th0
今回紹介いたしますのはこちら。

「高嶺のハナさん」第1巻 ムラタコウジ先生 

日本文芸社さんのニチブンコミックスより刊行です。


さて、「てのひらにアイを!」が好評を博したムラタ先生の最新作となる本作。
ムラタ先生と言えば個性的な女性キャラをメインとしたコメディを得意とされているイメージですが、本作もその路線の作品となっています。
ですが「てのひらに~」とは違い、エロス要素を抑え、コメディ部分を強化した作品となっているようで……?



創業100年を迎える、老舗お菓子メーカー、ミツバチ製菓。
そこで、一人の若い男性社員が上司のお叱りを受けておりました。
お叱りを受けている男性社員の名は、弱木強(24)。
新商品の企画書の内容にダメ出しをされているようなのですが……
確かにその新商品、「甘すぎるチョコレート」と言うアイディアはちょっと、どうなのでしょうか。
弱木は、かつて流行した「〇〇すぎる~」と言うワードからヒントを得て考えた、と言うのですが、そんな思い付きで考えた商品がヒットするほど簡単ではありません。
コンセプトは、ターゲットは?
そう上司に問い詰められると、まともに答えられず口ごもるだけの弱木……
これじゃ企画の詰めが「甘すぎる」、全部やり直し!!
そう言いながら弱木の企画書をすべて投げ捨てる上司。
th1
その上司、高嶺華(27)は、まだ27と若手と言っても過言ではない年齢にもかかわらず、このお菓子メーカーの商品企画部で大ヒットを連発している超エース!
美しい、神々しい、モデルさんのようなスタイル、背景に花が見える……
部下にきついお叱りをしたその姿すらも称賛される彼女、完璧無双とまで謳われるバリバリのキャリアウーマンなのです!!

ちなみにそのお叱りを受けた本人である弱木もまた、めちゃいい匂いした、何食べたらあんな匂いになるんだ!?とむしろ嬉しそう。
先輩の男性社員、チャラ田こと更田もその気持ちはわかるようで、怒られて嬉しいんだよな?と冷やかしてきます。
這いそうですとはさすがに答えられない弱木は、違いますよ、と慌てて否定するのですが、その気持ちはバレバレ。
そんな弱木の憧れを越えつつある恋心を、更田はこう断ずるのです。
諦めろ、おまえには所詮高根の花だ。

その日の夜、先日高嶺が企画した新商品の大ヒット記念の打ち上げをしようと社員たちは盛り上がるのですが、高嶺はきりりとした面持ちのまま、行きません、ときっぱり。
そしてそのあだ名通り数々の女子社員に手を出してきた更田が、俺と二人ならどうっすか?と手を出さんとするものの、そちらにはさらにきつく、行くわけないでしょと拒絶の意思を示すのです。
きっと素敵な彼氏がいるんだろう、と噂する社員たち。
そんな噂をされていることも知らず、振り返ることもなく自宅にたどり着いた高嶺ですが……
家に帰って靴を脱ぐなり座り込んでしまいました。
彼女は大きくため息をつき……今日のある出来事を悔いるのです。
また……弱木くんにキツイ事言っちゃった!
th2
弱木きゅん……ほんとはこんなに大好きなのにぃ!!!
あの主張のない顔、頑張ってるのに成果を出せない不器用さ、すこし高めのハスキーボイス、齢くか強いのかよくわからない名前……
全てが愛おしいの!!
決して後輩のためを思って叱ってる、なんて建前じゃないの。
弱木くんのこと大好きだから本当は叱ったりなんかしないで、一緒に手取足取り仕事を教えてあげたいのに。
なのにどうしていつもきついこと言っちゃうの!?私のバカバカバカ!!
あぁー、もう絶対弱木君に嫌われた!!
……そう、高嶺はその見た目や立ち振る舞いとは180度違う、好きな子に素直になれない思春期女子のような女性だったのです!!

一人部屋の中で悶えている高嶺のことを知る由もない弱木は、なんだかんだ仲のいい更田と二人で安い焼き鳥屋で飲んでいました。
更田は当然落とせると思っていたらしい高嶺に連れない態度を取られ、毒づきます。
貴妃はやっぱ家庭的で優しい方がいいよなぁ、結婚したら俺絶対選択とか食器洗いとかしたくねーし、やっぱ家事は女の仕事なんだよ。
そうなんすか、とちょっと引きながら返答する弱木の顔などお構いなしに更田は持論を続けるのです。
だからよぉ、高嶺華みたいな仕事しか能がない高飛車女はどうかと思うんだよなぁ。

……その仕事しか能のない高飛車女は、ベッドの上でなんかかわいいミミ付きフードのあるパジャマで、大きなぬいぐるみを抱いてため息をついていました。
どうしてわたしってこんなんだろ。
弱木くんこんなキツイ女嫌いだよね。
弱木くんだって絶対、元優しくて、背だって小さくて、可愛くて、にこにこ笑ってる女の子らしい子が好きに決まってるよ。
おしとやかでかわいらしい女の子になりたい、弱木くんに好かれるような人に変わりたい、いや、変わらなきゃ!!
弱木くんのあのダメダメなところが大好きだから、弱木くんは変わらなくていいの。
私が……変わらなきゃ!!
高嶺さんは「カワイイ女の子になる20の法則」なるちょっとアレな感じの本をかじりつくように読みふけり、その法則のうちの一つに目をつけたようです。
「とにかく男を褒めまくる」。
どうやらこの辺りから高嶺が変わる手がかりをつかもうとしているようですが……!?

で、先ほどの飲みの場での二人ですが、弱木は更田の高嶺否定を真っ向からさらに否定しておりました。
高嶺さんは素晴らしい人です、僕は高嶺さんみたいに強くてかっこよくて仕事ができる人に憧れます!
そんな弱木の言葉を聞いた更田は、なに、もしかして高嶺華のこと好きなの?とからかおうとするのですが……
th3
弱木はものすごくはっきりと、大好きです!!とカミングアウト!!
高嶺さんに認められるような仕事ができる男になるぞ、次こそ関終えきな企画書を書くんだ!!
そう一人気合を滾らせ……高嶺が求めていないとも知らず、変わろうと奮闘し始めるのでした!!

翌日。
気合満点の弱木が高嶺に提出した企画書はこんなものでした。
「とんこつチョコミント」。
高嶺さんに言われた通りコンセプトを絞って、若者が好きなものを掛け合わせてみました、といい笑顔で語る弱木ですが、これはまたどう考えてもヒットしないどころか、それ以前の問題としか言えないヤツ。
高嶺は、昨日読んだ本のアドバイス通り、褒めよう、褒めようとして……その結果
th4
なんて素晴らしい企画書なのかしら、と言いながら破り捨てる、と言う最高にいやみな感じの返答をしてしまったのでした!!
そのトイレの個室で、屈みこみながら悶絶する高嶺の姿がありました。
一番いやみな言い方になってしまった、でもいくら何でもとんこつチョコミントは……
嫌そう言う感じが弱木くんっぽくて愛おしいんだけど……
いろいろな面で激しくすれ違う二人。
この恋が実ることはあるのでしょうか……!!


と言うわけで、高嶺と弱木の恋模様を面白おかしく描いていく本作。
有能上司とダメ部下のどうしようもないやり取りの裏で繰り広げられる、実は両想いの片思い。
さらにその裏で行われている、両者の奮闘……
お互い別の方向でダメダメな二人の関係が楽しめるのです!
二人のちょっとアレな頑張りをコミカルに描きつつも、仕事以外の部分で結構かっこいいところがあったりする弱木の男ぶり、だんだんと明かされていく高嶺の意外な素顔も描写されていきまして、ゆっくりと二人の距離は縮まっていくような?
ひたすら弱木ラブな高嶺の裏の顔は、ムラタ先生らしいおバカでキュートに描かれていますし、弱木の基本荒れながら決めるところは決める性格もただのダメ系主人公ではない魅力を持って描かれます。
なんだかんだお似合いな気がする二人のそんな様子を、笑いながら見守っていきたくなること間違いなしですよ!!

そして本作の重要なキャラとして、更田ともう一人、高嶺が思い描く理想の女の子象を持つ女子、天井苺が登場します。
とにかく真面目一徹な堅物に見えて実際はピュアガールな高嶺ですが、天井の方はその逆の属性を持っています。
そんな天井と、思いがけない感じで本作の中枢に突っ込んでくる更田のおかげで、ただでさえいろいろ混沌としている本作はより一層ぐっちゃぐちゃに……!
弱木と高嶺のみならず、更田と天井の動きも要注目です!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!