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本日紹介いたしますのはこちら。

「マザーグール」第5巻 菅原キク先生 

徳間書店さんのリュウコミックスより刊行です。


さて、化け物たちが蠢く中、とうとうトリノと会う事の出来た朔也。
ですが状況はいまだ好転はせず、依然化け物の跋扈する島の中で助かる手段を探し続けるしかありません。
この島の謎、そして助かるための手段を見つけることはできるのでしょうか……?



奇妙な小屋の中で、負傷したちなみの応急処置をするトリノ。
この島には様々な漂流物があるとはいえ、衛生状態は劣悪で、さらに大掛かりな手術をする技術も施設もない以上、できることは少しでも血が流れないよう止血処置をするくらいです。
彼女が生き延びるために必要なのは、とにかく輸血です。
素人の集まりで輸血をするなどということは不可能と言ってもいいですから……とにかく一同は救助を待って、彼女を助けてもらうこと以外にできることはありません。
その可能性は高いとは言えないかもしれませんが……素人が輸血を試みて成功させる、ということと比べればよほど見込みがあるのですから。

トリノは、救助が来ること自体はそう遠くないと考えているようです。
救助隊がやってこない最大の理由は、おそらくここが地図に載っていないあまりに小さな島だから。
学生たちが大勢姿を消したこの事件は間違いなく世間を騒がせているはずだから、時間はかかっても救助が来るのは間違いない、そうトリノは言うのです。
ですが問題はその後。
この島は、異常ともいえるほどの漂流物の量から言って、近くを通れば「引き込まれてしまう」ような場所であると推測されます。
救助隊が入ってくることは問題なし。
問題は、無事に出られるか、ということなのです。
島がどこにあるかも正しくわかっておらず、何よりも「怪物」の存在が知られていない。
そこに大きな問題があるのです。
そしてトリノは、この島の怪物達を含めた数々の事象に、ある違和感を感じていると言うことを明かし始めます。
外からたやすく入ってこられると言うことは、外界から隔絶されているわけではなく、ちゃんとつながっていると言う事。
最初にこの島の異様さを知った時には、何らかの自然現象が原因でこの島は世界から隔離され、独自の進化を遂げた怪物が生まれたと思っていた。
今になって考えると……この蟻地獄のような島には、「主」がいて……
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この島のこの状態は、その主の作為によって作り上げられたのではないか……?
……その主が何者なのかまではわかりません。
人間か、宇宙人か、神様か何か……?
トリノがその主の存在を確信したのは、この島の怪物の「形」を見て、でした。
この辺りが海難事故が多発する地帯、と仮定すると、生存者はここで集落を作って生活していて、この奇妙な小屋がその生存者の作ったもの、と考えるのが自然です。
ですがどうでしょう、この小屋は生存者が作ったと考えるとあまりにも奇妙過ぎるではないでしょうか。
普通ならばもともと住んでいた地域の建造物のように作るか、気候に適応させたにせよシンプルな作りにするではないでしょうか。
ですがこの奇妙な家は、多くの手間がかかっているうえ、構造も奇妙極まりありません。
トリノはこの家を見て、この集落を作り始めたものは、「家」というものを実際に見たことがなかったんじゃないか、と予測しました。
家を見たことがない、目の見えない人、あるいは赤ん坊。
そんな者が、誰かに教わったとか、流れついた写真や絵などを見て、それらしいものを作ったのではないか……
さらに不自然な「形」はこの家だけではありません。
この島を闊歩している、怪物そのものの形も、です。
まず普通に長い年月をかけて進化している生物ならば、弱点にもなる目や柔らかい腹といった部位を、あそこまで大きく成長させ、その上曝け出すかのようにむき出しのままにするでしょうか?
無数に生えている手も、あれだけの数が本当に必要だとは考えづらいです。
種の進化は、食べるためにだとか、繁殖するためにだとか、そう言った生きるために合理的になっていくものなのですから。
あの怪物は、自然に進化したと言うには……あまりにも生物としてのクオリティが低い。
加えて言うなら、その部位一つ一つが、自然界においては脆弱と言っていい人間のそれのようであるのも奇妙です。
その形は……まるで、子どもがバラバラにした人形の残骸を組み合わせて作った、かのようで……
そして何よりもおかしいのは、怪物の繁殖方法である「インブンチェ」です。
人間を苗床にして、その為に手伝うのも人間。
怪物の繁殖システムに人間が組み込まれているなど、どう考えてもおかしいでしょう。
これらのことから考えられるのは……
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この島を作り上げた、人間でありながら、人間と同じ次元にはいない存在がいる、という事。
そしてもしかすると……
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その存在を何とかすれば、この島から脱出することができるかもしれない、ということです!!
それは希望と言ってもいいかわからない、おぼろげで、そして恐ろしい仮定。
ですが、今まで右も左もわからぬまま島をさまよっていた一同にとっては、初めて道しるべのようなものができた、といってもいい要素で……!!
一気に盛り上がりを見せる朔也達!
ですがそこで、度重なる出来事や、府省によるダメージを負い続けていた宮城野が倒れてしまいました。
どうやら今までもずっと高熱を発していたようなのですが、彼女は気合で乗り切っていたようです。
幸い今のところ意識もしっかりしているようですが、その高熱の原因となったかもしれない疵の消毒は改めてしっかりしておきたいところ。
そこで朔也がお湯を沸かす作業を承りまして、火が使えそうな部屋へと向かうのですが……
そこには
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この家の住民と思われる老婆が数名座っていたのです……!!



と言うわけで、この島の謎に迫っていく今巻。
様々な予想はあくまでトリノの予想でしかありませんが、それでもこの島に怪物たちを作り上げた「何か」がいると言うことは間違いがないでしょう。
それがわかっただけでも、一同にとっては大きな前進といえます!
トリノ達はその何者かを探し出し、この島から出ることができるのでしょうか。
また、救助隊はやって来てちなみをはじめとした負傷者たちは助かるのでしょうか?
希望めいたものが見えてきたとはいえ、救助隊がやって来てのトラブルや惨劇も十分に考えられるだけに、今後も油断できない状況が続いて行きそうです!!

今巻の注目点はそこだけではありません!
朔也がどうしてトリノに思いを寄せるようになったのかがわかるエピソードも収録され、キャラクターたちへの寛恕移入が一層深まること間違いなし!
さらにこの紹介した部分の後には、今までの「逃げる」ためではなく、仲間を助けるために「戦う」物語が開幕!
今までとは一味違う読み味のストーリーが展開するのです!
同時にトリノ達とは別行動をしている様々な人物の物語も展開し、そちらでは怪物の恐ろしさを再確認したり、追い詰められた生徒同士のいざこざが描かれるなど、今まで通り物語も楽しめますよ!

ちなみに自分のお気に入りの宮城野さんは倒れてしまいましたが……この後彼女にもばっちり見せ場が用意されておりますので、宮城野さんファンの方はご安心を!
もしかしたら今までで一番かもしれない宮城野さんの大立ち回り、そしてまさかの(?)トリノとのちょっといい感じの絡みなどなど、こちらも見逃せません!!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!