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今回紹介いたしますのはこちら。

「カタリベ ネットに漂う恐怖の予言」 原作・KATARIBE.bot 漫画・舟先生 

角川書店さんの角川コミックス・エースより刊行です。


本作は18年に刊行された、「カタリベ 人工知能がつぶやく呪いの予言」の第2巻に当たる作品です。
毎日「KATARIBE.bot」で呟かれる文章を原作にした恐怖を描いていくこのシリーズ、今巻でも様々なお話が8話収録。
今回はその中から、「契約」のエピソードを紹介させていただきたいと思います!


野球部で、立て続けに二人もの自殺者が出てしまいました。
流石に休部だよな、大会どうするんだろう、と葬式帰りの部長がつぶやくのですが……副部長がこんなことを言いだしました。
自殺が全部俺のせいかもしれないって言ったら、信じる?と。

それは副部長の夢の話でした。
何度も何dも見ると言う、その夢は……合宿の時に携帯電話で取った部員の写真を、真っ赤なクレヨンで塗りつぶす、という夢。
そしてその夢の中で、副部長は必死にその行為をやめようとするのですが、どうしてもやめられません。
……誰かが、副部長の背後に立って命令しているのです。
後ろを振り向こうとしても、なぜか振り向けない。
だと言うのに、そいつの顔ははっきりとわかる……
そう言って副部長は、
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そいつ、の顔を描いて見せるのでした。
そんな時の事。
たまたま目に入った高架の上から、二年生の部員、波多野が飛び降りようとしているではありませんか。
慌てて二人が波多野のもとに駆け付け、引きずりおろすのですが、波多野は自分が自殺しようとしていたことを覚えていないようです。
……ですが彼が二人の部員と同じように自殺していたことは間違いないわけで……
そこで二人は、波多野に「そいつ」の絵を見せ、これに見覚えがないかと尋ねてみました。
すると波多野、あっさりと「知ってますよ」と答えて……!!

波多野がこれですよと見せてきたのは、だいぶ昔からネットにあった動画の一つ。
90年代中ごろの家庭用ゲーム機レベルの荒いCGで描かれたその動画は、夢の中を覗ける自称していたブロガーが誰かの夢を映像化したものだとか。
CGで作られた人間が意味の分からない言葉をつぶやきながら、地面にばら撒かれた誰かの写真か何かを塗りつぶし続ける……
そしていつの間にか背後に何者かが立っていて……また意味の分からない言葉を呟いて終わるのです。
その背後に立っている何者かの顔が、
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あのイラストにそっくりで……
夢の内容まで、副部長の話していた物にそっくりのこの動画。
偶然というにはあまりにも出来過ぎている気がしますが……その動画を見た副部長は……
うつろな瞳で遠くを見ながら、何かをつぶやき……そして携帯で誰かと、何かを、会話し始めます。
そして突然足を踏み鳴らし出したかと思うと……憑き物が落ちたかのようにすっきりした顔をして、もう大丈夫だ、迷惑かけたな、というのでした。

副部長が言うには、動画から電話番号が聞こえたから、そこにかけて「もうこっちにかかわるな」と話をつけた、だからもう部員が自殺するようなことはない、とのこと。
部長は何から何まで副部長の言っていることが理解できませんが……副部長がそう言うのならそうなんだろう、と納得するのです。
が、その帰り道のことでした。
背後に何かがついてくるような気配を感じる部長。
後ろを振り向くと……そこには誰もいないのですが、一本の、クレヨンが転がってきました。
それを見た副部長は、頭を抱え、仕方ねえなとそのクレヨンを手に取り、暗闇の中へと歩いていってしまいます。
慌てて追いかけますと……
副部長は、
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何もないはずの道路を、クレヨンで真っ赤に塗り続けていました。
大丈夫大丈夫、もう夢に関わらない代わりに、こっち側に「印」をつけろって、そう言う契約なんだよ。
でもそれ以上のことはないって言ってたからよ、大丈夫大丈夫。
副部長の言葉には、それが本当であろうと、本当ではなかろうと……大丈夫だとは到底思えません。
大丈夫ってお前……と、声をかけようとした瞬間です。
背後から、何者かの手が部長の口をふさいだのは。
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口をふさいだ「そいつ」は、にやりと笑いながら、何も言うなとばかりに指を一本立てて口を押え……
その後、部員の自殺はなくなり、「印」をつけたところで事故や事件が増えた、なんてこともありませんでした。
確かに、それ以上のことはなかったのです。
たまに、副部長がこんな風になること、以外は。
……おそらく、これ以上は何も詮索しない方がいいのでしょう。
そいつ、が何をしようとしているか、知ってしまえば……


と言うわけで、ならではの恐怖が描かれる本作。
人工知能の生み出す文章と言うことで、そのもととなる言葉は整合性のない、無茶苦茶なものばかりです。
その無茶苦茶さが言いようのない不気味さを生み出し、そして他に類を見ない物語を作り出すことにつながるのです。
紹介したお話以外にも、独特のお話ばかりが取り揃えられております。
一つ一つのキーワードは、この紹介したお話に出てくる「赤いクレヨン」やら、「メリーさん」やらと言った、既視感のあるものもあります。
なのですが、その使い方は意外なものばかりで、そうくるのかと驚かせる効果や、不意を突かれるような恐怖を与えてくれるわけです!
その不気味さがどんなものかは、読んでみていただき、体験していただくのが一番!
その恐怖の「予言」、ご堪能ください!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!