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今回紹介いたしますのはこちら。

「極東事変」第2巻 大上明久利先生 

エンターブレインさんのハルタコミックスより刊行です。


さて、すさまじい身体能力と治癒能力を持つ変異体(ヴァリアント)である砕花と、かつて闘神とうたわれた退役軍人、近衛がタッグを組み、テロをもくろむヴァリアントによる兵団「奇兵隊」を殲滅する任務を遂行することになった本作。
砕花はあたりまえの常識すらよく知らない謎の多い人物でしたが、フレあって行くにつれ年相応の少女らしい一面もある人物であることもわかっていきます。
ですがゆっくりと絆を築き上げて行く間もなく、奇兵隊はその牙をむき出しにしていって……!



ある日のことです。
砕花は珍しく机に向かっておりました。
そして頭をぼりぼりと描きながら、何度もペンをもって何かを書こうとするものの、すぐにペンを放り出してしまうのです。
そんな時、砕花を呼ぶ声が聞こえてきました。
その作業に精一杯になってしまっていたためでしょうか、近衛が入ってきていたことに気がつかなかったのです。
慌てて机に拡がっていた書類を隠す砕花ですが、近衛が興味を示さないはずもなく。
珍しいな、お前が机に向かうなんて、隠すようなモン書いてたのか?とにやにやしながら近寄っていき、あっさりとその紙を抜き取ってしまうのです。
で、その紙が何かと言いますと……
普通の報告書でした。
何でこれを恥ずかしがるのか分からない近衛、すなおにどうしてかと尋ねてみるのです。
すると砕花、何やらボソッとつぶやきます。
聞こえなかったのでしょう、近衛がいぶかしげな顔でかたまっていますと、観念した際花はガバッと顔をあげ、
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僕は字が書けないんだよ!!とカミングアウトするのでした!

大笑いしてしまう近衛ですが、砕花からすれば笑い事ではございません。
かなり気にしているらしい砕花に、それなら字を教えてあげようと言うことになりました。
ではまず何を教えるか、となれば、やはり名前からでしょう。
砕花……は砕花ではありますが、それがフルネームではないはず。
本名は何だ、と近衛が尋ねますと、砕花は淀みなくこう答えました。
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サイカ・フローレンス・フォン・ミュラー・ロポコワ・デ・バスケス・イ・ベガ。
……予想外の返答に、あっけにとられてしまう近衛……
煙草に火をつけるために点火していたマッチを消すのも忘れ、火傷してしまう始末です。
とにかくその長い長い名前が砕花のフルネームとのこと。
これでは綴りどころか国籍もわからない、どうしてこんな名前をつけられたんだ……と言いかけたところで、近衛はそもそも砕花の両親について何も知らない事、そして確実に普通ではない事情があるであろう事に気が付きました。
そんな近衛の気持ちに気付いたらしい砕花、自分からこの名前のことについて放し始めます。
満州の実験場にいた事、僕はいろんな名前で呼ばれてたんだよ。
みんな僕の好きだった人たちだ。
満州から逃げる時、皆死んじゃったと思うけどね。
……実験場にいた、ヴァリアントの仲間たちに呼んでもらっていた名前。
この名前にこめられた思いを知った近衛は……名前を書き留めた紙を取り、綴りを調べるために聞き込みに行こう、と砕花を連れ出すのでした!!

まず連れて行ったのは、砕花の育ての親、ともいえる局長でした。
砕花の本名は、局長も知らない、どころかそんな長い名前があること自体初耳のようです。
名前のメモを見ても全く見当もつかず、ともかく自分がわかるのは「砕花」の漢字だけだ、とその漢字を書いて教えてくれるのでした。
……その後砕花を部屋の外に出しまして、近衛は局長に砕花の両親について聞いてみました。
「砕花」という名前を付けたのは局長で、その両親に頼まれた、とのこと。
そしてなんとその両親もヴァリアントで、砕花は「生まれながらのヴァリアント」だと言うのです!
しかもその両親、局長の友人だったそうで……
様々な事情と、様々な苦悩を背負って生まれてきた砕花。
ですが彼女はヴァリアントにとって、希望そのものでもありました。
彼女が数々の線かを潜り抜け、生き抜いてくれている。
それがヴァリアントにとっても、局長にとっても救いとなっているのです……

その後、二人は方々廻って砕花の名前の綴りを調べて行きます。
参謀に聞こうとすれば、彼女の乗っている車に容赦なく轢かれてしまったり、一ノ瀬には女なんだからくだらない傷をこさえるなと怒られたり、といろいろとトラブルもあったのですが、部隊の仲間には教わりつつチョコをもらうなど嬉しいこともありました。
そうやってとうとう名前の全ての綴りを知ることができたのですが……
そこで部隊の仲間の一人が、何の気なしにこんな事を尋ねたのです。
名前がわかったところでお前は何なんだ?
米軍に交じって戦う、国籍も人種も不明な変異体の子供って、よく考えたらおかしいぜ?
その言葉を聞いて……
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砕花は、自分はいったい何者なのか、と悩み始めてしまうのでした。

一人ビルの屋上から、チョコを食べながら町を見下ろす砕花。
そこには様々な人々が行きかい、様々な生活が営まれています。
泣いてしまって、お母さんにあやされる子供の姿を見て、砕花の脳裏にある光景がよみがえります。
それはその時々で砕花を助けてくれた、お父さんやお母さん、そして大好きだった人たちとの思い出で……

近衛の元に戻って来た時、砕花の顔は晴れやかになっていました。
名前がはっきり分かった事、もその原因の一つですが、やはり最大の要因はもう一つ、砕花自身で結論づけることができたあの事。
砕花は、名前がわかってよかったな、という近衛にこう言いました。
あともうひとつ。
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僕は僕だ、って事もね。
みんなから見た僕が僕なんだ。
いろんな人につけてもらったこの名が証拠さ。
晴れやかな表情の砕花を見て、近衛もなんだか安心した様子。
早速書類にサインをしてもらい、突然巻き起こったこの小事件は一件落着となるのでした。
……名前が長すぎて、どうしても名前欄からはみ出してしまう……と言う、オチ付きで!



と言うわけで、砕花の過去と現在を掘り下げるエピソードを収録した今巻。
このお話だけ見ると比較的のんびりした展開となっている……と思ってしまうかもしれませんが、このお話の前後で物語は大きく動いております!!
前半では、近衛の知人であり、いわゆる「死の商人」である男を巡った攻防が収録。
そして後半では、奇兵隊がとうとう大きな動きを見せてきます!!
一気に戦火が広がり、混戦模様となって行く近衛達衛生局VS奇兵隊!!
様々な勢力と、砕花の好きな人たちを巻き込んでしまうこの戦いは、どのように展開し、どのように決着し、どの勢力が笑うことになるのか……!?
この後の展開からも目が離せませんね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!