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今回紹介いたしますのはこちら。

「対ありでした。~お嬢様は格闘ゲームなんてしない~」第1巻 江島絵理先生 

メディアファクトリーさんのMFコミックスフラッパーシリーズより刊行です。


江島先生は14年にヤングマガジンサードにて「少女決戦オルギア」でデビューした漫画家さんです。
その後やわらかスピリッツにて「柚子森さん」を連載するなど、精力的に活動されております。

そんな江島先生の最新作は、まさかのeスポーツもの!
最近は漫画のジャンルの一つとして確立しつつあるeスポーツものですが、「七海の623」「メフィストワルツ」「バトルメサイア」と不思議と第2巻が刊行されない作品が多く、今のところヒットしたと言える作品は「ウメハラ」シリーズくらいではないでしょうか。
江島先生が挑むeスポーツもの、そのタイトル通り「お嬢様」という対極ともいえる要素が加わっていまして……?



お嬢様たちが通う黒美女子学院。
とある事情でお嬢様になろうと言う思いを抱く一般庶民、綾はこの黒美女学院に外部性として入学することができました。
右を向いても左を向いてもお嬢様なこの学院ですが、そんななかでもひときわ目を引く超お嬢様とでも言うべき存在もいました。
「白百合さま」。
彼女が通りがかれば生徒たちからはため息が漏れ、綾が落としてしまったハンカチを白百合さまが拾ってくれたりなんかすれば歓声が上がってしまうほど。
そう言ったお嬢様の価値観は今ひとつわからないながら、綾も彼女の存在感が頭抜けていることはわかります。
しかも驚くことに、白百合さまも綾と同じ、外部から入学してきた外部生。
未だ庶民の息から脱することのできない綾は、白百合さまを見て……私もお嬢さまオーラを全身に纏いたい!と、うらやましがるのでした。

全寮制である黒美女子では4時限目の授業が終わると一度学校を出て、寮の食堂で昼食を取ります。
出遅れてしまった綾は、座る席を探していました。
すると同じクラスの女子たちが、一緒に座らないかと声をかけてくれまして。
渡りに船とばかりにその席に着く綾なのですが……ここでも彼女の庶民ぶりが発揮されてしまいました。
寮で出るご飯は、「映え」そうなおしゃれ感の強い料理ばかり。
最初の頃こそテンションが上がっていましたが、入学して毎日のようにこう言うごはんばかりでは流石に食傷気味。
げんなりしていたところにクラスメイトのお嬢様から、ご家庭ではどんなものを食べていらしたの?と質問を投げかけられまして……
迷った挙句、綾の口から出た言葉は……とんこつ味の袋ラーメンだったのでした……

クラスメイトのお嬢様がたは、そんなとんでもない綾の発言も優しくフォローしてくれました。
それがまた綾にとっては余計辛く感じられまして、あこがれの「お嬢様」ははるか遠くにあることを思い知らされてしまうのです。
お嬢様になると言うのは想像よりもずっとキツイ。
そんなことを考えながら、人気のない特別教室蓮を歩いている綾。
すると、ほとんどだれも近寄らないであろう史料室から何やらこの学校には似つかわしくない、奇妙な音が聞こえてくるのです。
その身妙な音が何なのか、綾は確かめずにはいられませんでした。
そっと教室のドアに手をかけ、開いてみますと……そこには、白百合さまが一人で
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アーケードコントローラーを叩いているではありませんか!!
絢に見られてしまっていることに全く気が付かない白百合さま、どうやら格闘ゲームのネット対戦をしている様子。
真剣な表情で相手の動きを見切り、ギリギリのところで攻撃を避け、その隙に強烈なコンボを叩き込んで大逆転勝利!!
そして白百合さまは
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女子たちみんなが憧れるあの姿からは想像もつかない、雄たけびをあげるのでした!!
ついでに対戦相手に聞こえるはずのない、物凄い勢いの煽り文句付きで……
と、そこで白百合さまは綾に気が付きました。
すると白百合さま、目に大粒の涙をあふれさせまして、お願い、先生に言わないで、後生ですから、と綾に懇願してきます。
立て続けに巻き起こった信じられない出来事にあっけにとられた綾、たどたどしい言葉で、あの、大丈夫、誰にも言わないから、とその場を離れることしかできなかったのでした。

その後、ことあるごとに白百合さまは綾のことを見つめるようになります。
この学校ではゲームの持ち込みが厳しく禁止されておりまして、持ち込みが発覚すれば退学もあるのだとか。
それを警戒して、あのことを誰かに言わないか監視している……と言うのとも少し違うような。
なんにせよ、皆のアイドル的な存在である白百合さまの視線を受け続けている綾、綾まで学校中の皆に注視されるようになってしまいます。
このまま注目され続けるのも疲れますし、白百合さまとお近づきになっている人だからと、憧れやら嫉妬綾らの余計な感情を向けられてしまいかねません。
綾は意を決し、再び人気のない史料室に向かいまして、そこであの日のように格闘ゲームにいそしんでいた白百合さまに直接、最近の視線の意味を問いただすことにしたのですが……
白百合さまは綾と二人きりになりますと、いきなり綾を壁ドンしてきました!!
そっちのけはないはずの綾ですが、間近にとんでもない美形の少女の顔がありますと、なぜかドキドキしてしまいます。
謎の覚悟を決めた綾、唇を尖らせ、目をじっと閉じるのですが……
白百合さまが見ていたのは、綾の顔ではありませんでした。
綾の、右手です。
綾の右手の指にいくつかある、微かなタコ。
それを指し、白百合さまは言うのです。
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これ、アケコンだこですよね?
それにあの、昨日呟いてましたよね。
「π4」って。
……白百合さまのプレイしていたゲームを見て、いや、実際には向きの関係で画面は見えなかったのですが……その音で、綾はそのゲームが人気格闘ゲームの4作目、「IronSenpai4」であることに気付いていました。
そして意識しないうちに、そのタイトルの略称「π4」と呟いてしまっていたのです。
画面を見ずに、π4だとわかる。
ということは、間違いなく……綾も、格闘ゲームのプレイヤー、でしょう。
白百合さまは、興奮のあまり思い切り舌を噛んでしまいながらも、綾に迫るのです!
あなた、格ゲーマーですよね!!
そのすさまじい剣幕に気圧され放題の綾、そう、ですけど……と辛うじて答えます。
それを聞いた白百合さま、目を輝かせて、じゃあ私と対戦しましょう、と持ち掛けるのですが、その言葉を言い終える前に綾は申し出を断るのです!
綾の言い分はこうです。
お嬢様は、格闘ゲームを本格的にプレイなどしない。
上級者向けのコンボなどしませんし、攻撃がヒットしたことを確認して次の技につないだりもしませんし、敵の様々な攻撃に対応するための複雑な入力による防御テクニックもしません。
綾はかつて、格闘ゲームに凄まじい情熱を燃やしておりました。
ですがあることをきっかけに、格闘ゲームへの情熱が消えて行ってしまったのです。
気付けばただネット対戦でポイントを増やしていくだけの作業になっていた。
何があんなに楽しかったのか、あの頃の様に夢中になれるものはもう見つからないのか。
そう考えると綾はどんどん怖くなってしまい、せめて環境を変えてみようと奮起し、お嬢様学校にやって来たのです。
お嬢様になるためには、格闘ゲームから足を洗わなければならない。
綾はそんな決意をしたわけですが……
その思いを正直に明かした綾に対して、白百合さまから帰ってきた言葉はこうでした。
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まあなんかよくわかんないですけど、対戦しましょう。
対戦したいから。
キモい氏意味わかんない自分が足りを聞いてあげたんだから対戦して下さいよ!
対戦しろ!!!
なんだかよくわからない白百合さまのとんでもないテンションにあてられた綾は……
なんだかよくわからないまま、白百合さまの中に、自分の中に見出せなくなっていた「キラッキラ」の何かを見出してしまいました。
そして、もしかしたら、対戦することによって自分の瞳にもそのキラッッキラがうつるのではないかと思い……
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対戦を始めてしまうのでした!!



と言うわけで、お嬢様と格闘ゲームを描いていく本作。
この後いよいよ、綾VS白百合さまの対戦が幕を開けることとなります!
二人がプレイするゲームは架空の格闘ゲーム「π4」なわけですが、モデルとなっているのはおそらく「ストリートファイター4」シリーズ。
本作では今までのeスポーツもの、それも格闘ゲームを取り扱ったものの中でも最高クラスに専門用語が飛び交うマニアックな内容になっておりまして、格闘ゲームを知らない方でも楽しめる……とはちょっと言いづらい感じの作風です。
ですがそれは逆に言いますと、格闘ゲームがお好きな方ならば一層ハマれると言う事!!
格闘ゲームの対戦において重要な技術の応酬、そしてそれ以上に重要かもしれない「心を折る」ための戦いと、格闘ゲームプレイヤーならばにやりとしてしまう要素が満載なのです!!

キャラ萌えや百合要素、ギャグ成分ももちろんあるにはあるのですが、とにかく本作は「格闘ゲームとそれに情熱を注ぐプレイヤー」と言うポイントに注力されております。
お嬢様とそれを目指しているはずの庶民が、気が付けばなりふり構わず勝利の雄たけびをあげる……
そんなシーンに惹かれるものを感じるならば、本作を読まない手はありませんよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!