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今回紹介いたしますのはこちら。

「衛府の七忍」第9巻 山口貴由先生 

秋田書店さんのチャンピオンREDコミックスより刊行です。


さて、徳川幕府と、幕府に強い恨みを持つ怨心忍者たちを巡る死闘を描いていく本作。
ある者は怨心忍者として復讐の産声を上げ、あるものは幕府の側に立つ武人たちに討ち果たされ……
その激しい戦いは、様々な地へと伝播。
次なる舞台は、真田信之が治める、信州は上田城……!!



徳川側についた信之の前に現れた、真田十勇士。
ですが彼らは主君である幸村の仇討ちに来たわけではない、愛弟子である黒須京馬に討たれたいのだ、とその身を投げ出してきたのです!
京馬は彼らの想いをすべて悟り、忍法「淤能碁呂(おのごろ)」を放ったのでした。

凄まじい旋風が過ぎ去った後、真田十勇士の姿は忽然と消え失せていました。
その中央に残っていたのは、
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もぎ取られた体の肉片だけ。
そしてその肉片は、全てが京馬のものでした。
それをみて信之はこう断じます。
京馬は十勇士に忍法勝負を挑んだものの、術及ばず返り討ちにあったのだ、と。
京馬は信之のすぐそばに置かれるほどの手練れ。
その手練れをもってしても、このような無残な姿にされてしまうとは……と家臣たちは真田十勇士の実力に戦慄せざるを得ません。
討伐隊を出そうという家臣もいたのですが。十勇士の足は韋駄天、もはや城下にはおるまい、と信之は下がろうとするのです。
が、そこで異を唱えるものが突然姿を現します。
ここで行われたるは殺し合いにあらず、まぐわいと見破りたり。
真田忍者たちはここで新たな命を生み落とせり。
人に非ざる能力を持つ異形、「鬼」と申すもの。
あまりに突然姿を現したその男。
信之は何を無茶苦茶なことを言っているのだ、と家臣に処刑を命じます!!
信之の家臣たちはすぐさま男を排除しようとするのですが……
どうしたことか、三方から突いた槍が、その男の周囲に近づくと……
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まるで重く固い泥沼に槍を突いたかのように、槍がのろのろとしか進まなくなってしまったのです!!
男はゆっくりと抜刀し、槍の穂先を切り落とします。
すると槍を構えていた家臣たちは一様に、力強く抑えていたものが突如放されたかのようにふっとんでしまうではありませんか!
驚くのはそれだけではありません。
男の周囲には、切り落とした槍の穂先が、未だゆっくりと宙を待っているのです!!
我が間合いの内でどろりと「時」は淀む。
常よりもそろりそろりと進むなり。
そう語ったところでようやく、男は名乗りました。
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妖怪退治をもっぱらとする「鬼哭隊」の一人、上泉信綱だ、と。
上泉信綱と言えば、室町時代の剣豪の筈。
生きているはずなどないのですが……時が淀むせいであろうか、なかなかに死なせてもらえぬ、と語る信綱の言葉からは信じざるを得ない力を感じます。
……では、信綱の言うように真田十勇士は、そして京馬は死んではいないのでしょうか……?

風吹きすさぶ街の中、4人が歩いていました。
猿飛佐助、霧隠才蔵、筧十蔵、穴山小助。
先の戦いで消え去った十勇士の面々です。
やはりあの「おのごろ」は、殺し合いの術ではありませんでした。
佐助は奥歯を、才蔵は髪を、十蔵は腕に仕込んだ得物を、小助は両耳を、京馬に分け与え、その術も授けたのです!!
体を分け与え、術を分け与える、それこそが「淤能碁呂」の真の能力!!
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十勇士はその全てを京馬に分け与え、最強の忍者に作り替えたのです!!
……が、その術にも欠点はあります。
それぞれの体の一部を受け取った京馬の体は、ツギハギの体。
そのツギハギがなじみ、「おのごろ」が成るまではまともに動くこともかなわないのです。
そんな自由の利かない体の筈の京馬が、四人の前に姿を現します。
とはいってもそれは、思念を飛ばす忍術の一つ。
その忍術すらまともに使うことはできない状態の筈ですが……
京馬は力を振り絞り、四人に伝えるのです。
覇府の追手、信綱。
退却せよ……
……上泉信綱の武勇は十勇士もよく知っています。
その実力はもちろん、智勇も轟く信綱……
もし京馬が見つかれば、その命はないでしょう。
そんな自分の危険も顧みず、十勇士に逃げろと伝えてくるとは……
4人の気持ちが相談せずとも決まっていました。
戻るぞ、京馬を守るのだ!!
踵を返し駆けだす四人……
そこに、既に幕府の刺客がやってきていました。
蟹、蜂、臼、牛糞をイメージさせる異形の刺客。
「猿」飛佐助としても黙ってはいられない相手に、四人は怯みもせず飛びかかり……!!



と言うわけで、雷鬼編が本格的に幕を開ける今巻。
今巻はこの、雷鬼となった京馬と十勇士VS信綱と幕府の犬どもの戦いがメインとなっています。
今までの怨心忍者VS武人の戦いでは、人知を超えた能力を持つ怨心忍者に、卓越した技術と武装で挑む、という形が主でした。
ですが今回は、武人側も人知を超えた能力を持っているというイレギュラーな戦いとなっています。
また怨心忍者側も、最初からとんでもない忍術を使えるだけに、今回の戦いは今まで以上に激しくなる予感……!!
時を淀ませる無双の剣豪、上泉信綱。
真田十勇士の力を受け継いだ最後の真田忍者、黒須京馬。
果たして最後に立っているのはどちらなのか?
それとも強すぎる力は両者ともに滅ぼしてしまうのか……?
今巻も山口先生節が冴えわたり、血潮と臓物が乱れ飛ぶ内容となっている本作。
表紙からもいよいよ最終章に突入していくニオイも漂ってまいりました!!
これから先、ますます目が離せませんね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!