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今回紹介いたしますのはこちら。

「僕と悪夢とおねえさん」第1巻 フクイタクミ先生 

秋田書店さんのチャンピオンREDコミックスより刊行です。


さて、現在「終末のワルキューレ」の構成で活躍しているフクイ先生の、「百足-ムカデ-」以来のご本人の筆による連載となる本作。
そんな本作はホラー長の一話完結型作品となっています。
気になるその内容はと言いますと……?




慎は小学5年生。
今日はお母さんのお友達の娘さん、高校2年生の美樹に家庭教師に来てもらっていました。
眼鏡におさげが似合う美樹、慎に優しく勉強を教えてくれます。
そうそう、この前教えたところしっかり覚えてるね、えらいよ、うれしい!
じゃあ次は私の用意したテストをやってみよう、これも私が教えた通りできれば……
そう言って、慎にテストをしようとしていますと、窓の外から大きな笑い声が聞こえてきました。
それは大声で笑いあう、ガラの悪い男性たちでした。
美樹はその声を聞くと急に不機嫌そうになり、窓の方へと歩いて行きました。
うるさいな、馬鹿どもが。
クソ馬鹿ども、消えろ、消えろよ、早く!
そう鬼のような形相で呟きながら、美樹は窓に額を打ち付けるのです!!
豹変した美樹の様子を見た慎、ためらいながら、テストするんでしょ、と恐る恐る声を掛けますとミキは清の元へと戻り、テストの容姿を差し出しました。
さあ慎くん、ああいう連中に時間を取られてる場合じゃないわ。
慎くんは、ああいう馬鹿どものことをどう思う?
わたしはね、許せない。
人がどれだけまじめに努力して誠実に生きてよい人生を築こうとしていても、迷惑な馬鹿どもが存在するせいで人生にひびが入ることがある。
だからね、慎くん!!
わたしきっといつかえらくなって、
この世から馬鹿な人間なんてみんな消してやるんだ。
狂気すら感じさせるそのまなざしは、やがて慎にも注がれました。
慎の手が、ピタリと止まっているからです。
それは以前、美樹が解き方を教えてあげた問題。
しかもその時はちゃんと理解したと言っていたはず。
だと言うのに問題が解けていない……?
もしかして勉強を早く終わらせたくて、適当に理解したふりをしていたのか?
慎も自分を馬鹿にしているのか!?
美樹はそう呟き……
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あなたも私の「敵」なの?
異形の怪物のようにその姿を変化させたのです!!
その直後、大丈夫、解けたよ、とその問題を解いたところを見せようと振り返った慎。
その時、美樹の姿は怪物でも何でもなく、普通の女性の姿のままでした。
今私、何か大変なことをしようとしていた……?
自分の中で燃え上がろうとしていた何かに戸惑う美樹ですが、その直後、慎が机の上にへたり込んでしまいました。
どうやらテストの手が止まっていたのは、体調がすぐれなかったからだったようです。
慎はたまに発作に襲われてしまい、クラクラして意識を失うように眠ってしまうようなことがあるのだとか。
今回はそこまでいかなかったものの、その発作に襲われていたと言うわけです。
美樹は慎をベッドに寝かせてあげるのですが……
慎は寝る時に、何やら黒い本を抱いています。
その本は慎がいつも大事そうに持っているものなのですが、小さいころから持っているお守りの様なもので、抱いていると落ち着くし、心不良くて自分を支えてくれるような気がするのだそうです。
ちっちゃい子がぬいぐるみを抱いているみたいでかっこ悪いよね、という慎なのですが、美樹はそっと慎に添い寝して囁くのです。
子供でも大人でも寄る辺が無ければ強く生きられないもの。
誰だってそう言うものを持っているし、持ってなければ探してる。
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わたしにはきっと、慎くんがその本だよ。

ある日のことでした。
たまたま街で美樹を見つけた慎なのですが、その時の美樹はいつもとは様子が違いました。
中学時代のクラスメイトだったと言う女子高生三人組に再会していたのですが、その三人は美樹に対して酷いいじめをしていたようで……
久しぶりに会ったと言うのに、またもいじめてやろうとしているのです!
そこに慎が駆けつけるのですが、小学生がひとり来たところで止めることなどできるはずもなく。
それどころか、中学時代に動画に撮っていた、酷いいじめのシーンを慎に見せると言うさらにとんでもないことをするのです!!
その時だけのみならず、美樹の未来すらも汚す残酷ないじめ。
そのシーンを見せつけながら、いじめをしていた者達は笑うのです。
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アンタには「今」も「未来」も無くていいの!
みじめな過去だけあればいいんだ!
あまりに非道な言葉を聞かされてしまった慎。
そのせいなのでしょうか、むごすぎる仕打ちに慟哭する美樹の声が聞こえてきたせいなのでしょうか。
慎の体に、発作が襲い掛かります。
クラクラとする眩暈がやってきて、慎は意識を失います。
そして慎は……「夢」を見るのです。

慎の体から、真っ黒な影が触手を伸ばすかのように拡がっていきます。
そしてその触手が美樹に絡みつくと……
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その姿は、おぞましい怪物へと変わってしまうではありませんか!!
人が心のうちに「魔」を宿したと感じた時。
慎は抗えない眠りに落ち……
不思議で可笑しく、無惨で恐ろしく、グロテスクで美しい……悪夢を見るのです。
美樹はその巨大な口から炎を吐き、いじめっ子たちをまず二人焼き尽くし……
そして、リーダー格の女に圧し掛かったかと思うと、謝罪と命乞いをする彼女に、こう告げるのです。
わたしきっといつかえらくなってこのよから、バカなにんげんなんかみんなけしてやるんだ。
再び大きな口を開き……その口から、すさまじい炎を吐いて、そして……!!



と言うわけで、慎と「おねえちゃん」の日常を描いていく本作。
美樹が実は化け物だった、という構造に見せかけておいて、実は慎に原因があったと言う構成になっております。
おねえちゃんはこの美樹だけではなく、基本的に一話につき一人登場し、様々な「魔」へと変わっていってしまいまして。
この美樹が変貌した怪物は「グリフォン」で、各話に登場するおねえさんもそれぞれ異なる怪物へと変化。
怪物と化したおねえさんたちは、それぞれが怪物へと変化するきっかけとなった「闇」を様々な方法で消していくと……彼女たちは元に戻ります。
そしてその怪物が慎の持っている黒い本になぜか記されていく……
そんな構成の作品になっているのです。

ホラー的な味付けのされた本作ですが、おどろおどろしさはもちろんの事、フクイ先生の性癖といいますか好みといいますか……そう言った者もふんだんに盛り込まれております。
フクイ先生と言えば昔からのファンはイコールと言っていいほどご存じでありましょう、「大きい女の人」と「小さな男の子」の組み合わせがそれはもうたっぷり収録!!
謎多き本を持っていたり、いろいろな「おねえさん」を虜にしていったりと、いろいろな意味で魔性の少年、慎の動向から目が離せませんね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!