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今回紹介いたしますのはこちら。

「数字であそぼ。」第4巻 絹田村子先生 

小学館さんのフラワーコミックスより刊行です。


さて、数学という名の迷宮にすっぽりとはまり、様々な困難に苛まれることになってしまった横辺。
念願の進級は果たしたものの、数学専攻という更なるいばらの道(?)へと足を踏み入れることになるのでした。



とある暑い日のこと。
家での勉強にも(いつもどおり?)息詰まってしまった横辺は、気分転換にお昼がてら外に出ることにしました。
河岸を変えたら何かひらめかないものかなぁと頭を悩ませながら歩いていますと、前方への注意がおろそかになってしまったようで。
女性と、といいますか、女性の持っていた日傘に突っ込んでしまうのでした。

その日傘の先端は見事に横辺の鼻に直撃いたしまして、鼻血を出してしまう結果に。
日傘を差していた彼女、瑠衣子は……
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思わず横辺が幻かと思うほどの美人。
彼女は鼻血を出してしまった横辺を大層心配してくれまして、お詫びがてらカフェに誘ってきました。
日傘で鼻を突くなんてとんでもないことをしてしまって申し訳ない、と平謝りの瑠衣子に、横辺はこの熱さじゃ誰だってぼんやりしますよ、俺だってそうですし、とフォロー。
そうしますと瑠衣子、実は約束をすっぽかされて、しょんぼりして歩いていたんだとあかしました。
男性の気持ちが理解できなかったみたい、とぼそりとつぶやく彼女。
横辺はそんな彼女の話を聞きまして、瑠衣子のような綺麗な人が待ちぼうけなんて、そんな狼藉を働いていいのはアラブの石油王くらいだろう、などと考えていたのですが……
そこで瑠衣子、横辺の持っていた本に興味を示します。
「多様体の基礎」。
普通の人ならばあまり縁のなさそうなその本を見た彼女、お仕事で使われるんですか、と尋ねてきまして……
そこから自分は大学生で、という話になり、そして嘘の付けない性格である横辺は、今に至るまでの事情を話さずにはいられなくなってしまい……
せっかく美女とお近づきになることができた横辺ですが、自分の身の上を話せばドン引きされてしまうであろうことはわかっています。
さよなら俺の夏の恋、などと考えながら説明を終える横辺なのですが、意外や意外。
瑠衣子はそって横辺の手に触れると、こんなことを言ってくるのです。
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あなたはとても立派よ、2年も苦しみ抜き、自力で這い上がった。
そしてまた新たな困難に立ち向かおうとしているわ、あなたは勇気ある人、卑下することなんてないの!
思いもよらない優しさに満ち溢れる言葉。
感動のあまり涙を流してしまう横辺ですが、今までの人生で彼はさんざん自分の身の程を思い知らされてきました。
こんな人がそばにいてくれたら。
いや、それは高望みというもの。
でもせめて今だけは……そしてこの思い出を糧に生きて行こう。
ところが、なんということでしょう。
そんな横辺の悲壮な決意とは裏腹に、瑠衣子はこんなことを言い出すのです。
私たち、このまま他人で終わるなんてもったいない、そう思わない?

そして二人は、鴨川等間隔の法則(暖かくなると鴨川の川岸にカップルがなぜか等間隔に座る法則」に則って小一時間語り合いました。
すっかり打ち解けた二人……いや、横辺は相変わらずテレテレのガチガチなのですが……瑠衣子は、横辺に敬語はやめて、とふざけてボディタッチしてくるなど、だいぶ親しい感じになってきました。
彼女はピラティスに行くからと席を立つのですが、別れ際に勉強の手伝いは自分にはできないから、せめてこれくらい、とサプリを渡して去って行きます。
また連絡する、と言い残して……!

その日の勉強は、なぜだかメチャクチャはかどりました。
瑠衣子のサプリを飲んだおかげか、あるいは出会いによって気分転換になったからなのか。
このサプリはすごいものなんじゃないか、などと考える横辺でしたが、そんな時タイミングよく瑠衣子から電話がかかってきました。
横辺とは初めて会った気がしない、運命の様なものを感じる。
もっと横辺のことを知りたいし、自分のことを知ってもらいたい。
なんだかとても耳障りのいい言葉を並べてくれる瑠衣子に、一層テレテレになる横辺。
瑠衣子はそんな横辺を、今度の土曜日、お呼ばれしている知り合いのホームパーティーに行かないか、と誘ってくるのです。

あなたの友達にもお会いしたい、と言われた横辺、慌てて一緒に行ってくれる友人を探し始めます。
まず最初に頼りたい北方は、どうやら家に彼の妹さんが来ているようで手が離せなそうです。
女性陣には声をかけるべきではない気がしますし……
白羽の矢が立ったのは、猫田でした。
いろいろ人格的に問題があるような気もしますが、背に腹は代えられません。
くれぐれも自分のポンコツぶりを話さないでくれ、と言い含めまして、二人はホームパーティーに向かうのです。
……なんだか一連の話を聞いた猫田が、含み笑いをしているのが気になりますが……

会場はなんだかすごいタワーマンションの一室でした。
あからさまに場違いな感じのする豪華なパーティーに気後れし放題な横辺ですが、瑠衣子の存在も会って何とか正気を保つことができました。
ここは横辺とはまるで対極の様な、皆が明るく前向きで、夢と希望に満ち溢れたようなキラキラした空間。
横辺にも優しく接してくれますし、夢のような時間を過ごすことができました。
と、そんなとき、瑠衣子が突然この後時間あるかな、お茶しに行かない?と横辺を誘ってきます!!
ドキドキイベントがやって来たか、と緊張を強める横辺なのですが、なぜかそこに目庫田が現れ、自分も一緒にいいかと尋ねてくるのです。
今まで大人しくしていた猫田が、ここに来て突然砕氷船のようなことを!?
びっくりする横辺なのですが、瑠衣子はなぜかウェルカムの様子。
いいの!?と心の中でツッコむ横辺の想いをよそに、場所を移してお茶することになったのでした。

いざそこに行きますと、なんかもう一人よくわからない男性が増えてます。
知り合いを介して人となりを知ろうとする瑠衣子さんなりの作戦なんだ!といい方にいい方に考えようとする横辺なのですが……
そこで、とうとう始まってしまうのです。
瑠衣子がまず取り出したのはこの間横辺に渡したサプリでした。
これは集中力を高める植物由来の成分が云々で、値段が1万円する。
でも、会員になれば安く変えて、さらにお金が稼げる……!
……ここまで来ても横辺にはピンと来ないようです。
買うのにお金が入るってどういうこと?と尋ねますと、今度は瑠衣子、一枚の評を取り出しました。
その表は会員のランクと、そのランクに応じてポイントのボーナス率があがる事を表しているようです。
会員になると会員価格で商品が買えて、それを他の人に低下で売ると差額が収入になる。
さらに自分の紹介で誰かを会員にすると、その人数に応じてボーナスが入る……
絵に描いた様なマルチ商法です。
流石の横辺もここまでくるとわかったようですが、あまりにいろいろあり過ぎたせいか、なぜマルチ商法が行けないのかがわからなくなってしまっていました。
自分が誰かを誘わなくても、ただ買うだけなら瑠衣子との関係も続けられるのではないか?
そんなことを思わず考えてしまう横辺なのですが……
ここで、猫田の出番です。
横辺の口を遮った猫田、まず会員と売上高を瑠衣子の隣の男性に尋ねます。
会員は10万人ほど、売上高は125億。
それを聞くと猫田、早速はじめました。
儲かっている人はごく一部と言うわけですね。
月に5万の収入を得ようと思ったら、自分のグループで月100万円のポイントを稼ぐ必要がある。
売り上げと人数を見るに、一人頭月1万ポイント、つまり100人分集めないと月5万円にはならない。
連鎖的に勧誘し続けないといけないビジネスですが、このサプリを欲しい人が無限に居続けることはあり得ない。
勧誘できなくなる日はいつでしょうね?
このビジネスの問題点はね、会員が指数関数的に増えないと儲け話にならないから、ライバルも指数関数的に増えるし、商品を求める市場に対しても会員数があっという間にオーバーしてしまう事なんです。
月5万稼ぐには100人のダウンが必要ですが、その100人も100人のダウンを必要としている。
この時点でだぶりを考慮しても5000人。
5000人も下に100人必要だから25万人、次は1250万人、さて次は?
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……6億人。
月5万ですらあっという間に破たんする。
皆が上手く行った場合すぐに日本の人口すら超えるのに、周りに会員が見当たらないからまだ遅くない、などと言う理由で手を出していいものかどうか……
そもそもサプリに1万円って高くない?それだけ価値のある商品だったなら普通に販売して売れるじゃん。
だけど会員数10万円、売上高125億ってことは、ほとんど会員しか買ってないんだよ。
125億の売り上げで10万人も販売員を抱えるバカな会社などない。
当然普通はもうからないけど、会員へのボーナスのために価格は高くしないといけない。
通常の流通経路で販売すればはるかに安く売れるはずだ。
つまり、会員が負担して成立するビジネスであって、その負担をごく一部の会員が吸い上げて設けるビジネスモデルである。
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それでもごく一部が儲かるのは確か。
だから横辺くん、すごく自身が会って他人の犠牲を気にしないのならやればいい。

こうして横辺の、束の間の夢の時は終わりました。
横辺は、途中から気づいてたからついてきてくれたんだろ、迷惑かけたな、と猫田に謝罪するのですが……
猫田はいつもの、いかにも悪だくみをしていますと言った表情で言うのです。
は?電話くれた時からわかってたよそんなもの。
一回行ってみたかったんだー。
ホントにパーティーってやるんだって感心したよ。
……そう。
猫田は最初からすべてわかったうえで、最初から最後まで自分が楽しむために来ていたのでした……!



と言うわけで、数学の知識を交えながら、マルチ商法を打ち破るエピソードを収録した今巻。
猫田はたっぷり楽しんだようですが、横辺にとってはマルチに誘われるわ、淡い恋も元々なかったことを思い知らされるわと相当悲しいエピソードとなっております!
この他にも、いつも通りの数学の壁にぶつかりながらも、何のかんのドタバタしながら乗り越えて行ったり乗り越えられなかったりするお話が収録されております。
大家さんのお姉さんの「いけず」に翻弄されるお話、横辺が異次元(?)に迷い込むお話、紹介したエピソードにもちらっと出てきた北方の妹がメインとなるお話、一同で心霊スポットに向かうお話など、盛りだくさん!!
絹田先生らしい肩の力の抜けたギャグに、しっかりとした数学の蘊蓄が混ざった独特の味わいがたっぷりと楽しめるのです!!

さらに今回は番外編が2編も収録。
こちらは一同が不思議なアイテムで精神が入れ替わってしまう、いかにも番外編的なお話に加え、「分数の割り算」と言う、算数の最初の関門を取り上げるお話と、ちょっと本編とは違った楽しみ方の出来る内容となっております!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!