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今回紹介いたしますのはこちら。

「皆殺しのアーサー」第3巻 古閑裕一郎先生 

講談社さんのヤンマガKCより刊行です。


さて、難攻不落のグロスタシア城への侵攻に参加することになったモルドレッド。
落城までのタイムリミットが迫る中、モルドレッドはグロスタシアを統治する兄弟の弟、バルドゥルフスの片目をえぐり、敗走に追い込んだものの、その首を取ることはできず……?



手痛い傷を負ったバルドゥルフスは、グロスタシア場内へと逃げ込んでいきました。
場内にはこれで、兄であるコルグリヌス軍に加え、生き残ったバルドゥルフス軍がそろうことになり、ただでさえ困難な城攻めが一層難しいものになってしまいました。
二人は生死を共にすると誓い合う程の中のよい兄弟で、二人のコンビネーションで攻撃を仕掛けられれば厄介なことになるのは間違いないでしょう。
そんな戦況を分析しているランスロット達なのですが、その状況を見て気づくことがあったようです。
バルドゥルフスが逃げ込んだのは、「包囲されている」グロスタシア城です。
兄のコルグリヌスも、それを迎え入れました。
何より大事な弟の命を助けたかったのはわかりますが、冷静に考えれば包囲された城の中に招き入れるなど、死を待つだけではないでしょうか。
ということは……グロスタシアの兄弟には、この包囲された状況を打開する策がある、ということなのでしょうか……!?

その予想は的中していました。
グロスタシアの兄弟は、一通の文を確認しています。
バルドゥルフスが持ち帰っていたその文は、サクソンの大国を収めるセルディック王の援軍を報せるものでした。
今から10日後……
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ここへ3000の援軍がやってくる!
そう、彼らはあと10日間、籠城して白を守り抜けばいいのです。
セルディック王の率いる大群と、このグロスタシアの兵で包囲網を逆に挟撃し、一挙に叩き潰す……!!
グロスタシアの兄弟は、余裕の表情でその時を待つのです。

ランスロットの陣に辿り着いたモルドレッドは、いきなり客人が来ている、とランスロットに連れていかれました。
満足に説明もされないまま向かった先には、先ほどの戦いで犠牲になった馬の肉を食卓に並べ、貪っている肥満体の男が待っていました。
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彼はグリフレット卿。
円卓の騎士団の正騎士の一人です。
グリフレットはモルドレッドを呼びつけておきながら、食事が終わるまで黙って待て、どこぞの青二才のせいで犠牲になった馬を食って弔ってやっているのだから、と理不尽に銘じてきます。
かと思えば突然、モルドレッドを睨みつけながら、どう責任を取るつもりだ、と因縁をつけてくるのです。
いきなり責任を言われても、何のことだかわかりません。
グリフレットは戸惑うモルドレッドを蹴り飛ばし、とんでもないことを言い出すのです。
とぼけるなよクソ無能が。
優秀な軍師である私の策が、わが軍を勝利に導くはずだったのに、たった一人の無能のせいですべて台無し。
平野馬も無駄に失われたのだぞ。
ランスロット卿、このグリフレットがあなた方に要求いたします。
失われた兵と馬、保証してもらいたい。

グリフレットは、ガウェインとともに城をせめてバルドゥルフスをおびき出し、精鋭を差し向けてとらえ、その命と引き換えに城を明け渡せと要求する作戦だったといいます。
それがすべてモルドレッドによって台無しになったというのですが、そんな作戦など知るはずもありませんし、そもそもそううまく事が進むとも思えません。
グリフレットはモルドレッドの言い分など何も聞かず、無能とののしり続けるばかり。
ランスロットもさすがに黙ってはいられず、円卓の騎士は互いの戦いに干渉しない、という関係なのだから、この戦の指名を受けた我らに文句を言われる筋合いはないというのですが、こちらもグリフレットは聞く耳を持ちません。
君と議論したいわけじゃない、こっちは大損害が出ているんだ。
邪魔されたせいで被った損害を鑑みて、馬百頭と金貨二百枚を要求する。
そう自分勝手に、あまりにも多すぎる賠償を要求してくるのです!
普通ならばそんな不当な要求ははねのけて当然でしょう。
ですが……このグリフレット、アーサー王の親書をもっていました!
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この親書を以て、アーサー王の「勅命」であるといわれてしまえば、王の部下である円卓の騎士が逆らうことはできず……
逃げ場のない状況に追い込まれてしあったランスロット、相変わらず抜け目ないな、と漏らすのですが、グリフレットはそれすらも堪えていない様子。
そうです、私はいつもこうして甘い汁を吸う。
そこの無能のように国のためなどと嘘を言ったりはしません。
これも正々堂々たる棋士の戦い方だ、そうでしょう?
そう言ってほくそえみ、そして再び賠償を迫るグリフレット。
どうあれ償ってもらいましょう、失われた命の代わりになるものは金だけです。
……ランスロットはにやりと笑い、こう答えました。
なるほど、それについては同意見だ。
命は金で償えばいい。
ならば逆もしかり。
今我らには馬と金を差し出す余裕はない。
かといってアーサー王の代理人足るグリフレット卿を無視することもできぬ。
すまんなモルドレッド。
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隊のために死んでくれ。
馬と金の代わりに、そなたの命で償おう。




というわけで、まさかの事態に陥ってしまう今巻。
大将首は取れなかったとはいえ、強敵を相手に互角以上の戦いをして見せたモルドレッドでしたが、待っていたのはまさかの死の宣告。
グリフレットの悪辣な要求も問題ですが、ここにきてモルドレッドを切り捨てるようなランスロットの発言はどういうことなのでしょうか。
冷徹なランスロットだけに、モルドレッドを切り捨てることで危機を脱することができるのならばそうすることもあるのでしょうが、それにしてもあまりに簡単に切り捨ててしまいすぎの様な気もします。
何か策を講じていることは間違いないでしょうが、だからと言ってモルドレッドの命が保証されているかといえば決してそんなことはありません。
モルドレッドはこのままスケープゴートにされてしまうのでしょうか?
ランスロットの策によって助かるのか、それとも自らの手で生きる道を手繰り寄せるのか?
この後物語は更なる予想外の展開を迎え、グロスタシア城侵攻は思いもしない戦いへ!
怒りをたぎらせるモルドレッドの戦いも、その熱量はとどまることを知らず、血生臭い激戦はやむことなく続いていくのです!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!