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今回紹介いたしますのはこちら。

「レイナ」 楠本哲先生 

少年画報社さんのYKコミックスより刊行です。


さて、「エリカ」以降、サイコスリラー的なサスペンスをメインに描いている楠本先生。
本作もその類の作品とでして、「エリカ」の流れを汲む女性ストーカー系のお話となっております。
気になるその内容はと言いますと……?



会社員、西野健一は会社に通いながら、運転免許証を取得するため教習所に通っていました。
ですが西野が良く指導を受ける教官の男性はちょっと気難しい人物のようで、何かと西野のちょっとしたミスを指摘し、指導の完了を示すハンコを押し渋るのです。
その日もブレーキが荒っぽいと文句をつけられてハンコはお預け。
今日ハンコをもらえていたら、来週第一段階の修了検定だったのに……と不満げな表情を浮かべる西野なのでした。
と、そこで教習所のロビーで強襲カードが落ちていることに気が付きました。
「羽月玲奈」。
アイドルみたいな名前だな、などと考えながら顔写真の方も確認してみますと、その名前のイメージそのままの可愛らしい顔がうつっていました。
そうしておりますと、今度はカウンターで、カードを無くした、再発行は有料になるし時間がかかる、という会話をしている人物がいることに気が付きました。
多分このカードの人物だろう、と西野はその人物の下にカードを届けに行きますと、やはりその人物はカードの持ち主、羽月玲奈でした。
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これで今日の教習も受けられる、とマスク越しでも笑顔とわかる表情でカードを受け取り、お礼を言ってくる彼女。
マスク姿ではありますが、実物も超絶可愛いじゃん!と、西野は思わず鼻の下を伸ばしてしまうのでした。

翌日。
西野は今日も釈然としない思いを抱いておりました。
教習所の教官もそうなのですが、この会社の方にも何かと西野にいちゃもんをつけたり、余計な仕事を押し付けてきたりする人物がいるのです。
その相手は直属の上司である課長でして……いわれのないいじめと言うわけでもない以上、面と向かって文句を言うわけにもいかず、西野は嫌な思いを必死に噛み殺して課長の持ってきた仕事に打ち込むのです。
そんな課長の困った性格は、同僚たちみんな手を焼いています。
西野の同僚で親友でもある塚本も、教習所に通っているのに仕事を押し付けられるなどの嫌がらせを受けて大変だなと同情してくれるのですが……
西野は今、教習所に行くのがそれほど嫌ではなくなっていました。
……そう、玲奈の存在です!
超俺好みの子とで会えたんだ、と下心丸出しの表情を浮かべる西野!
ですが西野が教習所に行くそもそもの理由を知る塚本に、彼女のために車買おうってやつが何言ってんだよ、突っ込みを受けるのでした。

その日は残業で教習所に行けずじまいだった西野。
帰り道ではいつもなぜか西野に吠えてくる犬にやっぱりほえたてられ、またまた気分を悪くして家に帰りつきました。
そんな彼の目下の癒しは……玲奈です。
翌日時間を作って教習所に行くと、彼女は積極的に西野に話しかけてきまして、隣に座って一緒に抗議を受けることになりました。
しかも次回の教習所の帰りに飲む約束まで取り付けまして……
メッセージアプリの友達登録も完了、楽しく会話をするなど、トントン拍子に話が進んでしまうのです!!
こう言ったよくない関係ながら、楽しいことはどうしても話したくなってしまう物。
西野は塚本に昼食がてら一連のお話をしますと、俺はチクるような野暮な真似はしないけど、恋人の美雪ちゃんにばれないように楽しめよ、と忠告してくるのでした。

その日も犬にほえられながら家に帰りますと、自宅ではその恋人、美雪が待っていました。
会う約束だった週末まで待てないから来ちゃった、と舌を出す彼女。
愛情のこもった手料理をふるまってくれまして、自分のために教習所に通ってくれている労をねぎらってくれました。
その手料理に舌鼓を打ちながら、西野は早くも後悔し始めます。
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こう言う家庭的なところが美雪の魅力だよな。
超カワイイ、と言うわけじゃないけど、美雪といると落ち着く。
こんな良い子を裏切ろうとしてたなんて、男ってバカだな。
そう言って、玲奈との関係を経とうとするのです。
そんな落ち着く夕食を楽しんでいる間に、玲奈からのメッセージの通知が届いていました。
美雪には塚本からのメッセージだろう、と適当にはぐらかし、玲奈には心の中で今は美雪との時間だからごめん、と謝ってスルーすることにした西野。
そして美雪との時間を楽しんだ後、美雪が眠りについたのを見計らってからメッセージの確認をするのですが……
何と礼奈からのメッセージが、50件以上入っているではありませんか!!
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どうしたの、なんで無視するの、嫌いになったの?
寂しい、早く返事して、何で既読がつかないの?
そんなメッセージが繰り返し届いているのを見ると、流石に異様さを感じてしまう西野。
驚き戸惑っておりますと、そこに玲奈からの電話がかかってくるのです。
このまま放置しておくわけにもいきいません。
外に出て彼女からの電話に出ますと、ようやく既読がついたから電話をした、という玲奈。
いろいろあってメッセージが見れなかったと答えますと、気にしないで、電話に出てくれたからうれしい、心配してた、と彼女はメッセージとは違う落ち着いたテンションで話してくるのです。
西野はと言いますと……あのメッセージの異様さ、そして先ほどの美雪への想いの再確認を経て、冷静さを取り戻していた西野は、ここでしっかりと言うべきことを言おうと決意。
隠して龍守じゃないけど、実は俺には彼女がいて……と、ハッキリ打ち明けるのです。
すると返ってきたのは、こんな言葉でした。
知ってたよ。
あっ、知ってたっていうか、西野さんくらいステキな人に彼女がいても当然だよって意味。
玲奈ね、西野さんに彼女がいても全然大丈夫だから。
……彼女がいるのを承知のうえで、自分に好意を寄せ続けてくれる。
もともと玲奈が好みに直撃だったこともあり……彼女の言葉を聞いた西野ははっきりと決別を伝えることができなくなってしまうのでした。
…………その後玲奈が、電話で通じないように、こう続けていた事を知らずに。
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玲奈が彼女以上の存在になってあげるから。
……そして、玲奈が……まだ知り合ったばかりで、住所などを教えてすらいない、自分の自宅のすぐ近くにやって来ていて、西野の姿を見つめていたことも知らずに……!!



と言うわけで、「エリカ」に続く女性名シリーズ(?)第2弾となる本作。
「エリカ」では、主役(?)のエリカはものすごいフィジカルを持ったパワー系ストーカーでしたが、本作のレイナはまた違ったタイプのストーカー。
この紹介した第一話では、まだまだ片鱗しか見せていないエリカの恐ろしさ。
現状では伺いようもありませんが、この後彼女の恐ろしさは加速度的に増加していきます!!
彼女の凶悪さはあまりにもすさまじく、本作における犠牲者の数は「エリカ」の比ではないのです!!
果たして彼女はどのような手段で、西野を狙っていくのか?
彼女の餌食となるのは誰で、生き残る者は誰なのか……?
戦慄の惨劇が幕を開けるのです……!!

本作でも楠本先生作品でおなじみの残酷な描写に、容赦ない事件が連続。
さらに「エリカ」でもキーとなっていた「におい」の要素も一つのアクセントとして取り入れられておりまして、こちらも(これからも続いて行くなら)女性名シリーズに欠かせないポイントになって行くのかもしれません!!
「どす黒い」という表現がふさわしい楠本先生の描くサイコスリラー、本作も存分にお楽しみください!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!