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今回紹介いたしますのはこちら。

「羊角のマジョロミ」第1巻 阿部洋一先生 

富士見書房さんのドラゴンコミックスエイジより刊行です。


さて、独特の世界感を持つ作品を描き続けてきた阿部先生。
勿論本作でもその味わいは健在なのですが、気になるその内容はと言いますと……?



教室の戸を開けると、そこにいるクラスメイトは全員眠りについていました。
ここもか、とつぶやく少年。
その時少年の手の中の携帯電話が、着信を伝えて震え始めます。
澤田。
電話をかけてきたのは、澤田でした。
すぐに電話を取り、無事だったのかと安否を確認すると……彼女は、屋上に来てくれと言うのです。

あ、来ましたね、先輩。
屋上に行くと、澤田は先輩をにこやかに迎えてくれました。
澤田は特に……頭に羊のそれの様な角が生えていることを除けば……至って元気そうです。
そんな彼女の周りには、羊がたくさんうろついています。
いや、羊がいるのは彼女の周りだけではありません。
学校中に羊がうろうろしているのです。
羊がうろつき、生徒たちはみんな眠りこけている。
そんな状況の中で起きているのは澤田と自分だけ……
さっぱり自体が呑み込めない先輩ですが、澤田はおかしくてたまらないと言った風に笑います。
「羊」と「睡眠」って来たらもう答えそのものじゃないですかぁ。
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世界中に大量発生したこの羊達が、この世の全てのニンゲン達を眠らせちゃったんですよ。
悪戯っぽく笑ってそう言う澤田ですが、いきなりそう言われても素直にそうなんだと受け入れることなどできません。
それならば、と澤田は実演を始めます。
羊が1匹、羊が2匹、ってやつです。
まあちょっと見ててください、と澤田は目の前で、眠りたい時にイメージするアレ、垣根を羊に飛んでもらうやつを披露すると……
10秒も経つ頃には澤田は眠気に抗えないほどに眠くなってしまうではありませんか!
先輩もこれには納得する以外ありません。
これって、マジなやつなのか……?

澤田によりますと、先輩も眠っていたが、特別に魔法を解いて起こしてくれたのだとのこと。
そう言われてみれば、先輩も今日の記憶が「気づいたら昇降口にいた」という部分からしか記憶がないのです。
……そこで先輩は、澤田の言った「魔法」という言葉に引っかかりを感じまして。
その事について尋ねてみますと、澤田はこう答えます。
私ね、願ったんですよ。
私以外のヤツらみんないなくなってしまえばいいって。
そしたらこうなっちゃいました。
私、そう言う力を手に入れたんですよ。
で、まぁ、しばらくは一人を満喫してたんですけど、ちょっと退屈になってきまして。
だから……
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「先輩で遊ぼう」と思って起こしたんです。
……いろいろ聞きたいこともありますが、先輩の口からまず出てきたのは、オレ「で」なのね、というものでした。
澤田は先輩の前にぐっと迫り……
先輩の頬っぺたの両方をぐにっと伸ばしながら言うのです。
先輩「で」でも、先輩「と」でもどっちでも一緒じゃないですか。
だって、先輩は私のおもちゃなんですから。
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そんな聞き捨てならない事を言ったかと思えば、今度は吹き出す澤田。
先輩のほっぺた、ほんとよく伸びますね!
ケラケラと笑う澤田に、しょっちゅう引っ張るからだろ、と涙目になってしまう先輩。
そんな先輩を見て、澤田は……
やっぱり先輩で遊ぶの好きです。
先輩。
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これからふたりきりの最後の地球、楽しく過ごしましょ。


と言うわけで、一味違うディストピア物となっている本作。
そこに最近はやりの弄って来る女子と平凡で気弱な男子の日常ものの要素を加えた作品となっております。
阿部先生と言えば、どんな作品にもどこか退廃的な空気が漂っておりましたが、今回の作品はその味わいがより顕著なものになっているのではないでしょうか。
本作の舞台は二人以外誰も起きている人間がいない世界、というだけではありません。
何故だがこの世界は、モンスター、それも積極的に人を襲ったりはしないちょっとおかしなものがうろついております。
そしてこの世界、学校の外も同じように拡がっているわけですが、なぜか銭湯などの一部施設が利用できるなど、不思議と言うよりも、都合良い部分も多く見受けられまして。
そんな世界の中で、二人は遊ぶことになるのですが……

物語が進んでいくにつれて、徐々に明かされていく二人の過去や関係。
そしてゆっくりと進んでいくと思われていた本作に、今巻の後半で怒涛の展開が押し寄せてきます。
最後のシーンでは、とんでもない言葉が先輩にささやかれ……!!
まさかの急展開を迎える本作、続巻の刊行が早くも待たれます!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!