「稲川さんの恋と怪談」第2巻 ヨゲンメ先生
KADOKAWAさんの電撃コミックスNEXTより刊行です。
さて、天才ホラー漫画家にして霊感皆無の美少女、稲川マツの取材アシスタントとして働くことになった漫画家志望の少年、一。
稲川先生は全く感じていないものの、その取材先は吟味して向かうだけあって本物ぞろい。
数々のとんでもない恐怖を体験してしまう一は、自らの漫画を描く時間も取れないし怖いしとこの仕事を続けるのは厳しいと感じてしまうこともあります。
が、どうしても漫画家としても、一人の女性としても稲川先生のことが気になってしまい……
半年前からこんなことが起き始めました。
どこからともなく異臭が漂い、次々に電化製品が故障し、見たこともない虫が這いまわる。
ほどなくして父親が大量に吐血して入院、母親も娘も体調不良に悩まされることになった。
いずれも原因不明で、ほとほと困り果てた家族の元に、一人の男が現れてこう告げました。
全てこの地にたまった「魔」のせいである。
魔は私がこの箱に少しずつ封印していくので、この箱を決して開けないように。
ひとつの小さな箱を置いていき、代わりに謝礼を受け取って去っていきました。
この怪しげな男は、冥雲。
駅前で母親に声をかけ、今の状況をピタリと言い当てたというこの男を、母親は妄信。
冥雲の言うがままにその箱を祀っていたのですが……娘からすると、と手もその箱が間を封じ込めているようには見えなかったと言います。
むしろ……この家に、おぞましい何かを放っている。
そう見えた、と。
そんな体験がしたためられた手紙とともに、稲川先生の元に件の箱が届けられていました。
おびえまくる一ですが、稲川先生はこの送り主に心当たりがあるとのこと。
なんでもこの体験談の「娘」である秋草真子は、かつて一度だけ稲川先生のアシスタントをしてくれた人物なのだとか。
相当怖がっていたためもう連絡はないと思っていたものの、こう言ったものを押し付けて「くれた」のは、稲川先生にとってうれしい誤算だったわけです。
ちょうどネタ探しをしていたところだった、とほくそ笑む稲川先生ですが、一は面白くありません。
稲川先生がこれを手にすれば、間違いなく首を突っ込んでいくことは言うまでもないわけで。
それを知って押し付けると言う事は、つまり稲川先生を危険にさらすこととイコールであるのですから。
そんな稲川先生ですから、やっぱり早速中を確かめようとします。
ところが箱は南京錠で施錠されておりますし、流石にこじ開けるのもどうでしょうか。
そこで稲川先生がとった方法は……
なんと、冥雲を招くと言うとんでもない方法だったのです!!冥雲は最初から渋い顔をし通しで、御託はいいから箱を返してもらおう、それがないと始まらない、彼らを救えない、と迫ります。
が、それに対して稲川先生は、この箱の正体をこう予測して返したのです。
蠱毒、と。
蠱毒とは、スタンダードなものではツボの中に毒虫を無数に詰め込んで殺し合わせ、生き残った最後の一匹を呪いの運び手として使う、と言う比較的メジャーな呪術。
虫以外にも小動物などを使ったり、殺し合いをさせずに無生物を使役したりタイプもあるらしいのですが、とにかく共通するのはその効力です。
蠱毒に呪われたものは、医者では治せない病にかかる。
まさしくそれは、あの体験談の家族と同じ症状ではありませんか!!
こうして家族を弱らせ、霊能者として現れて助け舟を出すふりをして、財産を奪おうと言うのでしょうか。
そう問いかけられた冥雲は……高らかに笑い、その通り!とあっさり肯定したのです!!
が、そう認めたところで何の罪になる、と余裕の表情を浮かべる冥雲。
自分がやっているのはただのサービス行田市、金額は向こうも了承済みだ、と何をされても痛くもかゆくもないと言った態度です。
それでも一は、ごまかされない、僕らにはあなたの悪事は筒抜けなんだ、とにらみつけるのですが……
そこで冥雲はさらにこう続けました。
なるほどお前たちは怪異に対する心得があるのか。
なら聞くが、
後ろのそれにどう対処するつもりだったんだ?蠱毒の箱からは、霊感のないものには見えないおぞましい毒虫が這いだし始めていて……!!
稲川先生には、一瞬停電したような感覚しかなかったようですが、一にはありありと感じられました。
以前何も変わらない、南京錠がされた箱。
そこから、確実に禍々しい殺意が発されていたのを!!
四郎とじゃ死ぬだけ、秋草家のことは忘れろ。
そう言って、箱を持ち去って行く冥雲。
去り際に稲川先生に、俺らは怖いものを商売道具にしている同業者みたいなものだ、仲よくしようぜ。
そんな冥雲の顔をしっかりと睨み返しながら、稲川先生は答えたのです。
一緒にしないで。
あなたには愛がないでしょう。冥雲が立ち去った後、一はこのままではまた秋草家が毒牙にかかってしまう、どうするのか、と稲川先生に問いかけます。
が、稲川先生は最初から戦う気満々なのです。
あの箱は取り返すよ。
あれはもう私のものだから。
被害者の人がくれたんだから、もう私のコレクションでしょ。
……なんだか起こるところが違う気がしますが……ともかく、稲川先生と冥雲の戦いは幕を開けるのです!!
と言うわけで、稲川先生と一、はじめての「戦い」が幕を開けた今巻。
ですが残念ながら本作、このエピソードを持って完結となってしまいます。
最後のエピソードにふさわしく、3話で構成されたお話となったこの蠱毒の物語ですが……果たして霊感ゼロの稲川先生と、霊感はあるものの能力があるわけではない一だけでどうにかできるものなのでしょうか?
相手は呪いを操る外道、まともに戦って果ても足も出ないような気がしますが……
ともかく、その戦いは、そして、稲川先生と一の恋の行方は、思いもよらない結末を迎えることとなるのです!!
前半では前巻から引き続いての、心霊アイドル月野との樹海探索の決着、そしてとある男性に付きまとっている女性の霊を調査するお話も収録されています。
どちらも本格的なホラー描写とともに、コミカルだったり、心温まるエピソードだったりと体験できる物語となっているのです!
それにしても連載が続いていれば月野さんの再登場もあっただろうにと思うと、残念至極……!!
なんにせよ、全2巻ながらしっかりまとめられたドラマに、物語が完結した後の彼らの人生も想像できるほっこりとしたラストが楽しめますよ!!
今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!
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