kn0
今回紹介いたしますのはこちら。

「血海のノア」第1巻 里見有先生 

竹書房さんのバンブーコミックスより刊行です。


さて、「蟲姫」「火傷少女」の里見先生初めてのオリジナル作品の単行本となる本作。
その儚げで、恐ろしさと美しさを併せ持った絵柄から、ホラー要素のある作品を多く手掛けられてきましたが……本作もやはりそっち方面の作品となっております!



海を行く超豪華客船。
その甲板に拡がる優美な光景を見て感嘆の声を漏らす少女、あかり。
彼女は弟のゆずると、お父さんとの三人でこの豪華客船の旅にやって来ました。
正直を言えばこの三人、こんな豪華な客船に乗って楽しむような生活水準ではないのですが……お父さんが思わぬ機会に譲ってもらったチケットでこの度に参加することとなったのです。
早速船に何があるのか一周してみてくる、とあかりは駆け出すのでした。
お父さんはのんびりしたいようで、それを見送ると煙草をふかし始めるのです、が……
残されたゆずるは、そんなお父さんをじっと見つめてきます。
……相手をしてやる気持ちもないお父さんは、お小遣いを渡してねーちゃんに遊んでもらえ、とぞんざいに扱ってしまい……

そんなことも知らないあかりは、水平線に沈もうとしている太陽を眺め、その美しさに見惚れておりました。
お母さんにも見せてあげたかったな。
そんなことを考えていますと、急に何者かに声をかけられます。
綺麗だなー、なんてね。
にこりと笑いかけるその男。
こんなところでナンパ、でしょうか?
国内ツアーなのに外人だらけでつまらなかった、と言う彼、あかりの血液型まで当ててきました。
と言ってもそれは、入船時につけられたリストバンドを見てわかっただけの事。
そのリストバンドは、血液型に応じて色が決まっているようで。
へー、なんでだろ、と素直にあかりは感心するのです。
と、そこにお父さんがやって来ました。
ゆずるがどこかに行ってしまったから、探そうとのことです。
自分からすれば娘をナンパする男にしか見えないその少年、お父さんはさっさと追い払おうとぞんざいに扱います。
やむなく少年はその場から立ち去るのですが……
一週間この船の上で一緒だし、きっとまた会うよ。
カケルと名乗ったその少年は、そう言い残していくのでした。

ゆずるはどこに行ってしまったのでしょうか。
海に落ちてたりしてな、と不謹慎極まりないことを言うお父さんを叱りながら探していると……なにやら特別会員以外立ち入り禁止と書かれた場所にやってきてしまいました。
お父さんはずかずか入っていき、中を探ろうとするのですが……
そこでどこからともなく黒服が現れ、
kn1
何とも言えない圧を放ちながら、そちらは立ち入り禁止ですと二人を止めるのでした。

平謝りしてその場を離れる二人。
ほどなくして、ゆずるは思わぬところで見つかるのです。
なんとゆずる、外人さんの女乗客に抱かれて登場したではありませんか!!
どうやらゆずるはその女性客にお世話になっていたようで。
彼女は流ちょうな日本語で、私たちも楽しませてもらったからいいの、とにこやかに応対してくれました。
そしてゆずるの頬にキスをして、とってもsweatだったわよ、もしよかったらお姉さんたちゆずる君のお部屋に遊びに行ってもいい?と何やら積極的にアプローチをして……!?
ゆずる人気に嫉妬したお父さん、それをダメだとシャットアウト。
そして、ゆずるの部屋じゃなくて俺の部屋だ、と決め顔で誘いをかけてみるものの……やっぱり結果は惨敗。
あっさり女性客は立ち去っていくのです。
……しかしその女性客は、三人から少し離れたところで、仲間とこんなことを話していたのです。
kn2
ちくしょー、超タイプだったのになー!
……小さな子供を相手に、男を狙うかのような……奇妙なことを。

一方、カケルは懲りもせずナンパをしておりました。
ですがなんだかんだあかりの事が気になっていたようで……小さな子供が何やらひとりできょろきょろとしながらあたりを走り回っているのを見かけると、ナンパもそこそこにその子を追いかけることにしたカケル。
ゆずる君?待って、待ってったら!
そう声をかけながら追いかけるカケルなのですが、その子は一向に立ち止まる気配がなく。
名前が間違っているのかとあれこれ呼びかけてみても立ち止まらなかったのですが、あてずっぽうで言ってみた「みちる」と言う名前を聞くと、その子は立ち止まりました。
くるりと振り返り、みちる?と聞き返したその時。
一陣の風が吹き、かぶっていた帽子を吹き飛ばしました。
帽子の下から出てきたのは、
kn3
美しい長い髪……?
その子はゆずるではないどころか、女の子でした。
人違いだったにもかかわらずその女の子、カケルに近づいてきてギュッと抱き着いたかとおもうと手を引いてどこかに連れて行こうとします。
女の子は何かの箱の上に立ち、日もくれて真っ暗になった海を指さしながら……そっちに行きたい、と促すのです。
そっちは海だけど……?
少女はカケルを見つめながら、コクリと頷き……

ゆずるを見つけたあかりとお父さんは一安心。
ねーちゃんに遊んでもらえとは言ったけど、まさかよそのねーちゃんと遊ぶとは末恐ろしい男だぜ、と冗談半分に漏らすお父さんですが……そもそも自分がそんなことを言わなければこんな……取り返しのつかないこと、にはならなかったのです。
ゆずるをベッドに寝かせたあかりは、あるものに気が付きました。
kn4
ゆずるの首筋にある、四つの穴のような傷痕。
この傷痕は、まるで……!




と言うわけで、豪華客船の上でパーティーが行われる本作。
もうお判りでしょうが、本作は船の上であの有名なクリーチャーの宴が開かれ、そこに招かれてしまったあかりたちの苦難が描かれていくこととなります。
主役となるのはあかりとカケル……のはずなのですが、物語はゆっくりと始まった立ち上がりから想像できないほど、この後物語はスピーディーに展開していくこととなります。
どんどんとこの船の本性が明らかになっていき、そして血の匂いのかおる惨劇が加速していく……
今巻の中盤あたりから犠牲者が加速度的に増えて行くのですが、驚くべきキャラクターが犠牲となってしまい……!!

こう言った物語では、どうにかしてクリーチャーの目をかいくぐり、犠牲者を出しながらも脱出していくまでを描いていく作品が多いところ。
なのですが、第1巻の内からそんなセオリーを踏襲しながら、今巻のラストでは早くもそんな王道展開からかけ離れていきそうな急展開が巻き起こります!!
そもそもこう言った閉鎖空間での怪物から逃げる系の作品は、程度の差はあれ敵怪物と意思疎通できないものですが、本作はもうそこから違うわけで。
人間と同等以上の知性と意思を持つ怪物たちが抜鈎するこの船上で、カケルは生き延びることができるのか?
そして、あかりは……!?
主要人物かと思われた人物すらいつ死ぬかわからない予測不可能な本作、里見先生の恐ろしくも色気ある絵柄も相まって、引き込まれること間違いなし!!
今後の展開を左右する様々な伏線のようなもの見え隠れし、これから先が楽しみでなりませんよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!