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今回紹介いたしますのはこちら。

「着たい服がある」第1巻 常喜寝太郎先生 

講談社さんのモーニングKCより刊行です。


常喜先生は13年にちばてつや賞の純優秀新人賞を受賞し、デビューした漫画家さんです。
18年にモーニングにて本作の連載を開始し、現在は同時に日刊月チャンに「不良がネコに助けられてく話」も連載中。
そんな常喜先生の初単行本刊行作品となる本作、そのタイトル通りファッションを物語の軸に置いた物語なのですが……?



渋谷の真っただ中で、ビルに貼ってある広告を眺めている女性二人組。
そんな女性二人組の元に、待ち合わせから少し遅れて、小林マミが到着しました。
おまたせ、と手を振るマミですが、その姿を見て友人の女性二人組は言うのです。
ちょっとマミ、スカート、たまにそう言う甘いのはいてくるよね。
変ってわけじゃないけど、違うのよ、マミはあれよ。
ふたりが指さしたのは、ビルの広告の女性。
「なりたい自分になれ」というコピーの躍る広告には、スタイルの良いスラリとした女性が、パンツルックを履きこなすかっこいい姿がプリントされています。
マミはああいうイメージなんだよ、スタイルの良いマミはかっこいい服着る義務がある!
いいよなあ、私もあんなふうになりたいもん。
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友達のそんな言葉に、マミは愛想笑いで返すのですが……


マミは真っ暗な自分の部屋の鏡の前で、スカートをはいた自分の姿を見つめていました。
そして……大きくため息をついてスカートを脱ぎ、「かっこいい」格好に着替えます。
バイト先にスカート姿で出かけようとしたものの……考え直して着替えたマミ。
改めて家を出ようとする彼女を見たお母さん、わざわざ着替えに来たのか、と少し驚いた様子。
何も答えないまま外に出ようとするものの、お母さんはあんたスカートよりそっちの方がいいわよ、と一言。
その言葉に少なからずショックを受けた様子のマミですが……
お母さんはそんな真美の心情には気がつかないままお母さんは、私はあんたのこと一番わかってるから、と更に言葉を続けるのです。

出かけなおすマミに、妹が私も出掛けるから、とついてきました。
その道中、携帯の画像加工アプリで、マミと自分の顔写真に動物のミミとヒゲをつけたして遊ぶ妹。
ですがその画像を見て妹は不意に拭きだすのです。
なんか姉ちゃん、ミスマッチ過ぎて。

バイト先でも、かっこいい先輩、として扱われているマミ。
例のアプリを使って一緒に写真を撮ろう、と言う後輩たちの誘いにも、つい私はいい、とそっけなく断ってしまうのです。
そんなバイト先に、新しい仲間が加わることになりました。
とはいっても新人と言うわけではなく、姉妹店からヘルプに来てくれることになった男性でして……
小澤と言うその男性、ぺこりと軽く頭を下げるだけのクールな挨拶で自己紹介を済ませました。
ですがそのクールなそぶりが似合う、イケメンでもありまして……
後輩たちはかっこいいと色めき立つのですが、マミにはこう言うのです。
でも大丈夫ですよ、なんだかんだ一番かっこいいのはマミ先輩だし!
私たちの憧れの的ですから!

「かっこいい」「一人でも生きていけそう」「憧れる」。
そんなマミを見た感想は、どこに行ってもついてきてしまいます。
皆の憧れの姿を強要される日常は、マミの心をすり減らしていました。
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いっそのこと、私も男だったらよかったのかな。
消耗しきっているマミの心の事をわかってくれる人は誰もいません。
小林さんが春で大学を出たら、バイトも卒業か、代わりになる人探さなきゃな。
小林さんと今いる子たちじゃ男と女くらい力の差があるよ。
またマミの心を傷つける言葉を言いながら、更衣室に入っていく店長。
ですがその時、まだ小澤が着替えの最中のはず。
今開けたらまずいかも、と真美が一言いおうとしたその時……小澤が出てきました。
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よく言う「普通」のセンスと比べると、かなり個性的ないでたちで!!
とうぜんみんなの目は、一斉に彼に注がれます!!
戸惑い、好奇、驚き……
そんな視線を全く意に介さず、小澤はお疲れさまでした、明日もお世話になります、と言い残し、バイト先を去って行くのです。

自分の恐れていたものをものともしない小澤。
彼の後ろ姿は、マミを突き動かします。
……かつて彼女が、一度だけ勇気を出して自分の着たい服を買いに走ったことがありました。
当時から身長が170を超えていて、足も大きく、きつめの顔立ちをしていたマミ。
そんな自分が、こんな服を着ていたら似合わな過ぎて笑われてしまうだろうか?と、そのお店の店員さんに質問を投げかけまして。
すると店員さんはこう言ってくれたのです。
100人中100人がいいと思うお洋服なんてどこにもありません。
でもここには、少なくとも私が素敵だと思う服を置いています。
お客様も素敵だと思ってくれたら2人目です。
そんな幸せなお洋服を、今から一緒に見つけましょう。
お陽区府は作られた時点ではまだ50%です。
こうして誰かに来ていただくことで、やっと100%になるんです。
……そう言われて着せてもらい、買って帰った洋服。
それは
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いわゆる、甘ロリと言う、白くてふわふわしたフリルとお花いっぱいの、「かっこいい」とは正反対と言ってもいい服で……!!
マミは誰に聞かせるともなく、つぶやきます。
本当はこれが、なりたい私なの。




と言うわけで、マミがみんなが考えている自分になる毎日から、自分のなりたい自分になろうとする毎日へと踏み出していく様を描いていく本作。
こう言った漫画ですと、この後日常の中で友達なんかにも認められながら、徐々になりたい自分になる時間を増やしていく……と言う感じになる作品が多いような気がします。
ですが本作では、そんなステップアップの様子とともに、周りのマミに対する印象、そしてマミの目指す仕事とその恰好のギャップとの戦いなどの様子も描かれていくのです。
小澤の存在のおかげで、この後マミは徐々に徐々になりたい自分になろうとしていきます。
ですが、マミがなりたい職業……教師という、かなり世間の目が厳しいその職業は、マミの理想を追う毎日をさらに困難なものにしていくのです。
今巻では教育実習に挑むことになるのですが、そこでもやはり……?
マミは自分のなりたい自分になることができるのか。
そして、そんな自分の心情をバックに、教師としての道をしっかりと進むことができるのか……?
格好だけではない「なりたい自分」になるために困難を乗り越えていく本作。
ファッションだけではない、様々な彼女の頑張りは、読者の胸に迫ること間違いなし!!
今巻で一つのヤマを乗り越えるところまで収録されていて、読みやすさも魅力的な本作ですが、今後の展開も勿論気になってしまうこと間違いなし!
しっかりとした読み応えのある作品となっているのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!