yi0
今回紹介いたしますのはこちら。

「THE KING OF FANTASY 八神庵の異世界無双 月を見るたび思い出せ!」第1巻 漫画・蒼木雅彦先生 原作・天河信彦先生 

KADOKAWAさんのHuコミックスより刊行です。


天河先生は04年に「Archaic Chain -アルカイック・チェイン-」で漫画原作者として活躍され、その後「大正野球娘。」などのアニメの脚本家として、さらに「バレットガールズ ファンタジア」などのゲームのシナリオを手掛けるなど、様々なジャンルで活躍されている作家さんです。

本作はそんな天河先生が19年に発表したライトノベル「八神庵の異世界無双」を原作として、「プリマックス」作画担当などで知られる蒼木先生作画による漫画作品にしたものです。
そのタイトル通り、本作は格闘ゲーム「キングオブファイターズ」シリーズの人気キャラ、八神庵を主人公にした、異世界転生もの……という、一捻りも二捻りもされた作品です。
KOFファンならば気になること間違いなしの本作、その内容はと言いますと……?



王歴2679年公紀202年、9月17日……月蝕。
月蝕は魔の者が活性化すると言われています。
そうでなければ……公国の騎士たるアルテナがここまでゴブリン如きに苦戦するはずがないのです。
彼女の周りをぐるりと取り囲むゴブリンの群れ。
供にやって来た部下の兵士たち12名は、全滅してしまっています。
これもすべて、わざわざ月蝕の日に魔法使いの帯同なしで遠征させるような、無謀な任務に挑んだせいです。
ですがアルテナは公国の騎士。
いかなる任務でも拒否するわけにはいきません。
そして……このまま犬死にするわけにもいかないのです!
せめて兵たちと同じ数だけ道連れにする!!
アルテナは最期の特攻を仕掛けるのです!!
…………と、その瞬間でした。
月蝕が進み、月の全てを覆い隠したのですが……
瞬間、突如地面にから何かが吹き出し、そこに魔法陣が現れたのです!
まさか新たな敵の召喚!?
絶望がよぎるアルテナですが、そこから姿を現したのはモンスターではありませんでした。
赤い髪の人間……
yi1
八神庵その人です!!
突然目の前に人間が現れたことで、アルテナもゴブリンも一瞬戸惑い、動きを止めました。
が、そこで本能で動いている分ためでしょうか、ゴブリンの方が先に動き、庵に襲い掛かったのです!!
事情は完全に飲みこめてはいないのですが、とにかく民に危害を加えさせるわけにはいかない、と慌ててゴブリンたちを迎え討とうと少し遅れて駆けだすアルテナ!
そのど真ん中に頬りだされる形になっている庵もさすがに戸惑うのですが……そこは流石の庵でした!
ゴブリンたちが自分に襲い掛かってくることに気付くと、すかさず
yi2
百八式・闇払いで迎撃!!
生き残ったゴブリンたちがなおも跳びかかってくると、それも百式・鬼焼きで根こそぎ焼き尽くしてしまうのでした!
アルテナは自分の目を疑います。
目の前に突然現れた彼は、詠唱もなしに炎魔法を、それも紫の炎と言う従来ありえないものを操ったうえ、アルテナたちが太刀打ちできないほど力の高まったゴブリンを一撃で葬ったのですから無理もありません。
庵の方に駆け寄り、何者なのかを尋ねようとしたところ、庵はアルテナをにらみつけてきます!!
震えるほど残忍な光を湛える紅い瞳……
ですがそれは、憎しみや怒りがこもっているわけではありませんでした。
庵はものすごい負傷を負っていて、その痛みに耐えていたようなのです。
庵がばたりと倒れ、意識を失ったのは……ちょうど、月蝕が終わったその時だったのです。

西暦1997年、9月17日。
八神庵は、宿命のライバルである草薙京と、「三種の神器」の宿命を持つ者同士である神楽ちづるとともに、「オロチ」と対峙していました。
オロチは地球意思と呼ばれる超自然的な存在で、環境破壊を行う人類を悪として滅ぼさんとしていました。
オロチを封じる三種の神器の一人にして、オロチの眷属でもある庵は、オロチによってその力を暴走させられてしまいます。
ですが庵はそのプライドで、暴走に抵抗!
オロチにその力を向け、拘束して見せたのです!!
これはオロチを封じる最大のチャンス。
庵もまた、ある種の覚悟はできていたのでしょう。
京は庵もろとも、オロチにを祓う最終決戦奥義を放ち……
yi3
庵はそのまま、その命を失った……

かと思われたのですが、そこで伊織はこの世界に飛ばされてきたようなのです。
京都の決着をつけないまま死ぬわけにはいかない。
そんな思いと、オロチや京、庵自身の力がぶつかったことでこの奇跡が起こったのでしょう。
目覚めた庵は、最初はここがいわゆる「あの世」だと思っていたようですが……
アルテナに話を聞いて徐々に事態を飲みこみ始めます。
ここは「エサーガ公国」。
庵の負傷は、アルテナが持っていた最後の「ポーション」で回復したようです。
さらにあのゴブリンの存在……
庵はここが異世界であると言うことも受け入れます。
事態が呑み込めると、今度は庵……自分自身に苛立ち始めたようで。
どうやら庵、アルテナが最後のポーションを自分のためではなく、倒れた自分に使わせてしまったことが我慢ならないようなのです。
そして庵は、アルテナに近くの町まで案内するように命令。
これはおそらく、軽くない負傷を負ってしまっているアルテナを一人にしないように気遣ってのことのようで。
アルテナも命を救われているわけですし、断る理由もなく。
「公都シエサーガ」に今回の件を報告しに戻るから、そこに向かおうと言うことになるのです。
……が。
アルテナはその前に、庵に知っておいてほしいことがある、と言いだしました。
それはこの世界に伝わる予言。
その内容は、こんなものでした。
月輪蝕まれたる時、磨なる王、炎とともに生まれ来たり。
……それはまるで、
yi4
庵が魔王だとでも言うようではありませんか!
もちろん命を救われたアルテナは、庵が魔王などとは露ほども思っていないのですが……
庵の現れたシチュエーションを知ったものがどう思うかはわからないのです。
庵はといいますと、くだらない予言に興味はないし、そもそも転移を見たのはアルテナだけだからアルテナが黙っていれば問題がない、と冷静に判断。
逆にアルテナは目の前のことで頭がいっぱいになるタイプの面倒臭い女だ、と扱き下ろしてきてしまうのでした!
とはいえ庵もアルテナにある程度の感謝はしているようです。
町まで案内勝と歩きだしたアルテナがよろめくと、すかさず肩を貸してやるのでした。




と言うわけで、まさかの異世界転生を果たしった八神庵の戦いを描いていく本作。
この後異世界転生の基本を抑えながらも、庵というキャラクターならではの物語運びをしていくのです!
原作のゲームではあまり想像できない所ですが、本作の庵はなかなかどうして常識人でして。
まぁ原作でも京や庵に明確な敵意を向けてくる相手以外には、口は悪いものの本気で酷いことはしていなかった気がしますが、それでも何か気に入らない事があれば襲い掛かってくるようなイメージを抱いている方も多かったのではないでしょうか。
ですが本作は異世界だけに、庵がブチ切れる対象である京やオロチ関係者は不在。
その為、庵の本当の(?)人となりが、異世界で初めて明かされるのです!!
ブチ切れていない冷静な戦いや判断をする庵、ツンデレ的優しさを見せてくれる庵、ちょっと悪だくみをして黄金を手に入れる庵……数々の原作では見られない部分が見られます!
そして原作での彼のプロフィールを知る方ならば、ツッコミどころでしかないと思われていた「嫌いなもの・暴力」。
庵が暴力を嫌いだと言っていた理由が明かされるなど、原作の補完的な部分まで用意されているのです!!

そして原作ファン向けのサービス要素として、原作の他キャラクターと似た容姿を持つキャラが多数登場しているのも本作の特徴。
ヒロインであるアルテナはほとんどアテナですし、KOFのキャラで最もやられやくが似合うあの二人も登場。
さらにKOFでは1作にしか登場していない、それなのにSNKの格闘ゲーム史では最古の部類のキャラであるあんなキャラまで出てくるなど、ファン必見のチョイスがされております!!

異世界転生的楽しさ、KOFシリーズのスピンオフとしての楽しさ、そして蒼木先生らしいキュートなキャラクターなどなど、様々な要素が楽しめる本作。
原作小説とともに、今後の展開が楽しみですね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!