dm0
今回紹介いたしますのはこちら。

「ダンジョン飯」第9巻 九井諒子先生 

エンターブレインさんのハルタコミックスより刊行です。


さて、ライオスたちがダンジョンの最深部へと到達しつつある本作。
不確定ではあるものの、ファリンを助ける手段にもアタリが付き、一同には希望が見え始めたようにも思えます。
ですが今だ狂乱の魔術師の脅威は大きく、対抗する為に欠かせない「有翼の獅子」もどこにいるかわかりません。
さらに洞窟を破壊するためのエルフの部隊、カナリアも動き始め、物語はどんどんと後には引けない様相となっていくのでした。



ダンジョンの浅層に狂乱の魔術師とファリンを呼び出し、一気に勝負を決めてしまうところまで来ていたカナリア。
ですがその時、同行していたカブルーの中にある疑問が浮かびました。
このままこんな形で、このダンジョンが終わってしまっていいのか、という。
そこにはカブルーが今までであって来たどんな人物とも違うパーソナリティーを持ったライオスの存在が多分に影響を及ぼしていたわけですが、ともかくカナリアたちにすべてを任すことには納得ができないと言う結論に至り……
蛮勇ともとれる行動を起こし、カブルーはカナリアの隊長であるミスルンと……そして、狂乱の魔術師とともにダンジョンの地下深くへと落ちてしまうのでした。

目を覚ましたカブルーは、まず一緒に落ちてきたはずのミスルンを探します。
とりあえず視界の中にはいない事を確認すると、今度は自分の状況を確かめることにしました。
かなりの距離を落下したのに怪我はない、なぜか足に歩き茸が刺さっている……?
今一つ状況を理解しきれないでいると……そこにミスルンが現れます。
一瞬の油断の内に自分の近くに姿を現したミスルン。
今自分が持っている武器は短剣だけ、攻撃をされたら勝ち目は薄い……
一瞬で状況を分析し、冷や汗を垂らすカブルー。
ですがミスルンは、カブルーが思いもしない行動をとり始めました。
狂乱の魔術師は別の場所に落ちたようだ、移動するぞ。
そう言って、ついてこいとばかりに踵を返して歩き始めたのです!

まるで今までの出来事などなかったかのように、平然と歩いているミスルン。
カブルーはいつものように分析を始めます。
なぜ自分を活かしておくのか、なぜ自分を同行させるのか?
何が狙いかはわからないが好都合、カナリア隊による迷宮攻略を妨害し、迷宮の謎を明かす!
カナリア隊隊長ミスルン、どんな人物なのか、取り入るすきを探るんだ……!
……ですがどうしたことでしょうか、カブルーの凄まじい洞察力と、様々な知識をもってしても、ミスルンの人となりがわからない……と言うよりも、その人となりに興味がわかないのです。
頭でも打ったか、などと考えていますと、突然立ち止まったミスルンにぶつかってしまいました。
何事かと尋ねようとすると、ミスルンは静かにしろとジェスチャーをして、物陰に隠れて前方に注意を促します。
そこにいたのは……ライオスたちを苦しめた魔物、シェイプシフターでした。
まだこちらに気付いていないから先手を打つ、と言ってミスルンは地面を探るものの……石なんかの手近な武器が見つかりません。
ミスルンは少し考えると、カブルーにタッチして
dm1
突然転移させたのです!
しかもシェイプシフターの目の前に!!
本来はシェイプシフターの頭上か、あるいはその体の中に転移させようとしたのでしょう。
カブルーはいきなり自分を投擲武器にしようとしたことに憤慨するのですが、もちろんそれどころではありません!
いきなり目の前に人間が現れたしエイプシフターは驚き戸惑うものの、そこは魔物。
すぐに警戒心を取り戻し、得意の「記憶を読み取って作り出す偽物」を発生させます!!
……が。
対象をよく観察するカブルーの記憶から生まれたミスルンは本当の本当に瓜二つなのですが、ミスルンの記憶から生み出されたカブルーは
dm2
なんだか作画が適当です。
つまりこれは、ミスルンがカブルーに何の興味を持っていない、という事。
興味を持っていないと言うことは敵意を持っているわけでもなく、カブルーがミスルンを必要以上に警戒する必要もないことになるわけです。
すっかり肩の力が抜けたカブルー、ミスルンとともに狂乱の魔術師を探すことを素直に受け入れるのですが……
ふと気になった、シェイプシフターの食べ残しを探ってみたところ、そこにカナリアの連絡用の妖精がいることに気が付きました。
すでに半分喰われてしまっていまして、虫の息です。
それでも何とかまだ通信は可能なようで、ミスルンは早速カナリア隊と連絡を取ることにするのでした。

カナリア隊はミスルンがどこかわからないダンジョンの奥深くにいること、そしてカブルーが一緒にいることにいろいろ露困惑していたようですが、彼らの中にも合理的に物事を考えるものがいるようで。
自分たちが救助に向かうまでは1週間くらいかかる、それまでの間ミスルンの身の回りの世話をしてくれたら、今回カブルーがしでかしたアレコレを見ずに流してもいい、と持ち掛けてきたのです。
特に「1日3回の食事」をしっかり食べさせてくれ。
……カブルーの仲間たちを人質に取っている、というようなニュアンスの脅し文句もつけてきましたので、彼はもうその提案に従うしかないのですが……
ちょっと待ってください。
このダンジョンの奥地に投げ出された状態で、三食の食事を与える……?
それはつまり、
dm3
ライオスのようにモンスターを食べるしか、ない……!?
ライオスのようになるのは本当の本当に嫌ですが、そんな嫌なことでもやらなければならないなら、平静を装い、涼しい顔をしてこなして見せるのがカブルーの凄いところ。
とりあえず今回は、ライオスたちも食べたと言っていた歩き茸(足に刺さっていたアレ)を、ミスルンの蘇生術を頼りに毒見を行ったうえで食べてしのぐことができました。
が、これだけでずっと乗り切ることなどできませんから、どうしても今後はやらなければならない時もくるでしょう……
暗雲が立ち込めまくる二人の旅路ですが、始まってそうそうカブルーはミスルンの奇妙なところに気付き始めます。
何故カナリアはミスルンの身の回りの世話をさせようとしているのか。
何故ミスルンには、普通ならばおかしい奇妙な点がいくつもあるのか……
その理由は……ミスルン本人から聞いてみれば、思ったよりも素直に聞き出すことができたのです。
ミスルンは、その衝撃的な過去を語り始めます。
dm4
私はかつて、迷宮の主だった。
……そんな衝撃的な言葉を、皮切りに……



と言うわけで、思いがけないタッグでのダンジョン飯が始まる今巻。
ライオスのライバル的な立ち位置かタオ思われていたカブルーですが、ここに来て第2の主人公としての存在感が出てきました!
容赦なくダンジョンを制圧しようとしているカナリアと、そんな迷宮の謎を独占しようとしているエルフたちに苛立ちを抱いているカブルー。
相容れない二者かと思われていましたが、どうもミスルンだけは他のカナリアのメンバーと事情が違うようで……?
ミスルンの口から語られる、「迷宮」の裏にある驚くべき闇。
それは狂乱の魔術師の支配しているこのダンジョンにも存在している、と考えたほうが間違いないでしょう。
ではこのダンジョンの「闇」をもたらしているのは何なのか……?
ミスルンの口から語られる真実は、ある意味でシンプルな物語だったはずの本作を、一気に混沌とさせていくのです!!

そんなカブルーたちのエピソードの前には、ライオスたちの物語もしっかりと収録。
有翼の獅子の下を目指す冒険の中で、今まで通り苦戦しながら魔物を倒し、そして食べて行くわけですが、それだけではないお話も注目です!
ライオスとマルシルの出会いが語られたり、今までふわふわとしていたライオスの目標が見えてきたりと、クライマックスに向けての様々な展開が描かれるのです!!
ライオス、カブルー、カナリア隊、狂乱の魔術師、有翼の獅子。
様々なもの体の思惑が入り組み、謎が明らかになるにつれて疑惑も持ち上がってくる本作、ますます目の離せない内容になっております!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!