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今回紹介いたしますのはこちら。

「無敵の人」第3巻 きづきあきら先生+サトウナンキ先生 

双葉社さんのアクションコミックスより刊行です。


さて、何も失うものがないがゆえに何をしでかすかわからない、「無敵の人」を排除する役目を負っていたいのりとニル。
ところがそんなある時、ターゲットを支持する役割を持つAT,シューニャが突然本来ありうるはずのない人物を指定してきて……!?



それは突然起こりました。
シューニャシステムを作り、管理していたはずの嘉門が、突如ターゲットとして指名されたのです。
その指令を受けて嘉門を始末しに行ったいのりたちですが、さすが管理者だけあって嘉門はそう簡単に始末されはしません。
いのりたちの凶刃を受け流すと、逆に自分たちと手を組まないかと持ち掛けたのです。

シューニャシステムを嘉門たちから取り上げ、ターゲットに指定したのは……
嘉門の父親であり、様々な問題のあるこのシステムを実用化しようと目論んでいる官房長官、北大路でした。
嘉門も北大路の性格をよくわかっており、自分たちが彼にとって不要になったから切ろうとしたのだろう、と冷静に分析。
そして……シューニャシステムにそっくりな「シロウサギシステム」を立ち上げ、いのりたちのようなシューニャによって命令され、無敵の人を排除する役割を持つ「守護者」達に新たな指令を送ったのです。
それは……北大路の殺害!!
今までは、何も持たず追い詰められていたがゆえに、凶行に及んでしまう無敵の人だけが対象とされてきたシューニャシステム。
今回は、無敵の人なんかではないと言うことが最初からわかっている、政府の要人がターゲット……!!
当然、いのりたちも驚きためらうのですが、そのためらっている間に更なるターゲットの指定が行われます。
それは……北大路の殺害はできないと拒否した、いのりたちとは別の「守護者」でした!!
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北大路の殺害を拒めば、こうして殺される側に指定されてしまう……!
しかもシロウサギは、北大路かこの元守護者、どちらを殺すか守護者に選択できるようにしています。
たいていの者なら、排除するのが簡単な元守護者を選ぶことでしょう。
つまり、北大路の排除を拒否すれば、ほぼ間違いなく自分たちにも守護者が襲い掛かってくる、という事になるわけです……!
逃げ場を奪われたいのりは……選択をします。
彼女が選んだターゲットは……自分たちに人殺しの道を選ばせた……北大路、でした……!!

いのりとニルは、電車で北大路がいると指定された場所に向かいます。
官房長官を暗殺する、なんてめちゃくちゃなことをするのに電車を使うなんて、とミスマッチな状況に笑ってしまういのり。
ですが、この先のことを考えるとどうしてもその笑顔は陰ってしまいます。
そこでいのりは、ニルに暗殺をやめることを提案します。
逃げるか、あるいは暗殺する計画を練るふりをして周囲をうろついてほかの守護者が殺してくれるのを待つか、と。
ですがニルは、以前の相棒が同じことをしようとしたが、自分たちの行動を監視しているシューニャに目論見がばれて殺されてしまった、シロウサギでも同じだろう、と無慈悲な現実を突きつけるのです。
さらに言えば、二人はもう「人殺し」。
どのみちもう戻れない、とも……
うすうすわかってはいたことですが、やはりいのりにその現実は重かったようです。
絶望的な表情を浮かべ……そして、全て諦めたかのように笑顔を浮かべ、天井を見ながらこう漏らしました。
一回でいいから「普通」になってみたかったな。
安心して眠れる家があって、大切に思ってくれる家族がいて、学校行って、友達がいて。
つまらなくて退屈な、繰り返しの毎日。
そんなの、夢みたい……
ニルはそんないのりの夢にすら、シビアな言葉で返してきました。
そんなの「国民」の普通だろ。
あの北大路とかいうオッサンにとっては、俺たちは「国民」じゃないからいない方がいいらしい、だからシューニャを作って殺し合わせてるんだろ。
……その言葉は、いのりの中で決めかねていた最後の覚悟を決めさせる鍵となったようです。
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そっか、じゃあ、わるいひとですね。
いらない人間を助けてくれなくて、まあちゅんを殺した。
私にとっての、わるいひとです。

北大路は自分がこう言った裏切りに会うことも想定していたようです。
しっかりと準備をしていて、無謀な突貫をかけてくるものを次々に拘束。
そして自分はほとぼりが冷めるまで、「入院」と言うことにしようと病院に向かっていました。
さらに掌握したシューニャを使い、嘉門をターゲットとして再び指定しました。
殺さない選択肢を選んだものもターゲットにする、というルールもつけて。
シロウサギの方も依然北大路をターゲットにして、裏切者もターゲットにすると言う指令は出し続けています。
これはつまり、全守護者にシューニャにつくか、シロウサギにつくかの選択が強いられていると言う事。
シューニャにつけば、任務に従う限り犯罪者扱いは去れない、という今まで通りの特権が与えられます。
ですがシロウサギにつけば、延々と任務を強いられるシューニャの呪縛から逃れることができるでしょう。
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どちらを選ぶべきか……
どちらを選ぶにしろ、守護者同士の殺し合いは免れないでしょう。
いのりはその事実に焦りを感じながらも……やはりこの歪な状況を生み出した元凶である、北大路の殺害を選ぶのです。
が、そこでニルはいのりにこう言いました。
シューニャを敵に回すなら、もともとシューニャに組まされていた俺たちはもうチームじゃない。
一緒にいる必要はもうない、いのりがシロウサギ、俺がシューニャを選んだ場合は……

今から敵になる。
……そうです。
ニルがニューニャを選ぶ可能性だってある、というyことを、いのりはこの時点では考えていなかったのです。
いのりは……目を見開いて戸惑ったあと……ぽつりぽつりと、こんなことを語り始めます。
私は、自分のことをずっと、息をしてるだけのただの「塊」だと思っていました。
生きながら死んでいて、死の時を待っていたのかもしれない。
あの日、あなたが来るまでは。
あの日、一度私は死にました。
そしてまあちゅんに殺されそうになったニルさんを手当てしている時、気付いたんです。
私は「私のため」だけに生きられない。
生きている動機がないから。
私の「生きる口実」になってくれませんか、ニルさん。
あなたを守るために生きていいって、言ってくれませんか、ニルさん。
……失うものがないから、「無敵の人」だったはずの二人。
いのりが感じている、ニルの感じている今の子の気持ちが、強さなのか弱さなのか、それはわかりません。
ですがいのりには、諦め以外の気持ちで前に進むために……口実が必要なのです。
……怖いから。
いのりは、震える手を差し伸べました。
ニルは……
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好きにしろ。
そう言って、彼女の手を取るのでした……





と言うわけで、クライマックスを迎える本作。
無敵の人による無敵の人狩りが行われるはずだったシューニャシステムですが、やはりダーティなシステムであるだけに、関わっているものの思惑によってその形は大きく歪んでしまいます。
管理者だった嘉門、全ての元凶だった北大路。
どちらも決して正義と言うことはできない二者の対立に翻弄されるものの、いのりは自らの石で北大路を排除することを選びました。
そして、彼女の気持ちに、ニルも応えてくれたわけです。
最後の任務に挑むことになる二人。
ですが北大路殺害に向かうその場には、味方だけがいるわけではありません。
シューニャ側についた守護者が、嘉門ではなく、おそらく比較的排除しやすいいのりたちを狙って待ち構えているはずです。
多くの敵が自分たちを狙い、北大路達自身も防御を固めているはずの病院へ。
果たしてそこに待ち受けている結末は、いかなるものなのでしょうか?
人間のどす黒さを欠くことに関しては、指折りの力を持つきづき先生とサトウ先生、どんな結末が訪れても不思議ではありません!
そして、その結末に至るまでの間にも、どんな残酷な出来事が待っていることか……!!
驚愕のクライマックス、そしてそのフィナーレをぜひともその目でご確認ください!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!