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今回紹介いたしますのはこちら。

「前科者」第5巻 原作・香川まさひと先生 作画・月島冬二先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。



さて、保護司としての仕事に打ち込み続ける阿川。
そんな彼女の下に、傷害事件で少年院に入り、現在は仮退院の少年、安吾がやってきます。
彼は阿川にストレートに行為をぶつけてきまして、阿川もそんな彼に惹かれつつあり……?



揺れ動く阿川ですが、いつもならばいの一番に相談するであろうみどりに、素直に相談できなくなってしまいました。
それはいつものように新聞を配って歩いていた時の事。
朝刊を配っていた朝早くに、みどりはある男性とホテルから出てきたのです。
それが阿川の知らない男性と出会ったらまだよかったでしょう。
ですがその男性、知らない男性どころか……
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なんと、阿川の父親だったのです!
思わず隠れて様子をうかがってしまう阿川。
何で私が隠れなきゃいけないのよ、と思いながらも、そのまま様子を見てしまう阿川。
するとみどりは、阿川の父と腕を組みながら楽しそうに話し……ついでに、たまたま見つけた100円玉を拾うなどしながら、どこかへ消えて行ってしまうのでした。

大切な友人と、仲がいいとは言い難いながらも、実の父親が関係を持っていたと言う衝撃的な事実を目撃してしまった阿川のショックは察するに余りあります。
実際新聞は配り忘れが出てしまいましたし、コンビニのバイトもぼーっとしてしまい、帰らなければいけない時間をオーバーしてしまったのです。
保護観察官の高松さんとの会話の時でも気もそぞろ。
高松さんが気を紛らわそうとしたのか、10円が落ちているのを見かけて、ふたりで5円ずつ山分けにしましょう、と冗談を言ってみても、落ちているお金を勝手にとるのは窃盗果遺失物横領罪に当たるからいらない、と強く反発してしまうなど、どうしても精神が安定しないようです。

その夜、阿川はファミレスでみどりと会っていました。
彼女から電話がかかってきまして、いつものように会うことになったのですが……
やはり阿川の顔は厳しい表情のまま。
みどりの手を見つめながら、こう問いかけるのです。
100円拾ったその手、私が想像してるようなことはしてないですよね?
険しい顔で投げかけられたその質問に、みどりは当たり前のように答えました。
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ああ、見てたのか、想像って何?
セックスなら普通にやっちゃったけど。
あっけらかんと出てきた、想像を裏付ける言葉に戸惑う阿川ですが……
当人同士が愛し合っているのならば仕方がない、という思いもあったのでしょう。
ぐっと言いたいことを我慢して、結婚するんですか?と声を絞り出すと、みどりはこれまた当然のように、するわけねえじゃん、と答えました。
結婚をする気もない相手と関係を持つ、というのは阿川にとっては到底受け入れられるものではなかったようです。
ファミレスの中であるにもかかわらず、阿川は思わず声を荒げて、じゃあどうしてセックスしたんです!と叫んでしまい……

みどりからの提案で、二人は場所を変えて話を続けることになりました。
静かな夜の海を見ながら、会話を再開する二人。
みどりは相変わらず、いつものノリで会話を続けようとするのですが、阿川の剣幕もまた変わりません。
みどりからすると、阿川が何故そこまで起こるのかがわからない様子。
「したいからした」だけなのにどうしてそんなに怒るのか理解できないのです。
だったらこれからも刹那的にするのか、と問い詰めて行く阿川。
刹那的という言葉はピンと来ないみどりですが、そういた生き方云々の前に、もう阿川の父とはしない。と言いました。
「あまりよくなかった」からだそうです。
女を喜ばすのに命かけてます、というのがどうしても苦手だと言う。みどり。
軽率にするから悪いんだと咎める阿川なのですが、それだってしなければわからなかったし、そもそも「抱きたい」「抱かれたい」という気持ちは間違ってなかった、と反論するのです。
男と女は考えていてはダメなんだ、頭ではなく体、熟考ではなく直感なんだ。
阿川はそんなだから一回で終わるんだ、と返してみるものの、一回ではなく二回した、祖言う思いがけない方以降からの緑の言葉を聞いて、またぎょっとしてしまいます。
そんなの聞きたくない、と耳を塞ぐ阿川を、考えるの好きな佳代ちゃんが直感で否定してる笑うみどり。
ですがその後すぐ、真剣な顔になり、たとえ話を始めるのです。
たとえ話していい?
付き合ってた男と別れたとして、その男の新しい彼女が自分よりダメ女でも悲しいし、自分よりもイイ女でも悲しいだろ?
その上さらに、男は振られちまった。
……どう考えてもそれは、阿川の父親の事弐しか思えません。
父は私の男じゃない、とせめてもの抵抗をする阿川なのですが……みどりはそこではっきり「男」の存在を感じとります。
もしかして、今度の前科者って若い男?
しかも恋が生まれちゃってる?そこからこの会話が来てんの?
そこでみどりが慌てて違うと否定しようとしてきたところを、再びみどりは抑えます。
即答したな、次の発言を許さないよう。
自分の行動や思考をすべて読まれてしまった阿川は、何も言えなくなってしまい……
すると緑、今度は阿川が何の本を読んでいるのか、と強引に彼女のバックの中身をチェックします。
出てきたのは……「潮騒」。
若い漁師と海女が数々の苦難を乗り越えて結ばれる恋愛小説です。
わかりやすい、と大笑いしたみどり、作中のワンシーンを再現して台詞を諳んじて見せました。
さあ佳代、その火を飛び越して来い!
そんなごっこ遊びにも顔を赤くして、やめてくださいと言う阿川に対し、みどりはさらに続けました。
「潮騒」ってふんどしだよな、さすが佳代ちゃん、重度のふんどしマニア!
創造してみろよ、そいつのふんどし姿を。
……そう言われた阿川、思わず想像してしまいました。
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隙間風の吹く小屋の中、たき火をはさんで下着姿で向かい合う阿川と、安吾。
安吾は阿川に、その火を飛び越して来い、と力強く語り……
想像しているうちに、様々な問題が思い当たってしまったのでしょうか。
暗く沈みこんでしまう阿川を見て……みどりは何も言えなくなってしまいました。
ごめん、もう言わない。
そう呟いて阿川の隣に座ると、夜の海を見ながらつぶやくのでした。
海はいいねえ。理屈じゃなく、いい。

翌日。
新聞を配達し、コンビニのバイトを行い、家に帰る途中の坂道を歩いていた阿川は、ふと視界に入った海に目を奪われてしまいました。
ずっと見つめていますと、そこに安吾がやってきます。
いいよね、海。
海がある町に住んでるやつは得だよ。反対に海のない街に住んでるやつは損だ、そう思わない?
四方を山に囲まれた場所って、犯罪率高いんじゃない?
そんな安吾の持論に、港町も荒っぽいイメージがありますけど、と返す阿川。
すると安吾、あぁ、漁師とか?と何気ない反応を返しました。
本当に単純な連想で出てきたであろう「漁師」の言葉ですが、昨夜のみどりとの「潮騒」の話がちらついてしまう阿川は、ちょっと口ごもってしまいます。
安吾はその妙な反応に気付くと……
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そっと、阿川を抱き寄せて……!!!


と言うわけで、まさかの(?)ラブロマンスが始まってしまう今巻。
みどりと阿川の父親の愛田にもひと悶着あったこのシリーズですが、メインとなるのは阿川と安吾の物語となります。
このようにとにかく行為を隠さずに押し出してくる安吾ですが、きっとこれほど自分への行為をどんどん押し出してくる人に会ったことがなかったのでしょう。
阿川はどうしようもないほどに安吾に惹かれて行ってしまうのです。
ですが二人の関係に立ちはだかる関門は少なくありません。
年の差が小さくはない事、安吾がまだ未成年である事、前科者である事……
そして何よりも問題なのが、阿川が保護司であることです。
保護司が観察対象と恋愛関係になる。
それは保護司全体の信用にもかかわってくる問題で、いくら二人が本当に心から愛しあっていようとも、周りが黙っているわけがない……どうしても付きまとってくる大きな問題なのです。
揺れ動く阿川は、どんな選択をするのでしょうか。
熟考か直感か、頭か体か、世間か感情か。
完全とまではいきませんが、一端の決着を見る安吾編、阿川の選択は……!?

そして今巻の最後には新たなシリーズへ突入。
前科者ではないながら、阿川がどうしても気になってしまう人物が登場するのですが……
今までとは違う立場の新キャラクターの登場は、一体この後の物語にどんな影響を及ぼすのか?
これから先の展開も、見逃せませんね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!