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今回紹介いたしますのはこちら。

「私、スケベ以外興味ないので」第1巻 井手美貴先生 

白泉社さんのヤングアニマルコミックスより刊行です。


井手先生は15年ごろから女性向け漫画誌で活躍されている漫画家さんです。
講談社さんのARIAでデビュー後、読み切り数本の発表を経て、19年に白泉社さんのウェブマンガサイトマンガParkにて本作の連載を開始。
めでたく初の単行本刊行となりました。

そんな井手先生の初連載作にして初単行本化作である本作、そのタイトルから予想……出来るかどうかはわかりませんが、とにかくタイトル通りの無いようになっているのです!




男子からも女子からも一目置かれる女、山科敬。
成績優秀な生徒会長にして、見るものを感嘆させる見目麗しい風貌。
さらにスタイルも抜群で、さっそうと学校を歩く姿は、男子を釘付けにするだけに終わらず、女子までもが憧れや嫉妬の視線を注ぐのです。
今日も今日とて、きっと彼女は自分たちには及びもつかない高度な学問に思いを馳せているのだろうと言うまなざしを浴びていたのですが……
彼女はこんなことを考えていました。
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ふたなりになりたい。
……逆の意味で彼らには及びもつかない事を……!!

真剣に物事を考えている時にしか生まれないであろう、真剣な表情。
その顔で山科は考えておりました。
ち○こはいい、何より着目すべきは勃起。
一目で欲情してますと明快にわかる現象、すごく良い。
ち○ぽには夢がつまっている、2、3本は欲しい……
そんなとんでもないことを考えながら、すました顔でホームルームの進行なんかもしてしまう山科。
彼女の脳内は、そのリソースのおよそ98%をスケベな妄想に使用しています。
それだけには終わらず、家庭教師のアルバイト代を全て官能小説に注ぎ込む……
まさしくスケベに全てを捧げていたのです!!

雑巾がけをしているときも彼女の妄想は止まりません。
しゃがみ込んでいる彼女のおしりには、男子のよこしまな視線が注がれています。
ですが彼女にとってそれはむしろ燃料にほかなりません!
男子たちの悶々とした感情をその身に浴び、脳を開いて私に捧げろと口には出さないもののさらに要求!!
山科は日夜このボディを維持するためトレーニングを欠かしません。
男子はこのボディを見て妄想し、その妄想を餌にして山科が妄想。
それを活力としてまたトレーニングに打ち込む……!
永久機関!電気作れるのでは!?
成績優秀の山科ですが、ことスケベに関してはアレなことを考えてしまうようです……!

そんな山科ではありますが、生徒だけではなく、教師からの信頼も厚いのです。
そのせいで、非常に面倒なお願いをされてしまいました。
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見るからにチャラ男、と言ったビジュアルの男子、2組の森下の生活態度を改めるための指導をしてやってくれ、というものです。
リアルな恋愛にこれっぽっちも興味のない山科からすれば、パリピなどちくわにキュウリを入れたあの料理程度の認識にすぎません。
まだ森下を連れてきた先生と理不尽な指導をされる方が興奮できる!と、憤懣やるかたない想いをいだくのでした。

山科は適当に無視していれば、パリピは勝手に変えるだろうと高を括っていたのですが、森下は美人の近くにいられるからなのか、意外にまともに指導を受けに来ています。
山科からしますと、放課後は生徒会室で一人密かに官能小説の吟味や、大衆紙のエロスな記事のスクラップなどの作業を行いたいところで、足しげく通われても邪魔なだけなのですが……
先生から頼まれていることもあってむげにはできず、内心の苛立ちを隠しつつも普通に対応していたのです。
すると森下、ある日突然シリアスになって、山科さんは俺のことを笑わないね、と言いだしました。
何でも森下、看護学校に行きたいと言う夢があったものの、成績の悪さやそのビジュアルから、誰に離しても笑われてしまっていたといいます。
……医師や役人を次々に排出している、家族からすらも……
森下は親にまで嘲笑わられ、自分も合わせて笑うことしかできなかったようです。
そんな彼を見て、山科は言うのです!
自分の夢を笑われて何で笑っていられるの?
自分を笑う連中と、自分の夢、どっちが大切なの?
……すごくいいことを言っているように見える山科ですが……
看護学校に行く=ナースと一緒に仕事できる=ナースのパンティラインが見られる。
森下の夢は、パンティラインだ、と決めつけて出た言葉だったのですから、事情を知る者からすればそのありがたみは半減です……
とはいえ何も知らない森下は、物凄い感銘を受けたようです。
涙を浮かべて感動し、さらに山科の下に足しげく通うようになってしまいました。

と、そんなある日のことです。
山科さんの鞄を持ってあげる、と彼女の鞄を手にした森下。
実はその中には、彼女秘蔵の官能小説が20冊詰め込まれていたのです!!
何かの拍子に見られてしまえば大惨事!
慌てて取り返そうとしたものの、その強引さのせいで鞄を取り落とし、床にぶちまけてしまうことになってしまいました!!
が、山科さんに抜かりはありません。
突然のことで忘れていたのですが、小説にはすべて表紙が見えないタイプのカバーがかかっていたのです!
慌てて損しちゃった、と胸をなでおろす山科ですが……
すぐに拾い集めようと這いつくばっていたため、スカートがめくれ上がって、タイツ越しのおパンティがあらわになっていたのです!!
それを見た森下、何と顔を真っ赤にしてその場から逃げ出してしまい……

その翌日。
山科は、森下があの程度で顔を真っ赤にして逃げ出したうえ、またやって来た今日もずっともじもじしていることが気になっていました。
パリピのくせにあの程度で顔を真っ赤にするなんてなんなんだ、こっちまで変な気分じゃないか。
あんたたちパリピなんて、生尻に布つけたみたいな格好じゃないか……
と、一人文句を心の中で行っていたとき、ふとある可能性に気がついてしまいました。
まさか……とんでもなく毛があふれていたとか!?
予想外の可能性に、いきなり背筋が寒くなってしまう山科!!
と、その時、森下が意を決したように山科に話しかけてきたのです!!
来た、毛の指摘!!
身を固めて山科に、森下が言ったのは
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俺、山科さんが好きだ。
……だったのですが……
もう毛のことで頭がいっぱいになってしまっていた山科の耳には、毛がはみ出ていたよ、どっさり、という全く違う言葉に聞こえてしまっていて……!!
即座にトイレに駆け込んで、確認をする山科。
そして結局全然はみ出していない事を確認し、安心して森下のもとにかえります。
いきなり山科がトイレに駆け込んだため、返事を聞いていない状態だった森下、帰ってきた彼女に返事を求めるのですが……
山科は、きっぱりとこう答えるのでした。
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そんなもの(毛)、無いに決まってるでしょ!!私を見くびらないで!


と言うわけで、とんでもないこじらせ方をしている山科の日常を描いていく本作。
エロスに関して恐ろしくストイック、というわけのわからない道を進んでいる山科ですが、その道は茨の道……といいますかなんといいますか。
この後もう一名先生に更生を頼まれてしまい、何やかんやありまして、森下とそのもう一人を加えての三人で物語が進んでいくことになります!
ひたすらに己の求めるスケベ道を進んでいく山科。
そんな裏の顔を知らず、憧れとともに恋心を抱いてついて行く森下ともう一人……
空回りし続ける男子2人と、そんな思いなど露知らず突き進んでいく山科との対比といいますか、温度差といいますか……
とにかくそんなアレコレで巻き起こるドタバタが楽しい作品なのです!

最大の見どころはやはり山科のたくましすぎる妄想でしょう。
ありとあらゆる方向から働かせていくその妄想はバラエティ豊か。
こんなところでこんなことを……と、読者のお口があんぐりしてしまうこともあるほどの振り切った努下ネタも少なくない、七色の妄想が描かれるのです!!
さらにその妄想で期せずしてトラブルを解決していったりもする山科、まさしくエロスにすべてを捧げた人物と言うにふさわしいのではないでしょうか……!!



今回はこんなところで!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!