの。
ならそれにふさわしい扱いをされるべきでしょう!
指を降り、爪をはがし、ありとあらゆる苦痛でもまだ足りない!
魔王壬戌の罪業因業、全てを受け継ぐものだから……!!
……あまりにも滅茶苦茶すぎるなずなの言い分。
果たしてこの後、甲子太郎はどのように窮地を脱出するのでしょうか!?




というわけで、自称子守(ナーサリー)兼家庭教師(ガヴァネス)、なずなの登場から甲子太郎の日常が一気に色を変えて行く本作。
この後なんだかんだありまして、なずなは結局甲子太郎の屋敷に住みこむことに。
そして、甲子太郎が「何者か」になるのを見届けるためにあれこれと世話を焼く……ような、お節介を焼くような、ろくでもない事をしでかすのです。
そして甲子太郎も、なんだかんだ寂しいところもあったのでしょう、なずなに乗っかってものすごく高い目標を打ち建ててちょっと頑張っていくことになるのです!!

そんなこんなで、なずなの施す帝王学(?)の教育と、遺産を狙ってやって来るちょっと間抜けな悪漢たちの起こす騒動、謎に包まれていた壬戌の遺産の真実に迫る……なんていう要素を織り交ぜた、ドタバタの日常が描かれていくのです!
さらにこのあと新キャラも登場し、さらににぎやかに、さらにめちゃくちゃになっていきまして……
縁山先生ならではの、何とも言えないとぼけた味わいがたっぷり楽しめますよ!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!